腎臓の機能低下を知るには、検査項目の何を見るといいか。医師の牧田善二さんは「健康診断や人間ドックで受けることが多い腎臓の検査項目として、尿タンパクや血清クレアチニンがあるが、この数値が正常の範囲内でも、腎臓がまずいことになっているケースは多々ある」という――。

※本稿は、牧田善二『腎臓 人工透析にさせない最強の医療・食べ方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■腎臓病専門医が全く足りていない現状
腎臓病は増え続けていて、患者数は2100万人と糖尿病より多いのに、腎臓病専門医は2025年6月時点で6578人しかいません。単純に計算すれば、専門医1人あたり3192人の患者さんを診ることになり、まったく足りていないのが実状です。
そのため、普通の内科医や糖尿病専門医が患者さんの診察を行なっているケースが多いのですが、内科医はもちろん、糖尿病専門医でも腎臓病の知識がないケースがほとんどです。
その結果、必要な検査が行なわれず、手遅れ続出となっているわけです。
詳しくは後述しますが、腎臓を守りたいなら、尿中のアルブミン量を測定する検査(本稿では「尿アルブミン」と表記します)とeGFR(推定糸球体濾過量)が必須です。
糖尿病では初めに尿アルブミンが悪化します。それ以外の腎臓病では尿アルブミンは早期の腎臓病発見の検査には使えません。早期発見のためにはeGFRの検査が必要なのです。
尿アルブミンは、私が最も重要視している検査項目です。アルブミンは血液中に最も多く存在するタンパクであり、そのため、少し腎機能が落ちてきた段階で早くから尿に出やすく、数値が上がります。
この尿アルブミンの数値に異常が出たときから適切な治療を始めれば、深刻な事態には至らずにすむのに、尿アルブミンは、ほとんど調べられることがありません。

普通の健康診断や人間ドックで受けることが多い腎臓の検査項目は、「尿タンパク」「血清クレアチニン」「eGFR」です。
尿アルブミンの単位は、mg/gCr(ミリグラムパーグラムシーアール)で、基準値は一般的には30未満ですが、私は18未満を正常上限として推奨しています。6000は、即透析です。
■腎臓の機能低下がわかる検査項目の数値
尿タンパクは、尿中にタンパクが出ているかどうかを調べる検査で「-(陰性)」「±(偽陽性)」「1+(陽性)」「2+」などの判定をします。正常と考えていいのは「-」のみで、タンパクが出るようでは腎臓病は進行しています。
一方で、激しい運動のあとなどでも「+」が出ることがあり、この検査だけで腎臓の状態を正しく判断することはできません。
血清クレアチニンは、採血をして血液中のクレアチニン量を調べます。クレアチニンは老廃物の一種で、腎臓がしっかり働いていれば濾過されて尿に排出されます。
それなのに、このクレアチニンが血液中に多く存在するということは、それだけ腎臓が弱っている証拠です。ただし、かなり悪化した状態でないと、この数値には出てきません。
血清クレアチニンは、健康診断結果表などでは、単にクレアチニンと表記されていることもあります。単位はmg/dL(ミリグラムパーデシリットル)で、基準値は完全には統一されていませんが、男性0.6~1.2、女性0.4~0.9としている医療機関が多いようです。

しかし、1.1はすでに腎不全となっており、普通の医師では治すことができません。
1~2年後には血清クレアチニンが8以上となって透析が始まります。しかし私の場合は、4以下なら透析にならないようにできます。
eGFRは、前項の血清クレアチニン値をもとに、特殊な計算式を用いてGFRという腎臓の機能を推定するもので、以下にその計算結果を簡易に示した表を載せておきました。
性別に加え年齢まで加味して算出するeGFRのほうが、血清クレアチニンよりは精度が上がります。実際に、血清クレアチニン値としては異常を指摘されなくても、eGFRを算出すると腎臓の機能低下がわかることがあります。
普通に考えたら、最も一般的な検査である血清クレアチニンの数値が正常の範囲内であれば、「私の腎臓は大丈夫だ」と思い込んでしまうのは当然です。だって、自治体や会社の健康診断で「OK」と出ているのですから。
しかし、そういう人でも、尿アルブミンの検査をしたり、eGFRまで算出したりすることで、「腎臓がまずいことになっている」「このまま放置してはいけない」と、わかることが多々あるのです。
■迷わず優秀な専門医を選ぶ
腎臓病に対して正しい知識を持っており、治すことができるのは、優秀な腎臓内科医であって、ほとんどの糖尿病専門医や普通の内科医では無理です。無理だけれど、腎臓が悪くなりつつある患者さんの診察は行なっています。
彼らは、患者さんの腎臓を治せないものの、症例は見てきているので「患者さんがいずれどうなるか」は知っています。
知っているけれど、ギリギリまでその事実を告げません。
いつもどおり、診察を受けに来た患者さんの血液を検査して、こんなふうに言います。
「うーん、ちょっと機能が落ちてきたね」
そう言われれば、患者さんは「そうか、ちょっと落ちたのか」くらいに考えるでしょう。
なにか薬を処方されていればそれを飲み、生活アドバイスも受けて、いつもどおりに過ごすでしょう。
そして、いつもどおり通院していたある日、突然言われるのです。
「もう、そろそろ透析だね。自宅に近い透析専門のクリニックを紹介しましょう」
患者さんは、透析にはなりたくないから病院に通い続けていたのに、いきなり透析の宣告を受け、大きなショックを受けることになります。信頼していた主治医から、見捨てられたと感じる患者さんも多いようです。
■「いきなり透析宣告」する裏事情
一方で、主治医からすれば「いきなり」ではありません。ある段階で、「もう、助けようがない」ということを認識しています。認識しているけれど、言わないのです。
もし、前もって「あと3~4年くらいで透析だね」と告げたなら、患者さんは「先生、まだ時間があるじゃないですか。
助けてください」と懇願するはずです。
でも、静かに進行していく腎臓病にストップをかけるのは簡単なことではなく、ほとんどの医師にはできません。どう懇願されても自分に助ける腕がなければ、ギリギリまで言いたくないのが本音でしょう。
そして、実際に透析に入れば、自分はその患者さんの担当医ではなくなります。患者さんは透析専門のクリニックに行くか、同じ病院内の透析センターに通うようになり、顔を合わせて気まずい思いをすることもなくなります。
■身を守るために、今すぐやろう
ここまでで私が訴えたかったのは、「こと腎臓病に関しては、医療機関にまかせっきりではダメだ」ということです。自分で自分を守る意識が不可欠です。
あなたは、なにか持病があるでしょうか。
糖尿病、高血圧、肥満があるなら、腎臓病のリスクがぐっと上がりますから、より意識を高く持ち、自分から主治医に尿アルブミン検査を申し出てください。
そして、異常値が出たなら腎臓病専門医にかかりましょう。糖尿病専門医であっても、私のように腎臓病に詳しい医師はごくまれで、多くの糖尿病専門医は、合併症で腎臓が悪くなった患者さんをどうすることもできないのが実情です。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)

AGE牧田クリニック院長

1979年、北海道大学医学部卒業。
地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。

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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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