※本稿は、工藤孝文(監修)『「休養」にいいこと、1冊にまとめました』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
■グラス一杯のビールが持つ健康効果
ポッコリお腹を「ビール腹」と呼ぶことがあります。ビールを飲みすぎると、確かにお腹が出てしまうことがありますが、ダイエットに気を使い、糖質制限をしている人も増えている中で、実はビールはそこまで悪者ではないことがわかっています。
ビールには独自の健康効果がいくつかあります。ビールの原料であるホップには、疲労回復を助け、食欲を増進させる働きがあります。また、鎮静作用もあり、リラックスしたいときにぴったりです。さらに、ホップはホルモンバランスを整えるエストロゲン様作用も持っており、特に女性にとっては更年期障害やPMS(月経前症候群)の症状緩和に効果が期待できます。加えて、ホップには白髪予防や、加齢によるさまざまな悩みにも役立つ成分が含まれています。
もちろん、何事も過剰摂取は避けるべきですが、ビールを適量、1日にグラス一杯程度楽しむことが健康に良い影響を与えることがわかっています。
■赤ワインは「ポリフェノール」に気をつけながら
一方で、最近ではおしゃれでヘルシーなお酒として赤ワインの人気も高まっています。糖質を避けるために、お酒をビールや日本酒から赤ワインに替えた、という人もいるようです。
赤ワインには抗酸化作用が強いポリフェノールの一種、レスベラトロールが含まれており、これが動脈硬化やがんの予防に効果があるとされています。しかし、赤ワインに含まれるポリフェノールの中には注意が必要な成分もあり、頭痛や便秘などの症状を悪化させる可能性があります。このようなポリフェノールは、血管を拡張させて血流を促進したり、血圧を上昇させる作用があるため、それほど多く飲んでいなくても偏頭痛を引き起こしてしまうことがあります。
実は、このようなポリフェノールは、チョコレートにも含まれており、ズキズキと血管が脈打つような偏頭痛に悩んでいる人は、ポリフェノールの摂取量を見直す必要があるかもしれません。何事も適量を楽しむことが大切。過剰に摂取しないように注意しましょう。
■しじみ汁は二日酔いに効くだけじゃない
二日酔いにしじみ汁が効く理由は、しじみに豊富に含まれるオルニチンの効果にあります。
オルニチンはアミノ酸の一種で、特に肝臓の働きをサポートすることで知られています。肝臓はアルコールの分解を担当しており、オルニチンがその機能を助けるため、二日酔いの症状を和らげてくれます。オルニチンは貝類全般に含まれる成分ですが、特にしじみは含有量が高いため、二日酔いや疲労回復に最適な食材と言えるでしょう。
しじみ汁は、天然のスタミナドリンクとしても知られており、その効果は非常に高いです。市販のフリーズドライの味噌汁でも、手軽に栄養を摂取できるため、体に負担をかけることなくスタミナを補充することができます。
これらの栄養素が疲労回復を助け、日々の健康維持に役立ちます。
■しじみ汁が疲れにくい体を作ってくれる
日常的にしじみ汁を食事に取り入れることで、疲れにくい体を作り、日々の活力をサポートすることができます。また、しじみの身にも栄養がたっぷり詰まっているので、残さず食べるとさらに効果的です。しじみは漢方でも、高い水分調整作用があるとされています。
体内の余分な水分を排出し、必要な水分はキープする働きがあるため、むくみや水分過多の調整にも役立ちます。むくみや体調不良を感じた際には、しじみ汁を取り入れると良いでしょう。
さらに、しじみ汁にはアセトアルデヒドの分解を促進する成分であるアラニンやグルタミンも含まれており、これが二日酔いの解消に特に効果を発揮します。飲みすぎた翌朝、しじみ汁を摂取することで、アルコール分解が進み、不快な症状を一気に改善することができます。
アルコールの代謝が早まるため、二日酔いの症状が早期に緩和され、すっきりとした気分を取り戻すことができます。
■美肌にかかせない鮭
ヘルシーな食材としてよく挙げられる「魚」ですが、その中でも特に鮭はスーパーフードと言えるほど優れた栄養価を誇る食材です。
鮭には、豊富なビタミン類やオメガ脂肪酸が含まれており、これらは心身の健康に多大な恩恵をもたらします。
アスタキサンチンは、シミやしわの原因となる活性酸素を除去し、紫外線による日焼けのダメージを軽減してくれます。その抗酸化力は、βカロテンの40倍、そして美肌の味方であるビタミンEの1000倍にも相当するという驚異的な数値です。これにより、鮭は美肌作りに欠かせない食材として、大変重要な役割を果たします。
また、鮭には眼精疲労や肩こりの改善にも効果があり、これらの不調に悩んでいる方にはとても有益です。さらに、鮭に含まれるオメガ-3脂肪酸は、動脈硬化や高血圧の予防にも役立ち、血糖値を下げる働きもあるため、糖尿病の予防にも寄与します。これらの健康効果は、鮭を定期的に摂取することで、心身のコンディションを維持するのに非常に役立ちます。
■朝食に鮭を取り入れるのがいい
調理も手軽で、ほかの食材との相性も良く、さまざまな料理に取り入れることができます。
特に、牛乳に含まれるビタミンB2と一緒に摂取すると、頭痛の緩和や胃腸の健康維持にも効果が期待できます。ただし、オメガ-3脂肪酸は熱に弱いため、鮭を調理する際は手早く調理することが大切です。
朝食に鮭を取り入れることで、牛乳に含まれるトリプトファンがメラトニンに変わり、夜には質の良い睡眠を促進することができます。鮭を日常的に取り入れることで、健康と美容の両方に良い影響を与えることができます。
ほかには、イワシ缶もおすすめ。調理の手間もなく、オメガ-3系脂肪酸を手軽に摂取することができます。
■幅広い健康効果を持つ香辛料「シナモン」
アップルパイやドーナツなど、甘いお菓子でよく見かけるシナモン。独特の香りが特徴のこの香辛料は、古代エジプト時代から重宝され、薬としても用いられていました。中国では「桂皮」と呼ばれ、漢方薬の生薬としても昔から使用されています。
シナモンは、香りだけでなく、その効能にも注目すべき特徴を持っています。シナモンは、非常に多くの効能を持つ万能の香辛料です。血行を促進し、体内のコリを解消する効果が期待できます。
さらに、脂肪の燃焼を助け、毛細血管を若返らせる作用もあります。整腸作用やリラックス効果があり、不安や不眠、めまいの緩和にも効果があるとされています。免疫力の回復や美肌効果もあり、その効能は数え切れないほどです。
また、シナモンは抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を取り除くことでも知られています。
このように、シナモンを使うことで、さまざまな健康効果を手軽に得ることができ、日々の生活に取り入れやすいのが魅力です。
■飲み物だけではなく料理にも活用するといい
カプチーノやチャイなど、シナモンが使われている飲み物はリラックス効果を狙ったものです。
特にシナモンスティックを使ったシナモンティーは、香りも楽しみながら、心を落ち着ける飲み物としておすすめです。シナモンはパウダーでもその効能は変わらないため、家庭で手軽に使用することができます。キッチンに常備しておくと、日常的に取り入れることができ、炒め物の仕上げに振りかけるだけで風味が増し、健康効果も得られます。
また、シナモンを使ったアレンジも豊富で、スパイシーな料理だけでなく、甘い料理にもぴったりです。たとえば、シナモンパウダーに少し砂糖を加えてシナモンシュガーを作り、お菓子やトーストにふりかけて楽しむのも良いでしょう。ただし、砂糖を加える際は摂取量に注意し、過剰摂取にならないよう気をつけることが大切です。
シナモンはその風味だけでなく、健康にも多くの恩恵をもたらすため、上手に取り入れて毎日の生活に役立てることができます。
■ハトムギ茶の成分がむくみや肌荒れを解消
漢方では、体内の「気」「血」「水」の3つの要素がバランスよく調和していることが健康の基盤とされています。
それぞれの要素が正常に流れていれば体は元気で、逆にその流れが偏ったり滞ったりすると、不調や病気が引き起こされると考えられています。中でも「水」は、体内の血液以外の水分を指し、具体的には汗やリンパ液などが含まれます。
水毒による不調を改善するためには、生薬として有名な「ヨクイニン」が含まれるハトムギが非常に効果的です。ハトムギはイネ科の一年草で、米や小麦に比べて約2倍ものタンパク質を含む栄養価の高い食材です。そのため、古くから健康に良いとされ、漢方でも用いられています。
■脂肪燃焼もサポートしてくれる
ヨクイニンは、体内の余分な水分や老廃物を排出する働きがあり、これによりむくみや肌荒れを改善するだけでなく、新陳代謝を活性化させる効果もあります。また、ダイエットにも効果的で、体内の循環が整うことで、脂肪燃焼を助けてくれることが期待されます。さらに、ヨクイニンには毛穴の状態を整える作用や、角質層の改善にも関わるため、美肌効果があるとも言われています。
このヨクイニンを手軽に摂取する方法の一つが、よく知られているハトムギ茶です。ハトムギ茶は、スーパーや薬局で簡単に手に入れることができ、毎日飲むことで継続的に健康効果を得ることができます。また、スープや料理にハトムギを加えるのも良い方法です。食事に取り入れることで、体内からの水分調整が進み、むくみや肌荒れの改善につながるでしょう。
毎日の習慣としてハトムギを取り入れることで、体内の「水」の流れが整い、健康的で美しい体作りをサポートします。特に、肌荒れやダイエットに悩む方にとっては、非常に効果的な食材と言えます。
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工藤 孝文(くどう・たかふみ)
内科医
工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。
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(内科医 工藤 孝文)