休日の服装では、どんなことに気を付ければいいのか。スタイリストの森井良行さんは「ボディーバッグを揶揄する意見がSNSで散見される。
実はそれよりも問題がある『一発アウト』のNGアイテムがある」という――。
■「休日イオンモールおじさん」に賛否のワケ
「地方の田舎のイオンモールでよく見かけるこういう格好の人、本当に嫌い」
ネット上で賛否両論が噴出している件、ご存じでしょうか。ベーシックな水色シャツにベージュのチノパン、それに茶系のボディーバッグを斜め掛けした生成AI画像が、SNSで独り歩きしているのです。
この問題の本質は「ダサい・ダサくない」といった表面的なものではありません。良かれと思って身につけたアイテムが、じつは「よく思われていない」という可能性を示唆しています。これは休日のみならず、オフィスカジュアルなど、ビジネスシーンに共通するリスクではないでしょうか。
さすがに通勤にボディーバッグという選択肢はありません。ですが社内の休日イベントに顔を出したとき、「バッグが原因で、私服姿を揶揄される」という事態は避けたいはず。
では、なぜボディーバッグに対して賛否が噴出するのでしょうか。
その答えを導くカギは、「パブリックイメージ(誰もが想起する共通イメージ)」にあります。
■なぜ「縦型ボディーバッグ」が嫌われるのか
最初にお伝えすべきは、「すべてのボディーバッグがNGという訳ではない」こと。縦型デザインにくわえ、「色・生地感の切り替えし」というディテール(細部のデザイン)があしらわれたボディーバッグが揶揄されています。
理由は、「単に流行遅れ」ということではありません。ここがポイントです。
この手の縦型ボディーバッグは、ファッション感度が高いアパレル界隈とは別に、無難カジュアル代表格として、2010年代前半に幅広く支持されていました。この世代が、そのまま40代を迎え、「アップデートしていない大人の象徴バッグ」として認知されているのです。
つまり賛否両論の対象として、「何となくわかる」と揶揄されてしまった理由は、バッグそのものではなく、このバッグがもつ「イメージの問題」だと考えられます。
もっと簡単に言えば、「一世を風靡したデザインは、社会的記号として、ある種のイメージが定着してしまう」ということ。そして、このイメージは、過去の産物としてネガティブ扱いされやすいのです。
■中年男性がアイテムを選ぶ「基準」
だからこそ単に「縦型ボディーバッグはNG」という理解では、根本的解決に至りません。我々が理解すべきは、それぞれのアイテムがもつパブリックイメージを知ることなのです。
意外に思われるかもしれませんが、「ボディーバッグは、まだマシ」とも言えます。決してステキとは言えませんが、あきらかに「よそ行き」というTPO(時間・場所・場面に応じたチョイス)視点で選ばれたものだからです。
また、男性が縦型ボディーバッグを選ぶのは、「両手を空けて家族をサポートする」という合理的な機能性を求めた結果であり、持ち主のパーソナリティーを誤解させるものではありません。

ところがパブリックイメージの影響から、周囲に「一緒に歩きたくない」とすら思わせてしまうバッグも存在します。ボディーバッグより問題がある「一発アウトのNGアイテム」とは、どのようなものか。具体的に3つの事例を紹介します。
■一発アウトな「休日アイテム」3選
①ポケットが膨れる「手ぶら」状態
外出時にバッグをもたない男性は、一定数いらっしゃいます。とくに車移動の方は、その傾向が強いようです。たしかに「荷物が少ないから手ぶら」という合理性は頷けるのですが、この状態を、社会的記号として捉えたとき、あまりに理不尽なレッテルを貼られてしまうリスクを理解しておきたいところ。
じつは私自身、高校時代ある休日に、手ぶらで外出していたところ、「あれっ、どこかにバッグ忘れたの?」と女性の友人から心配された経験があります。その経験から、まわりを注意深く観察していたところ、女性にとっては「バッグ=荷物を運べるアクセサリー」という捉え方だと理解しました。
たとえスマホと財布やハンカチなど、最小限の手荷物であったとしても、「バッグを持たない」という着こなし自体が、揶揄されるリスクがあること。しかも少年時代は、誰もが手ぶらで遊びにいっていたことから、「いい大人なのに、なぜカバンを持たないのだろう(まるで子どもみたい)」という違和感をもたれるリスクがあります。
②ノベルティーの「布トート」バッグ
どこかでもらったロゴ入りの布トートバッグや、買い出し用のエコバッグは、メインバッグではありません。これらのバッグは、荷物が増えたときのサブバッグという位置づけ。
もちろん半径1キロ程度、いわゆるワンマイル・バッグとしては優秀ですが、よそ行きとしてはNGです。
というのも「近所のスーパーに買い出し」というパブリックイメージが強いため、よそ行きとしては、あきらかに頼りないのです。ちなみに、しっかりしたキャンバス地のファッションバッグもあるでしょう。同じようなキャンバス地であったとしても、構築的な立体感あるデザインならば、夏のリゾートに最適ですが、ノベルティーの布トートは簡易的なデザインが多いので、よそいきとしては安っぽく見えてしまいます。
■バブル世代が使いがちな「NGバッグ」とは
③威圧感あるセカンドバッグ
脇に抱えるミニバッグとして、バブル時代の名残りを感じるセカンドバッグ。今でこそ見かける機会は多くありませんが、世代によっては、この手のバッグを愛用される方もいるはず。
一方、ドラマや映画の影響からか、「セカンドバッグ=取り立て用バッグ」というイメージをお持ちの方も多いのでは。つまりは大人が、普段使いにするには「威圧感がでやすい」のです。
また同様に脇に抱える薄型ミニバッグとして支持されていたクラッチバッグについても、当時のパリピ(パーティー・ピープルの略称)というパブリックイメージから、普段使いするものではありません。
荷物をクロークに預けるようなフォーマルなイベントというシーンのみ、貴重品を収納するミニバッグとしておすすめです。
■機能とイメージを両立した「正解」2選
これらの誤解を回避しつつ、機能と品格を両立するバッグは何か。必ずしも高級ブランドである必要はありません。
家族と過ごす休日の「機能性」をキープしつつ、パブリックイメージを現代の常識にチューニングするもの。2つの条件を満たすバッグとして、私は「ワンショルダーのトートバッグ」もしくは「単色のクロスボディーバッグ」をおすすめしています。
まずは、最も推奨する「ワンショルダーのトートバッグ」から解説します。これは取っ手が、気持ち長いトートバッグです。その名前どおり、手持ちにくわえ、肩に引っ掛けて持つもの。手持ちのときは、片手は塞がりますが、臨機応変に両手を空けることも可能です。
この手のバッグは、レザー(本革)もしくはネオプレン素材(発泡させた合成ゴム)がおすすめです。なかでもネオプレン素材は、ウェットスーツにも使われる防水性と耐久性をもちながらも、軽量という特徴があります。これは男性ものというより、男女兼用のユニセックスタイプが主流です。
■「両手を空けておきたい」人にオススメ
常に「両手を空けておきたい」という方には、縦型ボディーバッグの代わりとして、紐(ストラップ)が細い「単色のクロスボディーバッグ」がおすすめ。
ストラップの存在感をやわらげつつ、色や素材の切り替えがない単色を選ぶことで、ボディーバッグが悪目立ちしません。またボディーバッグを斜め掛けするとき、着こなしも工夫したいところ。

ポロシャツやTシャツといった重ね着がないコーディネートのときは気になりませんが、シャツアウターを羽織る場合、ストラップが体の動きとともにズレるため、シャツアウターが予期せぬ方向に衣擦れするからです。
■大人の服選びは「パブリックイメージ」管理術
休日の服やバッグに無駄な予算をかけないというスタンスは、家族を持つ大人として、極めて合理的な判断です。にもかかわらず、結果的に「時代感覚が止まっている人」や「だらしない人」という不当なレッテルを貼られることは、あまりに不本意ではないでしょうか。
ここ数年、「40代パーカー問題」や「ハーフパンツおじさん」など、ことあるごとに中高年男性の身なりについて揶揄する話題がSNSで注目されていますが、実際のところは、これまで同様の批判があったのかもしれません。
というのも今回の「地方の田舎のイオンモールでよく見かけるこういう格好の人、本当に嫌い」の投稿についても、チェックしているのは主に女性側のように感じます。たしかに女性は、10代からファッション・メイクなど、自分の見せ方について、男性以上に研究している方が多いので、その結果なのではないでしょうか。
これまで可視化されていなかった心の声がSNSで伝わってしまう時代だからこそ、ビジネスのみならず、休日における服選びもまた、自らの「パブリックイメージ」を意識してみてください。週末、家族の隣を歩くあなたの姿は、見違えるほど頼もしく、洗練されたものに変わるはずですから。

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森井 良行(もりい・よしゆき)

スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事

1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。
MENSA会員。著書に『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)、『男の服選びがわかる本』(池田書店)などがある。

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(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)
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