■私立大入学者の6割が一般選抜以外
大学入試の制度は様変わりしている。今やペーパーテスト中心の一般選抜は大学入学者全体の48%。私立大学では39%に過ぎない。
「18歳人口減少の一方、大学全体の入学定員は増えています。大学側は学生の確保、それも、より優秀な学生を集めることに注力している状態です」
旺文社教育情報センターの加納冬樹さんは言う。2000年には約150万人いた18歳人口は現在100万人強。15年後の40年には約82万人にまで減ると推計されている。
「大学は、多様な学生を受け入れるために総合型・推薦型の入試を拡大してきました。選考が主に年内に行われるため『年内入試』といわれます。年内入試の増加もあり、現役受験生における大学入学者の割合も24年で92.7%まで高まっています(00年は77.2%)」(加納さん)
総合型選抜(以下、総合型)は、出願書類や小論文、面接などで総合的に評価するもの。近年は中高一貫校などが生徒の興味を深掘りする探究型のカリキュラムを導入。
学校推薦型選抜には公募制と指定校制がある。
親世代になじみがあるのは指定校制かもしれない。成績評定などの基準で校内選考で選ばれればほぼ合格となる。
一方の公募制学校推薦型選抜(以下、公募制)は、どこの高校からでも、学校長の推薦を受ければ出願できる(一つの高校から推薦できる人数制限がある大学もある)。志望理由書や小論文、面接などで評価されるところは、総合型と似ている。
それでは、気になる難関大学の入試方式はどうなっているのか。
後出の図表5、図表6は、私立・国立の難関大の入試方式別入学者数の割合を示している(データ出典:旺文社『2025年度用 大学の真の実力 情報公開BOOK』)。
「学生を早く確保したい大学と、年内に進学先を決めたい生徒や保護者の思いが相まって、私立大全体では、総合型や公募制が急速に広がりました。入試の主流がそちらになったかのようですが、こと難関大については、そうではないことに要注意です」(加納さん)
大学通信情報調査・編集部部長の井沢秀さんは言う。
「早稲田大学、慶應義塾大学はともに一般選抜が6割弱です。私立大全体の約4割と比べると一般選抜の比率が高い。
一方、国立大学はどうだろうか。
「国立大でも総合型や推薦型は増えてはいますが、まだ8割ほどが一般選抜です。東京大学・京都大学をはじめとする旧帝大などの難関大では9割以上というところが多い」(加納さん)
難関大では、まだまだ一般選抜が主流であることがわかる。
■総合型や公募制で注目の私立大は
では、総合型や公募制の募集が比較的多い私立大を詳しく見てみよう。
「早慶MARCHといった難関大では、年内入試の募集人員は多いとは言えません。注意してほしいのは、総合型や公募制を導入しているかどうかは大学によっても異なり、同じ大学でも学部・学科によって異なることです」(加納さん)
たとえば、早稲田大は大学全体では総合型は4.7%だが、英語で学ぶ国際教養学部は約46%。慶應義塾大は大学全体では9.4%のところ総合政策学部・環境情報学部はともに35%が総合型だ。「慶應義塾大はほかにも文学部の自主応募制推薦や法学部のFIT入試も募集が多いです」と加納さん。
「上智大学は全学部・学科で公募制推薦を実施。大学の入学定員に比して、募集人員も多い。年内入試の門戸は広いと言えます」(加納さん)
ほかに、立教大学、立命館大学、関西大学、関西学院大学も全学規模で年内入試を実施している。
では、一般選抜の中身は親世代が受験生だったときと変わっているのか。
「早稲田大は、昔は重箱の隅をつつくような問題といわれていましたが様変わりしました。大学入学共通テスト(以下、共通テスト)で数学が必須となり話題となった政治経済学部は共通テストと総合問題のみです。基礎学力は共通テストで見て、各学部が欲しい能力を独自問題で見る形が上位大学の主流になりつつあります」(井沢さん)
総合問題とは、一つの教科に限定されない横断型の問題。早稲田大の政経では、資料の読解や長文記述(英語含む)が出題される。ほかにも、上智大や青山学院大学も共通テスト+総合問題による入試がある。
「共通テストと思考力を見る論述型の入試にすることで、東大などの難関国立大志望の優秀な高校生が併願しやすくしているのだと思います」(井沢さん)
また、私立大の入学者のなかで大きな割合を占めるのが、「指定校」「付属・系列校」推薦だ。
「優秀な受験生を早期から囲い込むために、高校と提携して付属校化したり、指定校を増やしたりする動きがあります。子供が小学生なら、中学受験で指定校推薦枠を多く持っている学校を選ぶというのも手です。説明会に行くと、教えてくれることも多いです」(井沢さん)
■東北大学と筑波大学は3割が年内入試
では国立大はどうだろうか。難関大の多くで入学者の8割以上が一般選抜というなか際立つのが、総合型での入学者が3割近くある東北大学だ。
「東北大学は総合型選抜(名称:AO入試)に力を入れています。過去問を見るとわかりますが、相当高い学力が求められる選抜性の高い入試です。
ほかには筑波大学も公募制推薦を拡大している。
「東北大と筑波大は、それぞれ学長が、総合型や面接と論文を中心とした入試に全面的に移行したいと発言しています」(井沢さん)
また、国立大学協会は年内入試を30%にする目標を掲げている。今後、増えていく方向とはいえるだろう。
「難関大の多くは、年内入試は募集人員が少ない少数精鋭の入試です。受験チャンス増ではありますが、一般選抜の対策も並行して進める必要があります」(加納さん)
そのほか、入試の新しい動きとして注目されているのが女子枠だ。国立大の3割がすでに導入している。
「理工系で女子対象の総合型・推薦型が急増しています。24年に東京工業大学(現・東京科学大学)が導入し、25年には149人に枠を広げて大きな話題となりました」(加納さん)
「26年には京大も理学部15人、工学部24人の女子枠をつくります」(井沢さん)
さらに、現在拡大しているのが入試における英語外部検定の活用だ。
「6割以上の大学が入試で英検などの英語外部検定を利用しています。総合型・推薦型だけではなく、一般選抜での利用も増えています。取得級やスコアに応じて英語の試験の得点に換算したり加点したりします。
かなり複雑な大学入試だが、親はどう準備しておけばいいのか。
「20年と24年とを比べると、私立難関大の一般選抜の倍率は全般的に低下しています。不安がらずに、子供の興味を応援してやることをお勧めします」(加納さん)
「今の小学生が大学受験をする10年後には、現在の大学地図とは違うものになっていると思います。もしかしたら、海外の大学を狙うというご家庭も増えるのかもしれません」(井沢さん)
専門家2人がそろって勧めてくれたのは本を読むこと。豊かな教養と幅広く興味・関心を持つことが重要なのは変わらないようだ。
次のページからは、私立・国立難関大学の入学者がどんな入試方式で入学したのかを一覧にしている。
■早稲田も慶應も一般入試は約6割。付属校・指定校推薦が約3割
続いて次ページは国立難関大学の入試方式別の割合。
■旧帝大は約9割が一般入試。総合型で入りやすい大学名は
※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
(プレジデントFamily編集部 イラストレーション=越井 隆 データ協力=旺文社)