健康で長生きするにはどうすればいいのか。国際医療福祉大学三田病院糖尿病・代謝・内分泌内科 部長/同大学医学部教授は「テレビで紹介された“からだにいい食品”に飛びつく人がいる。
■「ヨーグルトを食べれば健康になる」と信じる人の落とし穴
本連載第1回では、50歳を過ぎたら「絶対に受けるべき検査」と「取り組むべき3つの習慣」について、第2回では、「悪玉血液」の恐ろしさについてお話ししました。今回は、その続編として「健康になる食品」の残念な食べ方を解説します。
厚生労働省によると、毎年30万人以上の方が心疾患と脳血管疾患で亡くなっています。多くは悪玉血液を育む生活習慣により、血管がボロボロになり、動脈硬化が進行してしまったことが原因です。血管は年齢とともに硬くなり、狭くなって詰まりやすくなります。
食生活の改善によりその進行を遅らせ、若々しい血管を保つことは可能です。ヨーグルト、納豆、オリーブオイル、アマニ油、オートミール、ナッツ……からだに良いとされ、もてはやされている食品は数多く存在し、確かにそれぞれ優れた栄養成分を含んでいます。
しかし、それだけで「健康を維持できる」と考えるのは、やや短絡的です。「腸活のために毎日ヨーグルトを欠かさない」「朝は必ずフルーツとグラノーラ」「ナッツとオートミールで完璧」――こうした食生活をしている人の中にも、実は血液検査の数値が芳しくない人がいます。
ある50代女性のケースでは、毎朝「ヨーグルト+はちみつ+果物+グラノーラ」を欠かさず摂っていました。
■「何を食べるか」より「どう食べるか」が重要
せっかく健康にいいヨーグルトを食べても、そこにジャムをたっぷりかけたら、糖分過多で台無しです。ヨーグルトは腸内環境を整える食品として優れていますが、そこに糖分を過剰に添付してしまっては、むしろ悪玉菌の増殖を招きます。「甘いヨーグルト習慣」の見直しは必須といえるでしょう。からだに良い食べ物も、「何を食べるか」よりも「どう食べるか」の方が重要です。
また、ヨーグルトを食べることを習慣としていて、いつまでも元気な人は、本当に「ヨーグルトを食べること」だけが原因で、健康を維持しているのでしょうか。実は、それ以外にも健康習慣を多く実践していることが多いのです。食事面のみならず、生活全般でからだによいことを無理のない範囲で取り入れている。だから健康を維持できるのです。
つまり、「ヨーグルト中心の朝ごはん」で健康になると思っている人は、他の習慣をおろそかにしていることが多く、結果も出づらくなります。ゼロカロリー食品も同様な事がありますので要注意です。
■「ちょっとだけ」の実践が健康を育む
忙しい日々の中で、朝晩30分運動する、毎日ジムに通う、といった目標は現実味を失いがちです。結局、続かないことが多い。けれど、1階だけ階段を上がる、スクワットを5回する、座りっぱなしを30分に1回だけやめてみる、のような「ちょっとだけ」なら、健康への意識さえあれば続けられるのではないでしょうか。
いわゆる「ヨーグルトで健康を維持している人」は、こういった「ちょっとだけ」も合わせて実践していることが多い。常にどこかに健康への意識があるのです。毎日多くの患者さんと接する中で「健康に対する意識」こそ最も重要、とひしひしと感じています。未来の健康は、日々の意識と行動の積み重ね、「チリツモ」でしか築けません。
■「テレビで紹介されていた」は要注意
ご存じの方も多いと思いますが、「2・6・2の法則(ニーロクニの法則)」という法則があります。集団における構成員のパフォーマンスや態度、行動傾向を大まかに3つに分けたときの比率が、2:6:2に分かれるという考え方です。どのような集団を切り取っても、優秀な人は上位2割、平均的な人は6割、そして問題のある下位2割、となるのです。
患者さんへの食事指導においても、言わなくてもきちんとやってくださっている人は2割。どうしても習慣を変えてくれない厳しい人が2割。残り6割のマジョリティの人たちは、「健康意識はあるけれど、正しい行動変容ができていない。
中には健康意識が高いゆえ、「健康食品に依存しすぎて、全体のバランスを崩している」と感じます。この方々をいかに良い形にしていくかが、医者の腕の見せ所でもあります。
「これを食べれば健康になると言われたから」「テレビで紹介されていたから」――。こうした理由で、ある特定の食品を熱心に摂り続けている人が時にいます。テレビに出ている人であれば専門家であるかのように錯覚される風潮もあります。
現役の臨床医は発言には慎重で、誤解を招くようなアグレッシブなこと――「これさえ食べれば大丈夫」などということはあまり言いません。強い言葉は真実のように感じるかもしれませんが、一度、冷静に立ち止まって判断してください。
■健康意識の高い人たちほど情報に踊らされている
オートミール、チアシード、アマニ油、MCTオイル、プロテイン、カカオニブ……こうした「流行りの健康食品」は短期間で消費され、また入れ替わっていきます。
いわゆる「健康オタク」と自称する患者さんがいます。ところが、検査をしてみると善玉コレステロールは少なく、悪玉コレステロール値が高い。肝機能も糖代謝もボロボロでした。つまり、「健康情報を集めていること」と「本当に健康であること」は別ということです。
確かに「健康に良い」と報じられる一つ一つの食品は、優れた成分、栄養素が含まれています。だからこそ、メディアに取り上げられます。しかし、強調しますが、「これだけを食べたら万能」な食品はありません。もちろん、今まで摂取していたものに代替した場合は良い場合もあります。
テレビやネットの情報を鵜呑みにして、一つの食品に依存するのは危険です。
■善玉血液をつくる「適糖のススメ」
善玉血液とは、サラサラと流れ、酸素や栄養をしっかり運べる血液のこと。反対に、糖質や脂質の摂りすぎ、偏った食事が続くと、悪玉血液=ドロドロ・ベタベタの状態になります。
糖質を完全に断つのは不可能です。糖質もからだに必要な栄養素です。そのため、「質の良い糖」を「適量摂る」ことが重要です。いわば、「適糖」のススメです。
白米を玄米に、精製パンを全粒粉パンに置き換えるなど、シンプルな工夫で血液の質は変わります。また、オリーブオイルなどの健康油についても、摂りすぎればただの脂肪。適量を意識しましょう。質と量、調理法が大事です。
■善玉血液を保つ「食習慣の基本」がある
善玉血液を保つためには、以下のような食習慣が基本です。
・主食・主菜・副菜のバランスを整える(食材をローテーションする)
・加工食品に偏らず、自然のままの食材を意識する
・朝の糖質を見直す(糖質トリオ=グラノーラ+果物+ヨーグルトは要注意)
・「たまにはいいよね」の回数を可視化する
・血糖値の乱高下を防ぐため、食べる順番にも配慮する(ベジファースト)
血液をドロドロにするのは食べ方。糖質や脂質の過剰摂取(特に夜遅い時間)が最大のリスクです。つまり、食事の「質とバランス」が健康のカギなのです。健康食品に頼るのではなく、「健康的な食べ方」を身につける。その意識こそが、血液を、細胞を、身体全体を変えていきます。
面倒かもしれませんが、結局は色々なものをバランスよく食べることが王道です。野菜を摂るのが体によいのは当たり前ですが、野菜も、一つのものばかりを食べるのはかえって身体に負担になることがあります。
例えば、緑の野菜は概してカリウム含有量が多いので、緑の野菜ばかりだとカリウムを過剰摂取することになります。そこにプロテインを摂れば腎臓は悲鳴を上げてしまいます。赤のトマトや黄色のかぼちゃを加えるなど、彩り豊かな食卓が理想なのです。
■サプリメントに頼りすぎるのはNG
サプリメントも信じすぎない方が良いでしょう。例えばビタミンDは癌の発症リスクを抑えると言われています。しかし、アメリカでの大規模な検証で、サプリメントによるビタミンDの摂取では、癌の抑制に効果はないという結果が出ました。まだ全てが解明されていないサプリメントですので、頼りすぎるのではなく、程よく付き合っていくのが良いのではないかと思います。
一人で健康習慣を継続するのは難しい。だからこそ、食事も、日々の運動も、家族や周囲の方と一緒に実践し、少しずつ良いことを積み重ねることが大切です。例えば食事面では、ウィークデーと週末で料理担当を変えるなども良いかもしれません。おのずと使う食材やメニューにバリエーションが生まれます。家族と協力してローテーションを組むなど、楽しく工夫することも可能です。
無理なく一つでも二つでも行動すれば、将来の心筋梗塞、脳梗塞リスクを確実に減らせます。大切なので繰り返しますが、健康は「意識と行動の積み重ね」です。
■「健康長寿の原則」は2500年前から変わっていない
古代ギリシャの医師、ヒポクラテスの名言で「食べ物で治せない病気は、医者でも治せない」があります。これは2500年も前に語られたとは思えないほど、現代にも通じます。逆に言えば、食べ物を一つ間違えば病気になり得る、ということです。
ある程度、若い時に自己投資して、食べ物や生活習慣を整えておくことが、将来の病気リスクを大きく下げます。薬や治療法の発達によって、現代では多くの病気が「治療可能」になりましたが、生活習慣病の多くは「食べ方」によってつくられ、「食べ方」によってしか本質的には改善できません。
「何を食べるか」ではなく、「どう食べるか」。それが、本当の意味で健康をつくる第一歩なのです。そして彼は薬のない時代に同時に「歩くことは人間にとって最良の薬である」とも言っています。
ヒポクラテスの言葉を今一度、胸に刻みましょう。
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坂本 昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長
国際医療福祉大学 医学部教授。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒。東京大学・千葉大学大学院時代より、糖尿病、心臓病、特に高血圧に関する基礎から臨床研究に渡るまで多くの研究論文を発表。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定指導医・総合内科専門医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修、臨床研究協議会プログラム責任者養成講習会を修了。現在も研究を続けながら若手医師や医学部生の指導も担当している。
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高橋 誠(たかはし・まこと)
医療・健康コミュニケーター 病院広報コンサルタント
1963年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ミズノスポーツ広報宣伝部、リクルート宣伝企画部、米国西海岸最大の製函会社でのパッケージ・デザイン営業・マーケティング(LA12年)、ゴルフ場経営(山梨2年)、学校法人慈恵大学広報推進室長(東京16年)を経て、2020年より現職。日米複数法人通算40年の広報宣伝業務を通じ、メディア・医療関係者と幅広い交流網を構築。現職にてメディアと医師をつなぐ。プレジデントオンライン「ドクターに聞く“健康長寿の秘訣”」、月刊美楽「幸せなおじいちゃん、おばあちゃんになろう」、月刊源喜通信「食と健康」で医療・健康コラムを連載中。主な出版プロデュースは『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(2025年、渡邊剛著、坂本昌也監修、あさ出版)、『心を安定させる方法』(2024年、渡邊剛著、アスコム)。趣味はゴルフ、ワイン(日本ソムリエ協会ワインエキスパート#58)。
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(国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長 坂本 昌也、医療・健康コミュニケーター 病院広報コンサルタント 高橋 誠 聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
残念ながら毎日食べ続けても健康にはなれない。何を食べるかより、どう食べるかのほうが大切だ」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
■「ヨーグルトを食べれば健康になる」と信じる人の落とし穴
本連載第1回では、50歳を過ぎたら「絶対に受けるべき検査」と「取り組むべき3つの習慣」について、第2回では、「悪玉血液」の恐ろしさについてお話ししました。今回は、その続編として「健康になる食品」の残念な食べ方を解説します。
厚生労働省によると、毎年30万人以上の方が心疾患と脳血管疾患で亡くなっています。多くは悪玉血液を育む生活習慣により、血管がボロボロになり、動脈硬化が進行してしまったことが原因です。血管は年齢とともに硬くなり、狭くなって詰まりやすくなります。
食生活の改善によりその進行を遅らせ、若々しい血管を保つことは可能です。ヨーグルト、納豆、オリーブオイル、アマニ油、オートミール、ナッツ……からだに良いとされ、もてはやされている食品は数多く存在し、確かにそれぞれ優れた栄養成分を含んでいます。
しかし、それだけで「健康を維持できる」と考えるのは、やや短絡的です。「腸活のために毎日ヨーグルトを欠かさない」「朝は必ずフルーツとグラノーラ」「ナッツとオートミールで完璧」――こうした食生活をしている人の中にも、実は血液検査の数値が芳しくない人がいます。
ある50代女性のケースでは、毎朝「ヨーグルト+はちみつ+果物+グラノーラ」を欠かさず摂っていました。
一見、非常に健康的ですが、血液検査では中性脂肪が高く、HbA1c(血糖値の指標)もやや高め。詳しく聞くと、「甘いヨーグルトが好きで時にジャムも加えてしまう」とのこと。
■「何を食べるか」より「どう食べるか」が重要
せっかく健康にいいヨーグルトを食べても、そこにジャムをたっぷりかけたら、糖分過多で台無しです。ヨーグルトは腸内環境を整える食品として優れていますが、そこに糖分を過剰に添付してしまっては、むしろ悪玉菌の増殖を招きます。「甘いヨーグルト習慣」の見直しは必須といえるでしょう。からだに良い食べ物も、「何を食べるか」よりも「どう食べるか」の方が重要です。
また、ヨーグルトを食べることを習慣としていて、いつまでも元気な人は、本当に「ヨーグルトを食べること」だけが原因で、健康を維持しているのでしょうか。実は、それ以外にも健康習慣を多く実践していることが多いのです。食事面のみならず、生活全般でからだによいことを無理のない範囲で取り入れている。だから健康を維持できるのです。
つまり、「ヨーグルト中心の朝ごはん」で健康になると思っている人は、他の習慣をおろそかにしていることが多く、結果も出づらくなります。ゼロカロリー食品も同様な事がありますので要注意です。
残念ですが、「これを食べたら無敵」な食材はありません。食事面、運動面と、生活全般を通して無理なく「からだに良い習慣」を心がけることこそ、健康寿命を延ばす近道です。
■「ちょっとだけ」の実践が健康を育む
忙しい日々の中で、朝晩30分運動する、毎日ジムに通う、といった目標は現実味を失いがちです。結局、続かないことが多い。けれど、1階だけ階段を上がる、スクワットを5回する、座りっぱなしを30分に1回だけやめてみる、のような「ちょっとだけ」なら、健康への意識さえあれば続けられるのではないでしょうか。
いわゆる「ヨーグルトで健康を維持している人」は、こういった「ちょっとだけ」も合わせて実践していることが多い。常にどこかに健康への意識があるのです。毎日多くの患者さんと接する中で「健康に対する意識」こそ最も重要、とひしひしと感じています。未来の健康は、日々の意識と行動の積み重ね、「チリツモ」でしか築けません。
■「テレビで紹介されていた」は要注意
ご存じの方も多いと思いますが、「2・6・2の法則(ニーロクニの法則)」という法則があります。集団における構成員のパフォーマンスや態度、行動傾向を大まかに3つに分けたときの比率が、2:6:2に分かれるという考え方です。どのような集団を切り取っても、優秀な人は上位2割、平均的な人は6割、そして問題のある下位2割、となるのです。
これは患者さんにも当てはまります。
患者さんへの食事指導においても、言わなくてもきちんとやってくださっている人は2割。どうしても習慣を変えてくれない厳しい人が2割。残り6割のマジョリティの人たちは、「健康意識はあるけれど、正しい行動変容ができていない。
中には健康意識が高いゆえ、「健康食品に依存しすぎて、全体のバランスを崩している」と感じます。この方々をいかに良い形にしていくかが、医者の腕の見せ所でもあります。
「これを食べれば健康になると言われたから」「テレビで紹介されていたから」――。こうした理由で、ある特定の食品を熱心に摂り続けている人が時にいます。テレビに出ている人であれば専門家であるかのように錯覚される風潮もあります。
現役の臨床医は発言には慎重で、誤解を招くようなアグレッシブなこと――「これさえ食べれば大丈夫」などということはあまり言いません。強い言葉は真実のように感じるかもしれませんが、一度、冷静に立ち止まって判断してください。
■健康意識の高い人たちほど情報に踊らされている
オートミール、チアシード、アマニ油、MCTオイル、プロテイン、カカオニブ……こうした「流行りの健康食品」は短期間で消費され、また入れ替わっていきます。
例えば、カスピ海ヨーグルトは一時期大変関心が集まりましたが、最近それほど見かけません。かつて推奨されていた食品がいつの間にか姿を消す。だからこそ、目先のブームではなく、持続的な健康習慣が重要です。
いわゆる「健康オタク」と自称する患者さんがいます。ところが、検査をしてみると善玉コレステロールは少なく、悪玉コレステロール値が高い。肝機能も糖代謝もボロボロでした。つまり、「健康情報を集めていること」と「本当に健康であること」は別ということです。
確かに「健康に良い」と報じられる一つ一つの食品は、優れた成分、栄養素が含まれています。だからこそ、メディアに取り上げられます。しかし、強調しますが、「これだけを食べたら万能」な食品はありません。もちろん、今まで摂取していたものに代替した場合は良い場合もあります。
テレビやネットの情報を鵜呑みにして、一つの食品に依存するのは危険です。
特定の栄養素を強調する情報に惑わされず、偏りのない視点で「自分自身の」食全体の質と構成、生活習慣に目を向けてください。
■善玉血液をつくる「適糖のススメ」
善玉血液とは、サラサラと流れ、酸素や栄養をしっかり運べる血液のこと。反対に、糖質や脂質の摂りすぎ、偏った食事が続くと、悪玉血液=ドロドロ・ベタベタの状態になります。
糖質を完全に断つのは不可能です。糖質もからだに必要な栄養素です。そのため、「質の良い糖」を「適量摂る」ことが重要です。いわば、「適糖」のススメです。
白米を玄米に、精製パンを全粒粉パンに置き換えるなど、シンプルな工夫で血液の質は変わります。また、オリーブオイルなどの健康油についても、摂りすぎればただの脂肪。適量を意識しましょう。質と量、調理法が大事です。
■善玉血液を保つ「食習慣の基本」がある
善玉血液を保つためには、以下のような食習慣が基本です。
・主食・主菜・副菜のバランスを整える(食材をローテーションする)
・加工食品に偏らず、自然のままの食材を意識する
・朝の糖質を見直す(糖質トリオ=グラノーラ+果物+ヨーグルトは要注意)
・「たまにはいいよね」の回数を可視化する
・血糖値の乱高下を防ぐため、食べる順番にも配慮する(ベジファースト)
血液をドロドロにするのは食べ方。糖質や脂質の過剰摂取(特に夜遅い時間)が最大のリスクです。つまり、食事の「質とバランス」が健康のカギなのです。健康食品に頼るのではなく、「健康的な食べ方」を身につける。その意識こそが、血液を、細胞を、身体全体を変えていきます。
面倒かもしれませんが、結局は色々なものをバランスよく食べることが王道です。野菜を摂るのが体によいのは当たり前ですが、野菜も、一つのものばかりを食べるのはかえって身体に負担になることがあります。
例えば、緑の野菜は概してカリウム含有量が多いので、緑の野菜ばかりだとカリウムを過剰摂取することになります。そこにプロテインを摂れば腎臓は悲鳴を上げてしまいます。赤のトマトや黄色のかぼちゃを加えるなど、彩り豊かな食卓が理想なのです。
■サプリメントに頼りすぎるのはNG
サプリメントも信じすぎない方が良いでしょう。例えばビタミンDは癌の発症リスクを抑えると言われています。しかし、アメリカでの大規模な検証で、サプリメントによるビタミンDの摂取では、癌の抑制に効果はないという結果が出ました。まだ全てが解明されていないサプリメントですので、頼りすぎるのではなく、程よく付き合っていくのが良いのではないかと思います。
一人で健康習慣を継続するのは難しい。だからこそ、食事も、日々の運動も、家族や周囲の方と一緒に実践し、少しずつ良いことを積み重ねることが大切です。例えば食事面では、ウィークデーと週末で料理担当を変えるなども良いかもしれません。おのずと使う食材やメニューにバリエーションが生まれます。家族と協力してローテーションを組むなど、楽しく工夫することも可能です。
無理なく一つでも二つでも行動すれば、将来の心筋梗塞、脳梗塞リスクを確実に減らせます。大切なので繰り返しますが、健康は「意識と行動の積み重ね」です。
■「健康長寿の原則」は2500年前から変わっていない
古代ギリシャの医師、ヒポクラテスの名言で「食べ物で治せない病気は、医者でも治せない」があります。これは2500年も前に語られたとは思えないほど、現代にも通じます。逆に言えば、食べ物を一つ間違えば病気になり得る、ということです。
ある程度、若い時に自己投資して、食べ物や生活習慣を整えておくことが、将来の病気リスクを大きく下げます。薬や治療法の発達によって、現代では多くの病気が「治療可能」になりましたが、生活習慣病の多くは「食べ方」によってつくられ、「食べ方」によってしか本質的には改善できません。
「何を食べるか」ではなく、「どう食べるか」。それが、本当の意味で健康をつくる第一歩なのです。そして彼は薬のない時代に同時に「歩くことは人間にとって最良の薬である」とも言っています。
ヒポクラテスの言葉を今一度、胸に刻みましょう。
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坂本 昌也(さかもと・まさや)
国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長
国際医療福祉大学 医学部教授。国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長。東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒。東京大学・千葉大学大学院時代より、糖尿病、心臓病、特に高血圧に関する基礎から臨床研究に渡るまで多くの研究論文を発表。日本糖尿病学会認定指導医・糖尿病専門医、日本内分泌学会認定指導医・内分泌代謝専門医、日本高血圧学会認定指導医・高血圧専門医、日本内科学会認定指導医・総合内科専門医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本医師会認定産業医、厚生労働省指定オンライン診療研修、臨床研究協議会プログラム責任者養成講習会を修了。現在も研究を続けながら若手医師や医学部生の指導も担当している。
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高橋 誠(たかはし・まこと)
医療・健康コミュニケーター 病院広報コンサルタント
1963年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。ミズノスポーツ広報宣伝部、リクルート宣伝企画部、米国西海岸最大の製函会社でのパッケージ・デザイン営業・マーケティング(LA12年)、ゴルフ場経営(山梨2年)、学校法人慈恵大学広報推進室長(東京16年)を経て、2020年より現職。日米複数法人通算40年の広報宣伝業務を通じ、メディア・医療関係者と幅広い交流網を構築。現職にてメディアと医師をつなぐ。プレジデントオンライン「ドクターに聞く“健康長寿の秘訣”」、月刊美楽「幸せなおじいちゃん、おばあちゃんになろう」、月刊源喜通信「食と健康」で医療・健康コラムを連載中。主な出版プロデュースは『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(2025年、渡邊剛著、坂本昌也監修、あさ出版)、『心を安定させる方法』(2024年、渡邊剛著、アスコム)。趣味はゴルフ、ワイン(日本ソムリエ協会ワインエキスパート#58)。
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(国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 部長 坂本 昌也、医療・健康コミュニケーター 病院広報コンサルタント 高橋 誠 聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)
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