※本稿は、山田悟『脂質起動』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■食事や運動でコレステロール値は下がらない
残念ながら、血中コレステロール値を下げるのに、食事や運動はほぼ無効です。
とくに運動は、コレステロールがエネルギー源にはなり得ないため、コレステロール値を下げる効果は全くありません。しかし、運動は血中コレステロール値を下げる目的であるところの心臓病や脳卒中の予防には重要です。ですから、(血中コレステロールは全く下がりませんが)運動はすべきです。
また、一部の学者が主張するように、肉や乳製品、卵といった動物性の脂質を減らすと、高すぎるLDLコレステロール値は少しだけ減らせます。でも、せいぜい5~10mg/dlという数値。動脈硬化などの病気のリスクを減らすためには、LDLコレステロールをもっと劇的に(70~100mg/dl)減らすことが求められます。
それは、動物性の脂質を減らすだけでは追いつきません。しかも、理由は不明ですが、動物性の脂質を減らしたら、かえって心臓病や死亡率が高まったという論文もあります。動物性の脂質を減らす正当性はないのです。
■LDLコレステロールを下げる6食材はこれだ
一方、食事についての意識をせずとも、1日1粒のお薬(スタチンという種類のお薬です)を内服するだけで、ほぼ目標のLDLコレステロール値まで下げられます。目標に到達しないのであれば、スタチン剤の増量やエゼチミブというお薬の併用(スタチン剤との配合剤というものがあるので、錠剤数は増やさないでエゼチミブを追加することが可能です)で目標を達成できることが一般的です。
つまり、血中コレステロールは、いわゆる不摂生(食事について何も気を使わない生活)であっても、お薬で管理できるとお考えいただいてよいのです。
でも、そうはいっても、食事療法でコレステロール値を下げることにトライしたい(お薬は飲みたくない)という方もいらっしゃることでしょう。
そうした方にお勧めするLDLコレステロールをきちんと下げるエビデンスがある食べ物は、以下のとおりです。
・クルミ
・ナッツ(アーモンドなど)
・野菜
・キノコ(文献ではキノコプロテイン)
・大豆
・アボカド(※1~6)
です。いずれも低糖質であり、糖質控えめ&(野菜にはオリーブオイルやドレッシングがいるかもしれませんが)脂質たっぷりで、脂質起動のための食生活で活躍してくれる食べ物ばかりです。
■味付けは塩・コショウと“汁だく”のオリーブオイル
ただ、一つひとつの食品による効果は、それぞれLDLコレステロールを5~10mg/dl減らす程度にすぎません。
しかしながら、そうした試験は行われていないので何とも言えませんが、クルミ、ナッツ(アーモンドなど)、野菜、キノコ、大豆、アボカドを一度に摂ったら、20~30mg/dlほど減らせる可能性もゼロではないと私は期待しています。
LDLコレステロール値が高い方に(基本的に食事療法は無効だとしつつも、藁にもすがる思いで)私が推奨しているのは、この6アイテム全部入りのサラダです。
ボールいっぱいに低糖質の葉野菜やアボカドなどを敷き詰めて、そこへ砕いたクルミやアーモンドなどのナッツを散らし、スライスした豆腐と炒めたキノコをトッピングしたら、軽く塩・コショウで味を整えてから、エキストラ・バージン・オリーブオイルを“汁だく”に回しかけたものです。
この「コレステロール改善するかもサラダ」、希望なさる方はぜひトライしてみてください。
■「朝のフルーツ習慣」がコレステロールや中性脂肪を増やす
果糖の怖さについては拙著『脂質起動』(サンマーク出版)で触れましたが、糖質過多でブドウ糖、果糖、砂糖(ショ糖=ブドウ糖+果糖)をそれぞれ多く摂っていると血中コレステロール値が上がるという論文があります(※7)(※8)。
その上がり具合には個人差も大きいのですが、その差は果糖に対する感受性の違いだろうと私は個人的に考えています。ここにも果糖が一枚噛んでおり、コレステロールと果糖には次のような関係があるのです。
肝臓で果糖が代謝されるプロセスでは尿酸が作られます。果糖や尿酸が増えると、細胞内でクエン酸という物質がたまります。
果糖や尿酸は、このたまったクエン酸をアセチルCoAという物質に合成する酵素のはたらきを高めます。このアセチルCoAこそ、肝臓の中で中性脂肪やコレステロールを作る出発点になっている物質なのです。
このことから、果糖が多いフルーツジュース、果糖を含む甘味料を添加した清涼飲料水などを飲みすぎていると、中性脂肪は確実に増え、ときにコレステロールも増やすと考えられます。
ヘルシーそうだからと、毎朝フルーツジュースを飲んだり、甘い果物入りのスムージーを飲んだりしていたら、中性脂肪だけでなくコレステロールの増加にもつながりかねません。スポーツ後に甘い清涼飲料水を飲んでいる人も同じです。
■それならマヨネーズを使うほうがいい
厄介なことに、果糖の摂取が多くなると、細胞内でブドウ糖から果糖を合成するルートが活性化します。
このルートが活性化されると、果糖を食べすぎていなくても、ほかの糖質を摂っているだけで肝臓内に果糖が増えてきて、それがコレステロールや中性脂肪の合成量を増やす恐れがあります。
ご飯やパンや麺類などのでんぷんも、ブドウ糖を無数に連ねたものです。このルートが活性化されると、果糖の多い甘い果物や清涼飲料水を飲まなくても、ご飯やパンなどを食べているだけで果糖が作り出されて、コレステロールも中性脂肪も増えてくるのです。翌朝には空腹時高血糖が起こりかねません。
毎朝のフルーツジュースや甘いスムージーは控えて、その代わりに、オリーブオイルを“汁だく”にかけた「コレステロール改善するかもサラダ」を食べることで、コレステロールや中性脂肪の増加は避けられることでしょう。
もちろん、オリーブオイルだけでなく、マヨネーズも強い味方になります。お好みに合わせてよりおいしいサラダにしてみてください。
参考文献
※1. Am J Clin Nutr 2018;108:174-187
※2. Am J Clin Nutr 2020;111:1178-1189
※3. JAMA Netw Open 2023;6:e2344457
※4. Clin Nutr 2024;43:649-659
※5. Eur J Nutr 2018;57:499-511
※6. J Am Heart Assoc 2022; 11: e025657
※7. J Nutr 1968; 95: 633-638
※8. J Nutr 2013; 143: 1391-1398
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山田 悟(やまだ・さとる)
北里研究所病院 糖尿病センター長
1970年生まれ。94年慶応義塾大学医学部卒業。2013年(一社)食・楽・健康協会を設立。ロカボ=ゆるやかな糖質制限を提唱し、企業に対して啓発活動を行うなど、日本人の健康増進のために日夜活動中。著書に『糖質制限の真実』『カロリー制限の大罪』(いずれも幻冬舎新書)などがある。
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(北里研究所病院 糖尿病センター長 山田 悟)