血糖値が気になる人は何を食べればいいのか。糖尿病内科医の山村聡さんは「糖質を多く含んだ、ごはん、パン、パスタ、うどん、そばなどは食べたあとに血糖値が急上昇する。
その後下がっても、もう一度上がってしまうメニューに注意」という――。
※本稿は山村聡『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■血糖値を下げるため「どの料理が血糖値を上げるのか」を把握
血糖値を下げるために、食事の際に心がけておきたいポイントあります。それが次の4つです。
《血糖値を下げるための食事法4つのポイント》

・何を食べると血糖値が上がるのかを理解する

・食べ順に気をつける

・1日の食事回数

・食事の注意点(間食・早食い・夜食)
1つめのポイントが、何を食べると血糖値が上がるかという問題です。
血糖値を上げるのは、食べ物に含まれる炭水化物です。炭水化物は、糖質と食物繊維から構成されていますが、このうち、糖質が血糖値を上昇させる主たる栄養素とお考えください。そして、食べ物に含まれる炭水化物量(=糖質量)が血糖値に直結します。
ですから、炭水化物(糖質)を多く含んだ食品、ごはん、パン、パスタ、うどん、そば、イモ、コーン、果物、フルーツジュースなどが血糖値を大きく引き上げます。
■ランチによく食べる「パスタ」と「どんぶりもの」では?
今日のお昼、何を食べようかと考えたとき、みなさんの頭に浮かぶレシピはどんなものがあるでしょう?
パスタや丼物をあげるかたも多いに違いありません。ここでは、お昼の王道メニューとして、カルボナーラと牛丼(並盛)で検証を行ってみました。
まずは、カルボナーラ。

初期値は91mg/dL。食後、血糖値はゆっくりとゆっくりと上がっていき、70分後にいったんピークを形作ります。しかし、その後、いったん下がりかけた血糖値は、再び上昇。ようやく110分後に最高値を記録しました。その値が172mg/dL。上昇幅は81mg/dLとなっています。
カルボナーラの場合、食後血糖値の山が2つできていますから、これは、明らかに二峰性の変動ということになります(図表1)。
■牛丼もカルボナーラと同じぐらい食後血糖値は上がるが…
次に、牛丼並盛。
初期値が95mg/dL。血糖値は急上昇し、70分の時点でピーク。169mg/dLを記録しました。上昇幅は74mg/dLです。

カルボナーラは、血糖値が上昇する際も、下降する際も、非常にゆっくりでした。カルボナーラには、多くの脂質(含有量31.8g)が含まれているため、こうした現象を引き起こしていると考えられます。
二峰性の変動が起こっているところからも、炭水化物の摂取しすぎになっていることは明らかですね。カルボナーラには83.3gの炭水化物(糖質79.0g)が含まれます。
お昼に、こうした二峰性の変動を起こしてしまうような食事をとると、午後には強烈な眠気に襲われたり、だるくなったりします。
血糖値を気にしているかたでなくとも、午後の仕事をしっかりやりたいビジネスパーソンにとっては、あまりおすすめできないメニューといっていいかもしれません。ましてや午後に重要な会議がある人などは、できるだけ避けたいですね。
■強烈な眠気に誘われる危険性、会議がある日は避けるべき
脂質をある程度含んだ食品は、血糖値の上昇をゆっくりに、ピークも低めに抑制できます。いわば、それは脂質を含んだ食材をとることのメリットでした。
しかし、カルボナーラの場合のように、糖質も脂質もたっぷりある食品では、脂質の影響で血糖値の上昇下降が非常にゆっくりになる結果、血糖値が高めの状態がかなり長い間続くことになります。
その分、血管やすい臓にかかる負担が大きくなります。これは脂質多めの食品のデメリットといってもよいでしょう。

カルボナーラに比べて、牛丼のほうは、血糖値が急上昇したのち、ストンと下がっています。含まれる炭水化物は88.2g。この大量の炭水化物によって、明らかな血糖値スパイクが起きているわけです。
こちらも、カルボナーラと同様、お昼には、あまりすすめられないレシピということになるでしょう。
■ランチにありがちな「コンビニおにぎり2個」の場合は?
コンビニおにぎり(ツナマヨ)を1個食べた場合と、2個食べた場合で、血糖値の上がり方にどんな違いが出るでしょうか。
1個の場合(炭水化物量37.8g)。初期値(スタート時点の血糖値)が88mg/dL、50分かけてピークに到達。ピークは139mg/dLでした。その上昇幅は51mg/dLです。
2個の場合(炭水化物量75.6g)。初期値が83mg/dL、80分かけてピークの178mg/dLに到達。上昇幅は95mg/dLでした。

1個で51mg/dLの血糖値が上昇、2個でほぼ倍近くの95mg/dL上昇。炭水化物量も2倍。ですから、炭水化物量と血糖値が見事に相関しています。炭水化物をとればとるだけ、血糖値が上がるおそれがあるということがよくわかりますね。
ただし、家で炊いたお米だと、ここまできれいな相関関係は生じません。これはコンビニおにぎりの特性といってもよいでしょう。
コンビニの加工されたおにぎりは、非常に消化しやすいように製品化されているので、血糖値がスムーズに上がりやすい傾向があるのです。このことも知っておくといいでしょう。
■カレーライスは食後血糖値を2倍にし、ダラダラと続く
カレーライスは血糖値を上げやすい代表的なレシピです。ごはんの量が多い(今回のポークカレーはライス300g)だけではなく、カレーのルーにも小麦粉が含まれているため、炭水化物の多い食品だからです。
検証の結果は……。初期値が71lmgl/dL、70分かけてピークに達し、149mg/dLを記録。
上昇幅は78mg/dLでした。
カレーライスの場合、脂質がかなり含まれています。脂質の影響で炭水化物の消化がゆっくりになり、血糖値の上昇もゆるやかになります。
しかも、その大量の炭水化物(126.5g)がじわりじわりと吸収される結果、血糖値が下がるのにも時間がかかります。今回の検証でも、血糖値が元の数値まで戻るのに、なんと5時間もかかりました。
こういう下がり方がだらだらと続くと、食後に猛烈に眠くなったり、だるくなったりする可能性があります。血糖値の高い状態が長時間続くので、糖尿病のリスクも高まります。お昼にカレーライスを食べてしまうと、午後の仕事がしんどくなりそうですね。
■小麦製品代表のピザは血糖値急上昇のピークが2つ
ピザの初期値が99mg/dL。60分でピークの218mg/dLに達しました。上昇幅はなんと119mg/dL。含まれる炭水化物量は約50gですが、それだけでコンビニおにぎり2個分以上の血糖値上昇を引き起こしています。

とくに着目してほしいのは、110分辺りに、もう1つ小さな山ができていること。炭水化物量が多いと、血糖値が1回上がったあと、インスリンが大量に分泌され、血糖値が下がり始めます。ただ、その一方、消化がさらに進んでいき、糖がまた血液中に増えていく状態も続いています。このため最初のインスリン分泌だけでは足りなくなり、もう1回血糖値が上昇し、2度目のインスリン分泌が起こるのです。これが「二峰性の変動」です。
グラフを見ていただければわかるように、ピークが2つできています。モニタリングしているかたたちは自分の計測値に2つ山ができていたら、1食の炭水化物量が多いのだと考えましょう。
■ピークが2回あると、その分、すい臓に負担がかかる
2回インスリンが分泌されるので、その分、すい臓の負担も大きくなります。もちろん、血糖値スパイクも起こっているので、それも負担となります。二峰性の変動が起きていたら、食事の量を減らすことを真剣に検討する必要があるのです。
個人的感想になりますが、米よりも小麦製品や麺類のほうが加工されているため、血糖値が上がりやすい印象があります。消化がいい分、血糖値が上昇しやすいのです。食後110分の2つ目の山にも注目。「二峰性の変動」で、炭水化物のとりすぎを示します。

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山村 聡(やまむら・そう)

糖尿病内科医

九州大学医学部卒業後、研修医を経て昭和大学糖尿病内科に入局。糖尿病をはじめとする生活習慣病、内分泌疾患の診療に従事する。その後、フリーランスの内科医となり、2018年にYouTubeで「やさしい内科医のY’s TV」を開設。現在は8万人のチャンネル登録者を獲得する(2025年2月現在)。2024年には、やさしい内科クリニックを開業する。

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(糖尿病内科医 山村 聡)
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