毎月、新たに発売されるビジネス書は約500冊。いったいどの本を読めばいいのか。
読書家が集まる本の要約サービス「flier(フライヤー)」で、5月にアクセス数の多かったベスト20冊を、同サービスの編集部が紹介する――。
第1位:『誰にも何にも期待しない』(長倉顕太著、ソシム)

第2位:『AI分析でわかった トップ5%社員の読書術』(越川慎司著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

第3位:『世界標準のフィードバック』(安田雅彦著、SBクリエイティブ)

第4位:『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』(針貝有佳著、PHP研究所)

第5位:『若手はどう言えば動くのか?』(ひきたよしあき著、日経BP)

第6位:『決定版 強いチームをつくる! リーダーの心得』(伊庭正康著、明日香出版社)

第7位:『なぜ酔っ払うと酒がうまいのか』[葉石かおり著、浅部伸一(監修)、日経BP]

第8位:『人が壊れるマネジメント』(橋本将功著、ソシム)

第9位:『行動する人に世界は優しい』(佐藤航陽著、新潮社)

第10位:『それ、すべて過緊張です。』(奥田弘美著、フォレスト出版)

第11位:『アンパンマンと日本人』(柳瀬博一著、新潮社)

第12位:『2040年の未来予測』(成毛眞著、日本経済新聞出版)

第13位:『頭のいい人が話す前に考えていること』(安達裕哉著、ダイヤモンド社)

第14位:『13歳からの論理的思考』(藤城尚久著、総合法令出版)

第15位:『言葉の解像度を上げる』(浅田すぐる著、プレジデント社)

第16位:『なぜあの商品、サービスは売れたのか?』(木下勝寿著、実業之日本社)

第17位:『半分、減らす。』(川野泰周著、三笠書房)

第18位:『とにかく早起き』(高田晃著、明日香出版社)

第19位:『「世界観」のつくり方』(イ・ジヒャン著、李聖和訳、日本実業出版社)

第20位:『対話するプレゼン』(岩下宏一著、ダイヤモンド社)
※本の要約サービス「flier」の有料会員を対象にした、2025年5月の閲覧数ランキング
■成功の秘訣は「期待しない」姿勢
第1位に輝いたのは『誰にも何にも期待しない』でした。
著者の長倉顕太さんは、28歳で出版社に転職し、数々のベストセラーを手がけたのちに独立。現在は、作家、プロデューサー、編集者として活躍しています。
長倉さんの成功の秘訣は、ベストセラー『移動する人はうまくいく』でも語られている通り、「移動すること」(引っ越しや旅をすること)。
そして、もう一つの成功の秘訣として、本書のテーマになっているのが、「期待しない」姿勢です。「期待しないこと」によって「失敗を恐れて行動しない」「失敗して落ち込んで行動を止める」ことがなくなり、行動力が高まって成功しやすくなるそう。
本書では、「人生に期待しない」「自分の能力に期待しない」「友達に期待しない」「上司に期待しない」「社内の評価に期待しない」など、計31の対象について「期待しない」スタンスを保つべき理由と、その具体的な実践方法が示されています。
長倉さんは、「期待」を下げることが「幸福に近づく道でもあり、ストレスフルな現代社会でメンタルを病まない方法でもあるのです」と語ります。すべてに全力投球しているのになぜかうまくいかない……そう悩む人に熟読を勧めたい一冊です。

■トップ5%社員は年平均43.2冊の読書をしている
第2位には、各企業で成果を出し続ける「トップ5%社員」(以下、5%社員)の行動習慣をまとめたシリーズの最新刊、『AI分析でわかった トップ5%社員の読書術』がランクイン。
著者の越川慎司さんは本書の執筆にあたり、累計3.4万時間をかけて、5%社員の本の読み方と、本から得た学びを成果に繋げる方法を調査・解析しました。調査を続けるうち、“読書嫌い”だった越川さんも、年間300冊以上の読書を習慣にするようになったそうです。
5%社員962名を調べると、年に平均で43.2冊の読書をし、うち63%は35冊以上読んでいることがわかりました。それに対して、一般のビジネスパーソンは年間平均2.4冊。読書量に、5%社員と一般社員の違いが如実に表れていることがわかります。
5%社員の読書ライフは、選書にも特徴があります。自分の専門分野や課題に対応する本を5冊選んだら、2冊は偶然の出合いや新しい分野の本を選んでいるのです。この習慣は、視野を広げ、アイデアや発想力を高める効果が期待できます。
このほかにも、積読しないコツ、読んだ内容を定着させる方法など、さまざまな読書術が紹介される本書。読書のモチベーションを高めたい人におすすめします。
■効果的なフィードバックの伝え方
第3位は『世界標準のフィードバック』。
名だたる外資系企業で人事全般の経験を積んだ後、現在は約30社の人事顧問を務める安田雅彦さんが、外資系企業流のフィードバックのポイントをまとめた一冊です。
安田さんによると、外資系企業では、フィードバックを「成長機会につながるギフト」と捉えるそう。言いづらいことでも、相手の成長と改善を期待して率直に伝えるのです。
その前提を理解できたら、まず取り入れたいのは、EECというフレームワーク。
効果的なフィードバックには、事実(Example)、及ぼす効果・影響(Effect)、褒める・変更の提案(Congrats・Change)という3つの要素が含まれています。フィードバックするときは、この3要素を揃えるように意識しましょう。
例えば、次のような伝え方です。
ポジティブなフィードバック:「先日のレポートは、伝えたい内容がうまくまとまっていて(Example)、スタッフのみんなも課題がクリアに理解できていた(Effect)ようです。素晴らしいですね。次回もあのスタイルでお願いします(Congrats)」
ネガティブなフィードバック:「先日のレポートは、スライドだけの説明だったために(Example)、スタッフのみんなが正確に理解できていなくて、少し混乱していた(Effect)ようです。次回からは、資料を準備してはどうでしょうか(Change)」
相手の心を折らずに、伸ばす――本書を読めば、そんなフィードバックの極意が身につくはずです。
■デンマーク人は「軽い雑談」で効率性を上げる
続いて、4位以下から、注目の書籍をご紹介します。

第4位は、『デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか』でした。ベストセラーとなった『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』の著者でもあるデンマーク文化研究家の針貝有佳さんが、デンマーク人のビジネスコミュニケーションに焦点を当てた一冊です。
デンマークといえば、ビジネス効率性が5年連続で世界第1位の国。そんなデンマークの職場では、「軽い雑談」がコミュニケーションの手段として大切にされているそうです。
例えば首都・コペンハーゲンにある機関「ブロックスハブ」は、サステナビリティ事業に関わる企業や個人向けのコワーキングスペースを運営しています。そこではカジュアルに雑談できる環境が整っており、国内外の多様なステイクホルダーをつなげる役割を果たしているそうです。
実際、同機関で働くヤコブさんは、著者が取材した当日、5分会議を2回行ったことで、相手と一緒に仕事ができる可能性が見え、全体像もつかめたと語ります。
あなたの職場では、雑談はどの程度活発に交わされているでしょうか? もしあなたが生産性や心理的安全性アップに課題を抱えるマネジャーなら、雑談しやすい雰囲気づくりを目指すことから始めてみませんか。
■若手に「あの仕事、終わった?」はNG
第5位は『若手はどう言えば動くのか?』でした。
30代半ばのあなたは、会社で新人教育を任されました。後輩のために一生懸命教えても、相手は「こんなのやる意味あるんですか」「私には無理です」「やる気が出ません」と言うばかり。そもそも共通の話題がなくて距離がまったく縮まらない――。

さて、こんなシーンで、あなたならどう対応しますか? 有効な打ち手が思い浮かばないなら、ぜひ本書を読んでみてください。
本書では、伝え方のプロであり、大阪芸術大学、明治大学、早稲田大学などで教えるひきたよしあきさんが、若手を腹落ちさせるコミュニケーションのポイントを教えてくれます。
例えば、失敗を恐れて動き出せない若手に「あの仕事、終わった?」と声をかけるのはNG。相手をますます焦らせるだけです。
ここでは、「○○が分からなければ相談に乗るよ」と、若手が困っていそうな箇所を具体的に示しつつ、こちらから歩み寄る姿勢を見せましょう。加えて、自分の失敗談を交えて仕事の解説をすれば完璧です。
シーン別に具体的なフレーズが紹介されている本書。読めばすぐに役立つ一冊です。
■「人が壊れるマネジメント」が起きるメカニズム
最後にご紹介したいのは、第8位の『人が壊れるマネジメント』。500件以上のプロジェクトのリードとサポートを実施してきた橋本将功さんが、プロジェクトの現場で起きている「人が壊れるマネジメント」を50パターン提示し、そのメカニズムを解き明かすとともに、適切なマネジメント例を紹介しています。
例えば「期待の不明確さで壊れる」。
プロジェクトにおいて、メンバーそれぞれに期待される具体的な業務内容や責任範囲が不明確なままでは、誰が何を担当するのかが曖昧になり、現場に混乱が生じやすくなります。
その状態を解決しようと、責任感のあるメンバーが過剰にタスクを引き受け、ストレスや過労によって倒れてしまうのも「あるある」です。
この「人が壊れるマネジメント」に陥らないようにするために、プロジェクトが始まるときやタスクを依頼するときには、相手に次の3点を明確に伝えましょう。
(1)役割:プロジェクトでどのような役割を果たしてほしいか

(2)タスク:プロジェクトとして必要な成果物の方向性

(3)評価:組織として期待する中長期的な役割への期待
「あるある」を知っておくだけで、「人が壊れるマネジメント」に陥るリスクは大幅に減らせるでしょう。IT関係だけでなく、あらゆる業界のプロジェクトマネジャーに読んでほしい一冊です。
今月も、読書術から新人育成、プレゼンまで、幅広いジャンルの本がランクインしました。また、先月第9位だった2023年4月刊の『頭のいい人が話す前に考えていること』が第13位と、依然として多くの方に読まれています。来月はどのような本が多く読まれるのか、引き続きチェックしてまいります。

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flier編集部
本の要約サービスflier(フライヤー)は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだだけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

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(flier編集部)
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