40代が人付き合いで意識すべきことは何か。経営コンサルタントの藤井孝一さんは「人間力を鍛えるには、常に居心地の悪い場所を選んで脳に汗をかくような体験をした方がいい。
若い世代と交流するのは居心地が悪いと感じているのなら、そこにこそ成長のチャンスがある」という――。
※本稿は、藤井孝一『40代がうまくいく人の戦略書』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■色眼鏡をはずせば、自然と年下との交流が増えていく
40代になると、年下の人とのつきあいがなくなっていく、という方は多いのではないでしょうか。
たしかに、会社のなかでの地位が固まりつつある40代は、自分をより磨くためにお手本になる年上の人を探して、つきあっていくのも大事です。
しかし、みなさんが若かったころは、年上が年下の面倒を見るのが当たり前だったはずです。連日アフター5に飲みに連れ出され、上司の自慢話や社内のしがらみを聞かされ、当時はうんざりしていた人もいるでしょう。
しかし会社で生き抜く術や仕事のコツなど、大切なことも先輩方から教わってきたはずです。助言もしてもらえたでしょう。
いま40代のみなさんは、どこまで部下や後輩と真剣に向き合っているでしょうか。「若い人が嫌がるだろうから……」という、もっともらしい理由を挙げて彼らを避けているのは、実はみなさんのほうではないでしょうか?
そもそも私は、年下や年上ということで人を判断することに疑問を感じています。
肩書や地位で人を判断すれば、つきあう相手はどうしても年上に偏っていきます。しかし地位のある年上でも、自分の自慢話ばかりするような、つきあっても気持ちのよくない人はたくさんいるでしょう。

その逆に、まだ駆け出しの若者でも「彼はいい刺激になるな」と思える出会いがたくさんあります。
色眼鏡をはずして相手の人間性や能力を素直に見ることができれば、自然と年下との交流も増えていくはずなのです。
■“オールドタイプ”に成り下がるな
私は20代、30代の起業家とも交流があります。
いまの若い世代を見ていて驚くのは、社会貢献の意欲が高いこと。私から見ると、「そんな事業ではほとんどお金にならないんじゃないの?」と思うような事業を立ち上げている人もいます。
それでも本人は真剣に、「お金にならなくても、世の中の役に立ちたいんです」「世の中を変えたいんです」と答えるのです。
私はバブル世代ですから、若いころは、まわりを見ていても「お金持ちになりたい」「いい家に住みたい」「いい車に乗りたい」と考えているような人ばかりでした。ひと昔前まで、そういう理由で起業をする人も多かったでしょう。
だからいまの若者の話を聞いていると、世のため、人のためという意識が高いので反省させられます。
そういう若者を見て、オールドタイプの人間は「欲がなさすぎる。そんなんじゃ景気がよくならないよ」「発展途上国の若者に負けちゃうよ」と諭したりします。
しかし、社会の成熟度に応じて、国ごとにも世代ごとにも担う役割は変わるものでしょう。
いまの若者は生まれたときから景気が悪かったとはいえ、家も車も家電もIT機器もほとんどすべてが手に入った状態で育っているのです。
これ以上欲しいものはなかなか見つからないでしょう。それで本人たちは幸せに暮らしているのだから、なにも問題ないのではないでしょうか。むしろ、分相応を心得ているので、健全な生き方だといえます。
「最近の若者はなにを考えているのかわからない」と思っている人ほど、若い世代とコミュニケーションを取るべきだ、と私は思っています。
若者にできないことや知らないことがたくさんあるのは当たり前。それを教えて育てるのが、世の中の先輩方の役目なのです。
■たとえば、若者が読んでいるような本を読んでみる
若い世代を立派な社会人に導いていくことで、過去に上司や先輩から受けた恩を送っていくのだと考えてください。
私は会社でコミュニケーションの仕組みをつくっていると前に書きましたが、その一環として3カ月に一度、社員全員でイベントを開くことにしていました。夏は納涼会、冬は忘年会と称して集まる日を決めていたのです。
普段も会社でこまめにコミュニケーションを取っていますが、それだけでは足りません。職場ではどうしてもとおり一遍の話になってしまいますが、そういう会合ではプライベートの話も出て、社員の意外な一面と出会えるのです。

「へえ、そんな趣味があるんだ」「学生時代はそんなことをしていたの?」など、発見の連続です。
こういう集まりも気が向いたときに開くことにすると、若い世代は面倒に感じるので、仕組み化して定期的に開くほうがいいと思います。そうすると若い世代も素直に参加してくれます。
たとえば、新入社員から「会社の忘年会には絶対出なくてはいけませんか?」と聞かれたとき、「そんなの当たり前だろう」のひと言ですませるのではなく、なぜそう思うのか、そんなことをいうのかを尋ねてみると、仕事観が世代によって違うのだとわかるでしょう。
実際に若い人たちと接し、若者が行くような場所に行き、若者が読んでいるような本を読んでみる。そうやって相手を知る努力が大切ではないでしょうか。
みなさんも若いときは、上司や先輩たちから、「いまどきの若者は……」と思われていたことを忘れてはいけないと思うのです。
■常に居心地の悪い場所を選んで脳に汗をかく
「自分は新人のころから社会人として一人前だった」と思っているかもしれませんが、それは仕事ができない自分を周囲が寛容に受け入れてくれていただけです。そう思って間違いないと思います。
私はよく、「自分を居心地の悪い場所に置いてみよう」といいます。
いつも同じ仲間で集まり、同じ居酒屋で騒いでいるのなら、なんの発展性もないでしょう。居心地がよくてラクかもしれませんが、自分の成長は止まってしまいます。

人間力を鍛えるためにも、常に居心地の悪い場所を選んで脳に汗をかくような体験をすべきです。
あなたが、若い世代と交流するのは居心地が悪いと感じているのなら、そこにこそ成長のチャンスがあります。自分のためにも、居心地の悪さをどんどん体験してみましょう。

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藤井 孝一(ふじい・こういち)

経営コンサルタント

中小企業診断士。1966年、千葉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、大手金融機関を経て99年に独立。著書に『週末起業』(ちくま新書)など。

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(経営コンサルタント 藤井 孝一)
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