ビジネスシーンにふさわしい装いとはどのようなものか。セクレタリーアドバイザーの渡邉華織さんは「結局、外見は清潔感第一。
自分が相手に不快感を与えるような装いをしていないかという視点を持つべきだ」という――。
※本稿は、渡邉華織『好かれる人のさり気ない気配り100式』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■人と会う前には360度チェックを
私は誰かと会う前は必ず化粧室に行き、360度ぐるっと回って、後ろからも横からも鏡を見て、身だしなみをチェックしています。
正面の鏡に映る部分だけをチェックしていると、肩に髪の毛が落ちていることや、ストッキングの伝線やスカートのほつれに気づけずに、清潔感が損なわれることがあるからです。
「後ろ姿は見られていない」と思ったら大間違い。後ろ姿こそ、よく見られています。
例えば、お客様を案内するときは、廊下をその人の前に立って歩かなければいけません。エレベーターのボタンを押すときなどは、背後の至近距離から後ろ姿を見られていると思ったほうがいいでしょう。
■外見は清潔感第一
人は初対面のときほど、「この人はどういう人なんだろう」と観察するものです。
身だしなみを整えるのは自分のためでもあるけれど、自分が属している会社のためでもあり、上司のためでもあります。
自分が相手に不快感を与えるような装いをしていたら、会社のイメージも悪くなってしまうし、「この人の上司はこういうところを指摘しない人なんだ」と思われて、上司の評価を下げてしまうかもしれません。
結局、外見は清潔感第一。
ということは、買い物の段階から手入れが簡単なものを選ぶ必要があります。頻繁にアイロンをかけたり、クリーニングに出したりするのも大変ですから、洋服なら洗濯機で洗えるもの、ノーアイロンでもしわが寄りづらいものを選ぶのがコツ。
また、男性のカラーシャツの中には汗が目立つ色があります。無地の濃い色をしたブルーやグレーは濡れた部分だけ色が濃くなるため、脇の下などに丸い汗じみがくっきりと出ることも。グレーのワイシャツはおしゃれなので、男性におすすめすることがありますが、必ず「真夏は避けてくださいね」と言い添えています。
■ブランド物の注意点
私は基本的に「何を着るか」より「どう着るか」のほうが大事だし、「何を持つか」より「どう持つか」だと思っています。
しかしそうだとしても、一目でブランド物とわかる大きなロゴが入っているようなものは注意したほうがいいでしょう。
プライベートなら、どれだけブランド物で全身を固めてもかまいません。でもやはりビジネスのときは、ちょっと考えたほうがいいでしょう。
その理由はブランドの威力を誇示しているように受け取られることもあるということ。もう一つの理由として、相手が自分の身に着けているブランドのライバル企業の関係者である可能性があるということが挙げられます。
■シャネルのバッグでヴィトンの会社を訪問する
私はいろいろな方とお仕事で会うときには、その日に会う人の会社や職業について、必ず考えるようにしています。

これは極端な例ですが、シャネルのバッグを持って、ヴィトンの会社を訪問したり、シャネルの名刺入れでヴィトンの方と名刺交換をしたりせずに済むためにそうしているのです。ちなみに名刺入れは二つ持っていて、プライベート用と仕事用に分けています。
今、仕事で使っている名刺入れに大きいマークやロゴが入っているのであれば、時と場合を考えて使い分けたほうがいいかもしれません。
いちいち使い分けるのが面倒な人は、ビジネスのときだけは、どこのものかわからないシンプルなものを使うしかないでしょう。いっそのこと、仕事中のファッションは機能性重視と割り切ったほうがいいかもしれません。
服もカバンも機能性を重視すると決めてしまえばラクです。汚れがつきにくい、洗濯機で洗える、雨に濡れても拭くだけでシミにならない。そんなカバンや、シワになりにくい服を選ぶと、忙しい毎日にちょっと余裕ができてきます。
■訪問の際にだらしなく見えるポイント
他社にお邪魔する場合や、会合に出席する場合は、気をつけたいことがいくつかあります。
例えばリュックを背負ったまま入ってくる人。リュックのせいでジャケットが着崩れていることが多いようです。ショルダーバッグを肩から斜めにかけている場合も同様で、なんとなく無精な印象になります。
入室の際はとりあえず手に持ち換えましょう。
また、最近は冬にコートを着たまま入ってくる人もよく見かけます。本来は玄関前で脱ぎ、裏地を表側にして軽くたたみ、腕にかけるのがマナーです。これはコートについた埃を室内に持ち込まないためと言われています。
■飲みかけのコーヒーを持ち込む人
うるさいことばかりを言うようで恐縮ですが、ほかにも気になるのが、カフェやコンビニで買ったコーヒーを手に持ったまま入ってくる人。お客様のところを訪問するのにコーヒーを片手にやってきて、通された部屋のテーブルにそのまま置きます。映画のワンシーンのようで格好はいいけれど、当然マナー違反です。
何回も会ったことのある人ならまだしも、初対面であればあるほど常識を疑ってしまうかもしれません。たとえ直接面談する相手には見られていなくても、案内をする人にはしっかりと観察されているものです。さらに気をつかえない人になると、飲み終わったコーヒーのカップを持ち帰らない。
もっともこれは私が、「ゴミはそのまま置いてらしていいですよ。こちらで捨てますので」と言うからなのですが、「あ、すみません」と素直に甘えられてもちょっと複雑な心境になります。

うっかり途中で買ってしまったけれど飲み切れず、捨てるところもなくて持ち込んでしまったのかもしれません。しかし、食べかけ・飲みかけのものを訪問先の応接室に持ち込むのはあまり行儀のいいことではありません。
真夏に水分補給が必須なのであれば、せめてフタができるペットボトルや水筒にして、先方の会社に行くときは自分のカバンの中にしまって見えないようにしておきましょう。
■手土産は外袋にも気配りを
些細なことですが、手土産をきれいな紙袋に入れてお渡しするのも、気配りの一つだと思います。
例えば、地方出張のときの手土産。出張のときはただでさえ荷物が多いので、前もって百貨店で買ったものを出張当日に持っていくのは、かさばって大変。出張の手土産は、電車や飛行機に乗る前に買うのがいちばんラクなのです。それに今は「東京駅限定」とか、「羽田空港限定」のお土産がたくさんある。このような限定品は非常に喜ばれます。
ただ、一つ難点が……。
それは空港やJRの売店で買ったものは、シャカシャカしたポリエチレンのレジ袋に入れられてしまうこと。
「人数分、お入れしておきますか?」
と余計にもらう袋まで、レジ袋だったりします。

JR東日本なら「ニューデイズ」、空港なら「ANA○○」とか、「JAL○○」とか書いてあるレジ袋のまま訪問先にお渡しするのは、「途中で買ったんだな」ということが丸わかりで手抜きな印象だし、レジ袋もスーパーの買い物袋のようで興がそがれます。家族や親しい人ならかまいませんが、そうでない方に差し上げるなら、やはりちゃんとした紙袋に入れてお渡ししたいものです。
■売店にもお店ごとの紙袋はある
ではどうすればいいかというと、駅や空港の売店で会計のときに、
「○○の紙袋をください」
と言えばいいのです。虎屋の羊羹を買ったら、「虎屋の紙袋をください」。ヨックモックの焼き菓子を買ったら、「ヨックモックの紙袋をください」。こう言うと、レジの後ろのほうに、ちゃんとお店ごとの紙袋をストックしてあるので、それに入れてもらえるのです。
ただしその場で紙袋に詰め替えてしまうと、長旅の道中で紙袋が傷む可能性もあるので、現地に到着するまではレジ袋に入れておき、訪問先の手前で紙袋に入れ替えてお渡しするのがベストです。

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渡邉 華織(わたなべ・かおり)

セクレタリーズ アドバイザー、お福分けコンシェルジュ

秘書歴30年以上。上場企業からスタートアップまで多岐にわたる企業の経営者のサポートを継続しながら、秘書コミュニティ「セクレタリーズ」を運営。テレビ朝日『七人の秘書』、スピンオフドラマ『ザ・接待~秘書のおもてなし~』の秘書監修なども行う。

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(セクレタリーズ アドバイザー、お福分けコンシェルジュ 渡邉 華織)
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