※本稿は、マイナビ健康経営のYouTube番組「Bring.」の動画「『新NISA』で失敗したくないビギナー投資家必見! 暴落時でも安心して株式投資を継続するための基礎知識と心構え」の内容を抜粋し、再編集したものです。
■新NISAはどうパワーアップしたか
【節約オタクふゆこ】「新NISA」も2年目を迎えましたが、これから投資を始める人もいると思いますので、改めて「新NISA」がいかに有利な制度かをおさらいしたいと思います。
【小林亮平】2014年から始まった「NISA」制度は、本来、株式投資の利益にかかる約20%の税金が非課税になるというものです。例えば、10万円の利益に対して通常は約2万円の税金がかかるところを、NISA口座で運用していれば非課税で全額受け取ることができます。
さらに、2024年から「新NISA」になったことで、年間の投資枠が最大360万円、生涯では最大1800万円にまで拡大しました。以前は非課税で運用できる期間が「一般NISA」で5年、「つみたてNISA」は20年という期限があったのですが、「新NISA」では期間も恒久化され、制度が大きくパワーアップしました。
■「つみたて投資枠」「成長投資枠」の使い方
【節約オタクふゆこ】非課税枠の拡大、非課税期間の恒久化は個人投資家にとってはメリットですよね。ただ、「新NISA」は「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があって、少しわかりにくい面もあります。わたしもよく、「初心者は『つみたて投資枠』で積立投資だけをすればいいか?」「無理に『成長投資枠』は使わなくていいか?」という質問をされるのですが、小林さんはどう考えていますか?
【小林亮平】わたしはいつも、「基本は『つみたて投資枠』だけでいい」と答えています。『つみたて投資枠』だけでも年間120万円を非課税で投資でき、毎月10万円まで積立投資ができますからね。
「つみたて投資枠」は、積立投資しかできないというデメリットはありますが、投資初心者であればコツコツ積み立ていくのが王道ですし、ベストな投資手法だと思います。自由度が低いからこそ、考え方によっては「迷わずに始められる」というメリットとも考えられますよね。
■投資初心者は自由度の低い「つみたて投資枠」だけでいい
【節約オタクふゆこ】わたしもまったく同じ考えです。「つみたて投資枠」は、金融庁が厳しく選定した、投資初心者にとって優しめの投資信託だけが絞り込まれているので迷いが少ないですよね。また、積立投資はドルコスト平均法(※)になるので、長期で見た場合は勝てる確率は上がると思います。
※ドルコスト平均法:価格が変動する金融商品を、一定の金額で定期的に購入していく投資方法。必然的に株価が高いときは購入量が減り、株価が低いときは購入量が増えるため、将来的な平均購入単価を下げることができ、売却時に利益を得られる可能性が高まる。
【小林亮平】そうですね。あとは、積立投資のシミュレーションを実際に見てもらうと積立投資のすごさが伝わります。毎月3万円の積立で年利5%と想定した場合、20年後には元本800万円に対して利益が558万円に。さらに10年続けると元本1200万円に対して利益が1558万円と、この10年間だけで1000万円以上の利益が増えています。
■狼狽売りをしてしまう初心者と暴落に動じない玄人の違い
【節約オタクふゆこ】ただ、気になるのは市場の下落局面です。直近でも、2024年の7月から8月にかけて、2025年は2月から3月にかけてS&P500は大きく下落しました。こうしたとき、例えば10%の下落率なら、投資額100万円に対し、一時的とはいえ10万円近い含み損が生じます。
投資初心者のなかには資産の目減りが怖くなってしまい、そこで売却して損失を確定させる「狼狽売り」をした人も多かったと聞きます。小林さんは、投資初心者が持っておくべき積立投資の心構えについてどう考えていますか?
【小林亮平】下落局面は、経験しないとわからない部分が大きいと思います。2020年のコロナショックを経験している人は心の準備ができているので、直近の暴落も「相場はそんなものだ」と捉えることができるでしょう。それこそ、2008年のリーマンショック以前から投資している人なら、さらにメンタルが鍛えられています。
しかし、下落局面を初めて経験する人は、精神的に追い込まれます。ただし、こういった経験は投資家としてレベルアップするためのステップなのです。ですから、メンタルを乱されて「狼狽売り」をしないための心の準備をしておきましょう。
わたしは短期投資を否定はしませんが、やはり長期投資が本来あるべき投資だと思っています。
■5年に1回は「20%以上の下落」がやってくる
【節約オタクふゆこ】S&P500の過去150年のチャートを見ると、20%以上の下落は平均して5年に1回は来ます。さらに、10年、20年と積立投資をしていたら、30%を超えるような大暴落だって「いつか来るのが当然」ともいえますね。
【小林亮平】それでも、長期投資において「暴落はチャンス」ともいえます。S&P500に関していえば、暴落のたびにいずれ市場は回復し、過去最高値を更新し続けてきたからです。そのうち元値以上に回復すると考えれば、下落も暴落も「安く株を買えるラッキーな機会」と前向きに考えられますよね。
積立投資なら毎月定額ですから同じ価格で買える量が増えるチャンスですし、資金に余裕があるのなら、「新NISA」の「成長投資枠」でさらに買い増しをしてもいいのです。
ただし、「チャンス」と思って一気にお金を突っ込み過ぎるとさらに株価が下がる可能性もあるので注意が必要です。わたしは「10%下がったらいくら投資する」といったルールを事前に決めておき、段階的に投資するようにしています。
■理論上最も効率がいいのは「年始一括投資」だが…
【節約オタクふゆこ】「狼狽売り」のようなパニックを起こしてしまう要因には、「資産に占める株式投資の割合が高過ぎる」ケースもあります。小林さんは現金と株式投資の比率について、投資初心者に向けてどのようにアドバイスをしていますか?
【小林亮平】まとまった貯蓄がない人であれば、手取り収入の5%~10%程度を積み立てることをおすすめしています。
一方、ある程度の資金があるなら、わたしは50%を基準にしています。例えば、資金が1000万円あれば、現金500万円、投資500万円という比率を基本に考えます。ただし、500万円の投資が自分にとって「大き過ぎる」と感じるなら、現金を多めにして7:3や8:2の比率でも構いません。まずは50%を基準にして、自分の状況や精神的な負担感に合わせて調整するのがわかりやすいでしょう。
【節約オタクふゆこ】それはシンプルでわかりやすいですね。ちなみに、投資資金に余裕がある場合であれば年間120万円までの「つみたて投資枠」では足りないので、年間240万円までの「成長投資枠」も使った投資を考えますが、その場合はどのような投資方法が効率的でしょう?
【小林亮平】S&P500や全世界株式のように、超長期で右肩上がりに成長してきたインデックスを前提としますが、「最短で投資枠を使い切る」ことが「新NISA」の最高効率の投資だといわれています。制度上の上限枠は1800万円ですから、年間360万円、月単位なら30万円の積立投資を5年続ければ最短で上限に達します。
これは、「株価が成長し続けるなら、なるべく早い時点で買ったほうが将来の上がり幅が大きくなる」という、シンプルな考え方です。
■早く埋めたほうがいいかどうかは相場次第
【節約オタクふゆこ】わたしの場合は、月30万円(「つみたて投資枠」10万円分と「成長投資枠」20万円分)で全世界株式を買っています。ただし、2025年に関しては、2月時点で「成長投資枠」の残り200万円分を一気に購入しました。下落局面で株価が下がっていましたし、理論上は年間上限枠もなるべく早く埋めたほうがいいとされているからです。
【小林亮平】「年間上限を早く埋めたほうがいい」かどうかは、その年の相場次第ですよね。わたしも月30万円の積立を続けていますが、一方でわたしの父親は年初の一括投資を続けていて、2025年の上限枠360万円もすでに使い切っています。
2024年は相場環境がよかったので、年初一括投資をした父親のほうがリターンは高かったのです。しかし、2025年になって相場が低迷してきたいまは、月30万円の積立のほうがリターンは高くなる可能性も出てきました。
市場は予測のつかない動きをしますから、「どうすればより効率的か」はそうそう決められるものではありません。効率を優先して無理な投資を行えば、生活資金が不足し、暴落時のストレスも増します。ですから、どういう投資なら自分が精神的に余裕を持って続けられるかを優先してほしいと思います。
■基本的には積立投資だけで十分
【節約オタクふゆこ】その視点は、「積立投資以外の投資も始めるかどうか」にもいえることですね。
【小林亮平】そうですね。「失敗したくない」「ストレスを受けたくない」「悩みたくない」という人は、ここまでにお伝えしたポイントを押さえたうえで、積立投資を活用し、「ほったらかし」にしておくのがベストでしょう。ただ、それだと「弱気な投資」だと考え、機会損失しているような不安を感じる人もいると思います。
しかし結局は、「インデックスの積立投資だけをしているのが正解では?」と考える個人投資家は世界中にたくさんいると思います。
【節約オタクふゆこ】その通りですね。わたしもポートフォリオの大部分は全世界株式ですし、基本的に積立投資で十分だと思っています。みなさんにも無理のない投資を続けてほしいです。
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小林 亮平(こばやし・りょうへい)
資産運用YouTuber
1989年生まれ。横浜国立大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。同行退社後、ブログやSNSでNISAやiDeCoなど資産運用の入門知識を発信。現在はYouTube「BANK ACADEMY」の運営に注力しており、YouTubeのチャンネル登録者数は70万人を超える。「超初心者でも理解できるよう優しく伝える」をモットーに、自作のイラストを駆使した丁寧な解説が好評を得ている。著書に『これだけやれば大丈夫! お金の不安がなくなる資産形成1年生』(KADOKAWA)がある。
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節約オタク ふゆこ(せつやくおたく・ふゆこ)
YouTuber
理系の大学院を修了後に電子系メーカーに就職。1カ月約10万円で生活して年間300万円を貯金し、20代で資産1000万円を達成。現在はフリーランスとして活躍中。YouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」では、日常的な節約法や投資について初心者向けに配信し、チャンネル登録者数は60万人を超える(2025年2月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。
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(資産運用YouTuber 小林 亮平、YouTuber 節約オタク ふゆこ 構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=吉田大悟)