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▼第4位 第三者委員会報告書の"驚愕事実"…フジ内部を見た不正調査のプロ弁護士陣が「最もありえないと思ったこと」
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3月31日にフジテレビで行われた第三者委員会の報告と清水賢治社長の記者会見で中居正広氏による性暴力が認定され、フジテレビ内部に蔓延するセクハラ体質と人権意識の低さが明らかになった。報告と会見の両方に出席したライターの村瀬まりもさんがリポートする――。
■延々とお題目を述べる清水賢治社長に記者陣もあきらめた
3月31日夜10時半、お台場のフジテレビ本社で記者会見の終了が宣言されたとき、日付を超えて深夜まで行われた1月27日の会見のように、記者席から「なぜ全ての質問を受けないのか」という抗議の声は出てこなかった。
出席者の総計はマスメディアなど98媒体265人。既に夜9時でテレビの生中継は打ち切られていた。10時半時点で何人が残っていたかはわからないが、新聞やテレビの報道記者も、フリーランスのジャーナリストやYouTuber、カメラマンたちもみんな文句を言わず、怒号を飛ばすこともなく、さっさと仕事道具をしまって会場を後にした。
それは会見にたったひとりで登壇し、フジテレビの今後の「再生・改革に向けて」というアジェンダに沿ってお題目を述べるばかりの清水賢治社長では、真実はとうてい明らかにならないという半ばあきらめの気持ちがあったからではないか。
■「性加害者=中居正広氏、被害者=女性アナウンサー」と認定
この日はまず、1月の会見で「中居正広さんが加害をしたと断定できる段階ではない」「被害者女性は女性社員とも女性アナウンサーとも言えない」とプライバシーを盾にガイドラインを引かれた、なんともモヤモヤする状態から、ようやくフジテレビが、性加害者=中居正広氏、被害者=フジテレビの社員である女性アナウンサー(既に退職)と認めたことが大きい。
1月28日から新社長となった清水氏はフジテレビではアニメやドラマを作ってきた人。今回の事案の舞台となったバラエティ番組の制作現場とは距離があっただろう(それゆえに新社長に抜擢されたと思われる)。
そもそも、今回の性暴力事件は、中居正広氏に被害者女性を紹介し、事件が起こった後も被害者女性より中居氏のために動いた元編成部長(報告書では「B氏」)が引き起こしたことで、清水社長からすれば、B氏はとんでもないことをしでかしてくれたという本音が、言葉の端々から垣間見えた。どこか他人事感(ひとごとかん)が拭えなかった。
しかし、問題になっているのは、たまたま、おかしなバラエティ番組制作者とおかしなタレントが暴走したという特殊なケースなのだろうか。そこを明らかにする意味で、3月31日に重要だったのは、社長会見の前に開かれた「第三者委員会」の報告会見のほうだった。
■企業不正のプロである弁護士たちがフジ内外で聞き取り調査
第三者委員会の委員長は、プロアクト法律事務所の竹内朗弁護士。不正調査のプロであり、2024年には東京女子医科大学の二重給与や不正支出事案の調査等に関する「第三者委員会」副委員長を務めている。今回、格段に注目度の高いフジテレビの会見に臨む竹内氏の表情からは、並々ならぬ覚悟が見てとれた。
調査報告書(要約版)の「本事案へのCX(註:フジテレビ)の対応に対する評価」には、女性アナウンサーが中居氏に性暴力を振るわれたと会社に報告した後、2023年8月の対応について、こうある。
「港社長ら3名は、『女性Aの生命を最優先にする、笑顔で番組に復帰するまで何もしない』という『大方針』を決定し、中居氏の番組出演を継続させた」
「継続させた理由について、事実確認を行えば中居氏が反論し、それが女性Aに伝わり、女性Aの『刺激になる』、中居氏が女性Aを攻撃する可能性があり、女性Aに危険が生じ得るなどの憶測を挙げているが、合理的判断とはいえない」
「責任を回避しようとしていたのであり、被害者救済を最優先とした本事案への適正な対応に向けた積極的な行動をとらなかった」
■「女性が笑顔で復帰するまで何もしない」という無責任な対応
港社長ら3名というのは、港浩一前社長、大多亮専務取締役(現在はカンテレ社長)、執行役員のひとりとされるG氏(編成局長)。第三者委員会の報告書では、このときの対応が最も問題視され、厳しく追求されている。
他の項にもこういった記述がある。
「被害女性が人権侵害を受けたという事実を知りながら、加害男性に対して調査も行わず、番組出演を継続したという驚愕の事実」
「重要な意思決定が、編成ラインの3名のみ、編成の視点のみ、被害者と同じ女性が関与しない同質性の高い壮年男性のみで行われたことに驚きを禁じ得ない」
つまり、いやしくも上場会社、しかも総務省から放送免許を受けた企業であるのに、企業不正、危機管理を専門とする弁護士から見て、言語道断、まったくありえない対応だったということになる。筆者も報告書を読んだとき「女性が笑顔で番組に復帰するまで何もしない」という発言のあまりののんきさに、めまいがした。
報告書の記述を使って言えば、「自分の父親と同年代の男性」から「業務の延長上」で「性暴力」を受け、しかも、加害者は番組に出続けていて「会社が守ってくれない」のに笑顔になれるわけがないだろう、という怒りは伝わりそうにない。
■被害女性が報告してからも1年以上、中居氏の番組を続けた
時系列を整理すると、2023年6月に中居正広氏がフジテレビの女性アナウンサーに性加害をした。そのことは8月に港社長、大多専務、G氏に報告された。しかし、中居氏の冠番組(報告書では伏せられているが中居正広氏と松本人志氏がMCを務めた「まつもtoなかい」、後続番組の「だれかtoなかい」と推定できる)は、2024年12月まで続いていた。報告から番組の休止まで1年4カ月のブランクがある。
これが、第三者委員会が最も問題視したことではないか。記者会見では竹内弁護士が「中居氏の出演継続は間違っていた」「(番組継続自体が)二次加害という評価」「旧ジャニーズ事務所の問題と比較しても、中居氏の番組を打ち切る必要は格段に高かった」とはっきりコメントした。「フジテレビは社員よりもタレントを優先した」とまで言い切った。
港社長らは、今回の性加害事件を最初はプライベートな男女の関係で起こったこととして片付けようとしたという。「誤った認識」「人権意識が低い」ということは再三、報告書でも指摘されているが、では本当にリテラシーが低いだけで、深刻な問題だと受け止める能力がなかったのかというと、それも怪しい。
■港社長らは本当に人権意識が低かっただけなのか?
報告書では、フジテレビの幹部が「中居氏の利益のために(取った)とみられる行動」という項目で、重要な指摘をしている。
「特筆すべきことは、CXの幹部が、中居氏サイドに立ち、中居氏の利益のために動いた」
「(編成局長の)G氏は、(中居氏に弁護士を紹介するなどした)B氏及び(同じ編成局の)J氏が中居氏から相談を受けていることについて報告を受けた時点で、B氏及びJ氏が中居氏との関係性が近く、中居氏サイドで中居氏の利益のために行動する可能性があることは十分に認識することが可能であったが、B氏らに対してそうした対応を禁止することもなく、何も対応しなかった」
「大多氏及び港社長も、B氏が中居氏の相談を受け、そのために行動する状況を認識することは可能であったが、何らの対応も取らずに容認した」
■「踊る大捜査線」のスリーアミーゴズのようなトップ3人
G氏も執行役員であるからには名前を明かすべきだろうと思うが、港浩一前社長、大多亮専務取締役、G氏の3人は、まるで『踊る大捜査線』の「スリーアミーゴズ」のようだ。フジテレビのドラマの代表作でもある同シリーズの主人公は、織田裕二氏が演じる青島刑事。
スリーアミーゴズのモットーは「警察の仕事はスキのない接待」で、出世のことしか考えず、お偉方に忖度してばかり。「何もしない」は3人の基本スタンスだ。彼らが主人公になった深夜ドラマのサブタイトルは「部下のミスは、部下のミス」だった。その無責任ぶりが、悲しいことに現実のフジテレビ社長たちと重なる。
しかし、スリーアミーゴズにも一分の魂はあった。青島刑事が刺されたとき、警視庁の室井管理官(柳葉敏郎)に「私の部下の命を何だと思ってるんだ!」と猛抗議するなど、部下思いの面を見せ、観客をホロリとさせた。
そんな憎めないキャラクターを作り出したのは脚本家たちと、のちにフジテレビ社長(2013~17年)になった亀山千広氏。そんな亀山氏がフジテレビを去ってから、フジの番組まわりで、いじめや性加害問題などが噴出しているのは偶然なのだろうか。
今回の報告書が出たからには、事件の報告を受けてもいなかった清水新社長をスケープゴートにして済ませようとするのではなく、事件発生当時、社員を守る責任を負っていた港前社長たちが出てきて反省の弁を述べるべきだ。それすらできないようでは、視聴者やスポンサーからの信頼回復は難しく、今後もお台場に日は昇らないだろう。
(初公開日:2025年4月1日)
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村瀬 まりも(むらせ・まりも)
ライター
1995年、出版社に入社し、アイドル誌の編集部などで働く。
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(ライター 村瀬 まりも)