2025年4月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。仕事術・キャリア部門の第2位は――。

▼第1位 「具体的に言ってもらえないと動けません」舐めプな今どき部下を黙らせた氷河期上司の必殺"1枚資料"

▼第2位 「これが自然にできる人はコミュニケーション上級者」元国際線CAがファーストクラスで体験した"究極の礼節"

▼第3位 高校を2カ月で中退…学歴もカネもないビッグモーターの落ちこぼれが「年商70億円の中古車会社」を作れたワケ

▼第4位 転職先の肩書は部長でも課長でもない…割増退職金をもらった年収1500万の部長が就いた「時給1000円」のお仕事

▼第5位 売り手市場の"舐めプ"新卒が大量退職中…退職代行「モームリ」繁盛のウラで引き止め代行「マダイケル」願う声

エグゼクティブの振る舞いは何が違うのか。元JAL国際線チーフパーサーの山本洋子さんは「エグゼクティブは素敵な人ばかりではない。ただし、社会的な振る舞いを身につけているという点において、見習うところは多い」という――。
※本稿は、山本洋子『なぜあの人は初対面で信頼されるのか 元JAL国際線チーフパーサーだけが知っている人の心をつかむ極意』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
■エグゼクティブは素敵な人ばかりではない
ファーストクラスにはさまざまな業界のVIPがご搭乗になります。
誰もが知る著名人もいれば、そうでない人もいらっしゃいますが、共通していることは、社会的地位と経済力があることです。会社の経営者や創業者、大企業の役職につく、いわゆるエグゼクティブと呼ばれる人たちです。
エグゼクティブというと、仕事ができてスマートな対応をする人と思われがちですが、そんな素敵な人ばかりではありません。
自分はお客様だと言わんばかりの横柄な人や、思わず眉をひそめてしまうような下品な人も少なからずいらっしゃいます。
言葉遣いも乱暴で、客室乗務員を召使いのように扱う人も。
相手はお客様ですので多少の理不尽な振る舞いは我慢するしかないのですが、度を超えた要求や威圧的な言動は、対応に困ってしまうこともあります。
一方で、社会的に地位の高い人の多くは、自分が周りからどう見られているか、そしてその見られ方がどんな影響を及ぼすかをよくご存じです。

それを理解している人は、おのずと人に対する接し方が変わってきます。
■アイコンタクトが自然にできる人
ファーストクラスに乗る人がいかにも優れていて、振る舞いも人格も完璧であるかのような論調には大いに異論がありますが、社会的な振る舞いを身につけているという点においては、見習うところが多いのは事実です。
相手がどう思うかや、周囲に不快な思いをさせないということを超えて、相手を自分のファンにするほどの立ち居振る舞いは、究極のビジネススキルといえるでしょう。
例えば、アイコンタクトです。
話しかけるときはもちろんのこと、要所要所で相手と目を合わせ、会話の最後にはきちんと相手の目を見て会話を終わらせるラストアイコンタクトができていること。
これは客室乗務員が必ず指導される接客の基本でもあります。
会話の最後に相手の目を見るというのは、相手に対して気持ちを残すという意味があり、相手に丁寧に接しているという意識の表れでもあります。
必ずしも相手と目が合うとは限らないのですが、相手がどうであれ、最後にアイコンタクトを心掛けることはビジネスマナー的にも優れているのです。
エグゼクティブの中には、アイコンタクトが自然にできる人がいます。
特に、ラストアイコンタクトがさりげなくできる人は、コミュニケーション上級者です。それだけで、相手はきちんと対応してもらっていると感じ、好印象を抱きます。
■ラストアイコンタクトは究極の礼節
たったそれだけのことなのですが、それが礼節です。

いかにも「してやった感」を出さず、あくまでもさりげなく相手の存在を認め、尊重する。その気持ちがラストアイコンタクトには込められています。
これはファーストクラスのお客様に限ったことではありません。
どのクラスのお客様でも、こちらが何かを提供した際に、必ず目を合わせて「ありがとう」とおっしゃるお客様にはとてもよい印象が残ります。
特別な言葉は必要なく、例え言葉を発しなくても、最後のアイコンタクトですべてが伝わるのです。
礼節は相手への心遣いが形になって表われるものだと考えると、アイコンタクト、とりわけラストアイコンタクトは究極の礼節なのかもしれません。
アイコンタクトは、日頃の生活の中でも簡単に取り入れられる振る舞いです。
ちょっとした最後の目線合わせ、意識して習慣にしてみてはいかがですか?
■海外で称賛される日本人の礼節
数年前、サッカーワールドカップの試合後、日本人サポーターがスタジアムのゴミを拾う光景が海外メディアで取り上げられ称賛されました。
外国人が、公共の場でゴミを片付けるのは清掃業の仕事と割り切って考えるのに対し、日本人サポーターが自分の出したゴミだけでなく、サポーター全員で周辺のゴミを片付ける姿は、驚き以外の何物でもなかったのではないでしょうか。
サポーターだけではなく、日本代表選手たちも試合に負けたにもかかわらず、ロッカールームをピカピカに磨き上げて後にしたという報道がなされました。
これも外国人には考えられない行為として海外メディアに大絶賛されました。
また、現在アメリカで活躍するメジャーリーガーたちの振る舞いにも注目が集まっています。
お辞儀パフォーマンスに始まり、最近では審判に対する礼儀正しい振る舞いや敵チームの選手たちへの気遣いにも称賛が集まっています。
海外のスポーツ界は結果がすべての完全実力主義です。人として少しくらい道を外していても、実力があればある程度は世間も大目に見てくれます。
礼節は二の次の実力世界で、実力を超えて、日本人の礼節が世界で絶賛されていることは喜ばしい限りです。
■外国人旅行者が一様に驚く「治安のよさ」
コロナ禍が終わり、インバウンド需要が大きく増える中、オーバーツーリズムが問題視されるほど外国人旅行者が大幅に増加しました。
ここは日本? と思うほど外国人で占められている都市もあります。
そんな外国人旅行者が一様に驚くのが、日本の治安のよさです。
夜中でも女性一人で外出できる治安のよさは、昔から驚きを超えて称えられていますが、最近ではレストランでの振る舞いも注目を浴びています。
多くの人が集まるフードコートのように、自由に席を確保して食事をいただくような場所で、席を確保するために荷物を置いたままにしていることが見受けられます。
日本人としては普通の光景ですが、外国人にとっては衝撃の光景です。
なぜなら、荷物を置いたままにする行為は、盗んでくださいと言っているようなものだからです。外国なら瞬時に盗まれてしまいます。

しかし、日本では、めったに盗まれるようなことはありません。
お財布を落としたとしても、比較的高い確率で戻ってくる国は日本だけです。
偶然見つけた見知らぬ人が、わざわざ届けてくれるからです。
外国ではほぼ100%、落とした財布が手元に戻ってくることはありません。
■礼節はまさに「おもてなしの心」
その他にも、公共のトイレが清潔で綺麗な状態が保たれていること。
電車やバスを待つときには整列して横入りをしないこと。
雨の日には買った商品に雨よけのカバーをかけてくれること。
駅の構内や街中には当たり前のように点字ブロックが敷き詰められていること。
電車内では通話はしないことなど、外国人から称賛されている点が多々あります。
このように、海外で評価が高い日本人の国民性のベースになっているのが、「礼節」です。礼儀と節度、まさにおもてなしの心なのです。
さまざまな機関によって行われている、外国人が持つ日本人に対する印象の調査でも、礼儀正しさと信頼感、綺麗好きが常に上位を占めています。

外国人が礼節に欠けるとは思いませんが、日本人には外国人が理解できないレベルで周囲を思いやる気持ちが根付き、それが「和」という協調性になって国民性を築いています。これは、多くの外国人が驚く日本人の公徳性です。
礼節を考えるとき、日本人の素晴らしさを改めて感じます。
(初公開日:2025年4月8日)

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山本 洋子(やまもと・ようこ)

CCI代表取締役

人財育成コンサルタント、キャリアコンサルタント。元JAL国際線チーフパーサー、客室マネージャー。奈良県生駒市出身。1985年JAL入社。25年間の在籍で総飛行時間は2万を超え、JAL国際線チーフパーサーとしてファーストクラスを担当。海部元首相や天皇陛下特別便乗務に選抜される経歴を持つ。各界の著名人をはじめとした国内外のVIPに接してきた。その間、客室訓練部にて教官として約1000人の新人CAを育成し、CA採用面接官も務める。管理職客室マネージャー昇格後は、CAの指導育成と人事考課等のマネジメントを行う。
退職後は外資系保険会社にて7年間コンサルティング営業に従事。CAと保険セールスレディでは、世間の扱われ方が全く違い、経験のない営業職に戸惑いながらも、初月トップの成績をたたき出す。航空会社で培ったおもてなし力と、リーダーシップ力、保険会社で学んだお客様から信頼されるコミュニケーション力を武器に2018年「株式会社CCI」を設立。現在はビジネスマナー研修をはじめとした企業研修や講演で全国を飛び回る。

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(CCI代表取締役 山本 洋子)
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