※本稿は、上田彩瑛『数学を武器にしてみよう!』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■進捗報告のチカラ
毎日必ず行なうことを決めて、日々コツコツ取り組んでいれば、受験間際には膨大な蓄積になります。また、毎日の生活のリズムをつくるためにも、ルーチン(習慣的に行なうこと)を決めるのは大切なことだと思います。
私も、朝起きたあと、しばらく「何をやろうか……」とぼんやり考えて、ぐずぐずしてしまうことが多かったので、夜寝る前に「起きたら必ずやること」を決めておいて、朝起きたらすぐに実行するようにし、無駄な時間を過ごさないようにしていたのです。
たとえば、高2の1月に、理科の物理と化学に取り組むと決めてからは、毎朝3問ずつ理科の問題を解くことにしました。
どうしても集中できないときは、清史弘先生の『数学の計算革命』(駿台文庫)を開いて、少し頭を働かせてから理科に取り組んだりしていました。
さらに週に一度、「今すぐに理科の勉強を始めたほうがいい」とアドバイスしてくれた、塾の数学の鶴田先生に、進捗を報告するようにしました。私から言い出したのではなくて、先生から「週に一度報告するように」と指導が入ったからです。ありがたいお話です。
少しさぼってしまった週は、「やばい、今日先生に見せないといけないのに……」と、必死で遅れを取り返そうとしました。1日で1週間分を解いた日もあり、それがとてもつらかったので、課題を溜めるのはやめて、毎日真面目に取り組むようになったんです。
誰かに報告することはとても大事なことだと思います。
私が報告していた鶴田先生は厳しく指導してくださる先生でしたし、数学の先生なのに理科について忠告してくれて、「ここで言いつけを守らなければ、見捨てられる」と思い、必死に取り組んでいました。自分にとってプレッシャーになる人や、悲しませたくない人にあえて報告するのがよいのでは、と思います。
■どこで勉強する?
どこで勉強するかについても、さまざまなパターンがあります。自分の部屋か、家のリビングか、塾の自習室か。どんな部屋で勉強するかによって、集中の度合いも変わってきます。
私は、自分の部屋か塾の自習室、あるいは学校の自習室で勉強することが多かったのですが、自分の部屋が一番集中できました。部屋の位置もポイントだったかもしれません。ちょうど東南の方角を向いていて、冬になると朝日が見えるんです(夏は見えないのですが)。朝6時くらいに、太陽のまぶしさを感じながら勉強するのが好きでした。
受験生の中には、適度に雑音や人の目があったほうがいいからと自習室や家族のいるリビングで勉強する方もいるでしょうし、人それぞれだと思います。
私の場合は、母ととても仲が良く、リビングで勉強するとつい話し込んでしまうので、自室で勉強するようにしていました(父は単身赴任中で、家には隔週の週末しかいませんでした)。
勉強机には透明なデスクマットが敷かれており、デスクマットと机の間に写真や紙が挟めるようになっていました。私は東方神起のポストカードを何十枚も敷き詰めていたのですが、1枚だけ、「絶対に途中であきらめない!!!」と書いたふせんを挟んでいました。いつ、どういう理由で書いたのか、すっかり忘れてしまったのですが。
かなり目につきやすいところに入れたので、机に向かうたびにふせんの言葉が目に飛び込んできました。問題を解いていて「ああ、わからない」とあきらめそうになったときに、これを見て再度やる気になったことがよくありました。
誰かが書いた言葉ではなく、自分で書いた言葉だったことも、一つのポイントだったと思います。やはり、自分自身には言い訳できないので……。
■「50分勉強したら10分休憩する」というサイクル
勉強は、学校の授業と同じ、50分勉強したら10分休憩するというサイクルで行なっていました。高校の時間割に合わせるのが、一番効率的だと思ったんです。
そして10分間の休憩中、リビングで母とおしゃべりをしたり、家の周りを散歩したりしていました。
スマホも基本的にはリビングに置いて、自分の部屋には置かないようにしました。ただ、スマホのアラームを目覚まし時計として使っていたので、朝起きたらリビングまで行ってアラームを止めていました。
また、机に向かって数学の問題をいくら考えてもわからないとき、場所を変えて考えると、意外にうまくいくことがあります。
私の場合、机の前でいくら考えても思考が止まってしまって解けなくなる数学の問題をお風呂で考えたら、解答の手がかりをつかめたことがありました。
お風呂に入って、脳がリラックスしたときに「あ、あの問題ってこういう感じなのかも」と思いついたのです。湯気でくもった鏡に指で数式を書いて計算してみたら、解き方がわかったのです。
それは問題だけが与えられた予習用の問題で、解答がなかったため、そのように長時間対峙していましたが、もし解答が与えられていたら、見てしまっていたと思います。いずれにせよ、頭を一度別の状態に置いてみるとうまくいくことがあります。
勉強していて、眠くなったら、水か紅茶を飲むか、ラムネを食べるか、あるいは寝てしまうか。高3のときに、ドリンク剤を飲んでみたことがあったんです。カフェインが入っていて、飲んだ直後に、驚くほど目が覚めました。すごいなと思ったのですが、そのあとで強烈な眠気が……。
翌日、今度は大丈夫かもしれないと思って試したのですが、同じように強い眠気に襲われました。これはやめたほうがいいと思って以後、飲まないようにしました。
体質によると思うのですが、私はあまり刺激物には頼らないほうがいいタイプでした。それなしではいられなくなる、依存症に近いような状態になることが心配ですね。
■効率よく勉強を進めるために
効率よく勉強するために意識したのが、先の行動を考えながら生活することでした。
たとえば、通学の時間やお風呂に入っているときに「あとで何時にこの勉強をしよう」とシミュレーションをしていました。事前にシミュレーションをする人は意外に少ないみたいなのですが、やるべきことが多いときは、このような習慣を身につけたほうが楽になると思います。
私はもともと計画を立てるのが好きなタイプで、中学生のときからテストの2週間前には勉強の計画表をつくっていました。「やることリスト」をつくりたがるタイプだったんです。
定期テストのときは、どこからか入手した2週間分の勉強スケジュール表があり、それをコピーして書き込んでいたのですが、高校からはやることが多すぎて表に書ききれず、紙の裏に書き加えていました。
計画表に書き込んだことを必ずしも全部できていたわけではなかったのですが、多めに書いておくと「次、何をしようか」と迷うことがなくなるので、優先順位をつけて並べるようにしていました。
優先順位をつけて、重要なものから消化するようにしておけば、たとえ「やることリスト」に挙げた課題が全部できなくても、「一番大事な課題は終わった」と安心感を得ることができます。
ただ、計画はしっかりつくっても、いざ実行に移すと「今日は勉強が全然進まない」ということもありました。そんなときはほどよく休憩をとりつつ、「私が休んでいる間に、みんなは私の倍、勉強している」と思うようにしていました。
■娯楽は1日1時間
時間を無駄にしたくない気持ちはありつつも、前述の通り根っからのテレビっ子であったため、テレビを観ないことなどあり得ませんでした。
1日1時間、晩ご飯を食べているときのみと決めて、毎日録画したドラマや漫才番組を観ていました。今でこそサブスクの倍速視聴は当たり前ですが、10年前から自宅のビデオデッキには倍速機能がついていたので、それで2時間ドラマをCMを省きつつ1時間で観ていました。主題歌も2倍速で聞き慣れていたので、街中でかかっているのを聞いて「こんなに遅い曲やったんか!」と驚くこともしばしばありました。
漫才番組は等倍で楽しみたかったので、1日1時間できっちりやめて数日に分けて観ていました。
すべての娯楽を制限するのではなく、時間を決めて適度に息抜きすることも私には欠かせませんでした。
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上田 彩瑛(うえだ・さえ)
東京大学理科三類
2000年大阪府生まれ。大学1年時に2019年ミス東大コンテストでグランプリに輝く。現在、ワタナベエンターテインメントに所属しテレビ番組などにも出演中。趣味のダンスは受験勉強のリフレッシュとして高3まで続けた。
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(東京大学理科三類 上田 彩瑛)