株価の上下に一喜一憂せずに利益が狙える高配当株投資は多くの人に人気がある。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「高配当株も魅力的ですが、株主優待も含めたWインカムを狙えばさらに利回りはアップする。
なかには総合利回りが10%に近い銘柄もある」という――。
■「株価が冴えなくても満足」のワケは?
私の保有する銘柄の1つに、ヤマダホールディングスがあります。家電量販トップの「ヤマダデンキ」を傘下に持つ、我々消費者に身近な、そして個人投資家にとって人気の有名企業です。
ただ、その株価は400円台前半で横ばい状態。これは、堅調な日本株全体の動きに対し、冴えない状態が続いていると言えます。ちなみに、私の買値も同程度でして、とくに大きな含み益も含み損もないままに、あまり動かない株価を、淡々と見守っている状態です。しかし、私はこの状況に十分に満足しながら、この銘柄を持ち続けています。
なぜなら、このヤマダホールディングスからは定期的に、魅力的な2種類の収益を受取り続けているからです。その収益とは「配当金」と「株主優待」、いわゆるWインカムゲイン(※)です。

※インカムゲインとは、利子や配当金などといった、定期的・安定的に得られる収益のこと。なお、これに対して、値上がり益をキャピタルゲインという。
■総合利回り7%超だから約14年で元が取れる!
ヤマダホールディングスの配当金は、2025年3月期実績で1株あたり13円、2026年3月期は4円増配の17円の予想です。

これは配当利回り(1株あたり配当金額÷株価×100)にすると3.80%となります。
一般に、配当利回り3%以上だと「高配当株」と見なされることが多いので、これは十分高配当株と言えるでしょう。そして、ヤマダホールディングスの株主優待は、年間1500円相当の株主優待券です。
1回の買上金額1000円(税込み)以上につき、1000円毎に1枚(500円)利用できます。
普段、ヤマダデンキにまったく行かない人にとっては無用な優待でしょうが、私の場合、近所にあるヤマダデンキの常連でして、しょっちゅうコピー用紙やプリンタインクを買っていますから、これはほぼ現金に等しい優待と言えます。
ちなみに優待利回り(優待の金銭的価値÷株価×100)は3.35%と、こちらもかなりの高利回りです。
そして注目すべきは、この優待利回りと、前述の配当利回りを合計した「総合利回り」は7.15%にもなることです。配当金と株主優待、この魅力的な2つのインカムゲインのリターンによって、たとえ株価が動かなくても、約14年で元が取れる計算なのです。
■リターンの警戒水準は、5%ラインだが…
ところで、配当利回りは高いほど嬉しいわけですが、あまりに高すぎると、それは警戒すべき状況であるとも言えます。なぜなら、それは無理して配当金を出している可能性が高く、その場合、いずれ減配となる可能性があるからです(減配となれば、それは株価下落に直結する)。
一般的には、配当利回りが5%以上となると、要注意と言われています。
また、優待利回りも高いほど嬉しいですが、やはりこちらも、あまりに高すぎると、企業の負担が大きく、いずれ優待廃止・改悪となる可能性があります(その場合、やはり株価下落に直結する)。

もっとも、株主優待は、企業にとっては宣伝効果が見込めるので、配当利回りと比べて、優待利回りは比較的高い水準でも許容されるかもしれません。それでもやはり、優待利回りが5%を大きく超えてくると、警戒すべきでしょう。
■総合利回りの「適温水準」は?
ところで、冒頭のヤマダホールディングスは、その配当利回り、優待利回りはそれぞれ高いものの、(一般に警戒水準とされる)5%は大きく下回る水準です。にもかかわらず、その配当利回りと優待利回りを合計した総合利回りは7%超と、非常に高い水準となります。
Wインカムゲイン銘柄の中には、このヤマダホールディングスのように、警戒水準となる配当・優待利回りでなくても(減配や優待廃止等のリスクを過度に背負わなくても)、トータルで高い利回りを享受することができる銘柄も少なくないのです。
とはいえ、総合利回りであっても、それが10%を超えてくるようだと、それは警戒すべき水準です。一般的な目安としては、総合利回りは5%~10%程度が、満足度と安全度を兼ね備えた「適温水準」と言えるでしょう。
■意外と身近な、Wインカムゲイン銘柄
混迷を極める世界情勢のもと、予測不能な相場に翻弄され、株価の動きに一喜一憂することなく、定期的な安定収益を得ながら、じっくり長期保有できるWインカムゲイン銘柄は、多くの投資家(とくに投資初心者)にとって関心は高いはずです。
現在、配当利回り3%以上の銘柄は1500社以上と、これは全上場企業の約4割にもあたります。また、株主優待を実施している銘柄も1500社以上あります。
つまり、魅力的なWインカムゲイン銘柄に巡り合う可能性は非常に高いと言えます。といいますか、Wインカムゲイン銘柄を意識していなくても、「高配当株として選んだ銘柄が、たまたま株主優待も実施していた」ことや、「株主優待目当てに選んだ銘柄が、たまたま高配当株だった」ことも決して珍しくはないでしょう。

もっとも、Wインカムゲイン銘柄であれば何でもよいわけでなく、その事業内容や業績、株価水準、そして将来の配当・優待継続の可能性など、そこはしっかり吟味する必要があります。
それではここで、私自身が保有しているWインカムゲイン銘柄のうち、(冒頭のヤマダホールディングス以外にも)魅力的な4銘柄を紹介します。
【エディオン】
● 株価:2052円

● 配当利回り:2.29%

● 優待利回り:2.92%(100株・3年以上継続保有時)

● 総合利回り:5.21%
● 優待内容(100株保有時)

エディオングループ全店舗で利用できるギフトカード

保有期間1年未満:3000円分

1年以上:4000円分

2年以上:5000円分

3年以上:6000円分
● PER:14.84倍

● PBR:0.97倍
● コメント

・中部、西日本を地盤とする家電量販上位で、リフォームに強い。

・配当金は安定的かつ増配傾向が強く、また、株主優待は(割引優待であるヤマダとは違って)金券として利用できるので使い勝手が良い。
・堅調な業績のもと、株価は長期的に右肩上がりである。
・ただ、ここ最近の急激な株価上昇(この3年間で株価は2倍)を受け、配当利回り・優待利回りは2%台にまで落ちている。

とはいえ、総合利回りは5%超と、今なお魅力的な水準である。
・家電量販銘柄には魅力的なWインカムゲイン銘柄が多く、私は他にも、ビックカメラ(総合利回り約5.67%・総保有年数2年以上の場合)、コジマ(総合利回り約4.92%(継続保有2年以上の場合))も保有しており、これらもお勧めである。

■総合利回りが10%に迫る銘柄も
【バロックジャパンリミテッド】
● 株価:799円

● 配当利回り:4.76%

● 優待利回り:5.01%(100株保有時)

● 総合利回り:9.77%
● 優待内容(100株保有時)

自社店舗および通販サイトで利用可能なクーポン券4000円相当
● PER:21.48倍

● PBR:1.84倍
● コメント

・「MOUSSY」などを展開するアパレル大手、米国や中国など海外展開も。
・業績には大きなブレがあり、とくに2025年2月期は赤字となるも、「安定した配当政策を実施することを基本方針とする」ことから、配当金は長らく、基本的には38円を堅持している。なお、2026年2月期は黒字浮上の予想である。
・本年5月、株主優待の大幅拡充(クーポン金額の大幅増額)を発表した。
もっとも、これは500株以上保有者に恩恵のある内容で、100株保有の私にはさほど関係はないが。それでも、この優待拡充により、個人投資家の買い増しが期待でき、株価へのプラス効果は大きいと考えらえる(実際、優待拡充発表後には株価は大幅上昇)。
・総合利回りは10%近くと非常に高いものの、配当利回りと優待利回りのバランスは良いので(どちらも異常に高すぎない)、安心して保有できる。

【ソフトバンク】
● 株価:217.5円

● 配当利回り:3.95%

● 優待利回り:4.60%(100株・1年以上継続保有時)

● 総合利回り:8.55%
● 優待内容(100株・1年以上継続保有時)

PayPayマネーライト1000円分
● PER:19.16倍

● PBR:4.27倍
● コメント

・「ソフトバンク」「ワイモバイル」を展開する通信会社で、ヤフーやPayPayなどの非通信事業も強化。
・安定した通信事業による収益から、2021年3月期以降、配当金は8.6円で安定している。

加えて今後は、新規事業による成長、ひいては増配にも大いに期待したい。
・2026年3月末の権利確定(2025年3月31日を起点として、1年以上かつ100株以上保有の株主対象)を初回として株主優待が実施されることとなり、これまで高配当株としても人気だったソフトバンクは、晴れて、高水準(※)の「Wインカムゲイン」となった。

※優待利回りも4.60%と高く、配当利回りを合わせた総合利回りは8.55%にもなる
・株価は高値圏にあるものの、最低投資額は2万円程度と、投資しやすい水準である。

【TOKAIホールディングス】
● 株価:1000円

● 配当利回り:3.40%

● 優待利回り:2.40%(100株保有・500mlボトル選択時)

● 総合利回り:5.80%
● 優待内容(100株保有時)

以下の全5種類の中から1点を選択(金額は年間)
○ アクア商品(以下のいずれか)

・「うるのん『富士の天然水さらり』」500mlボトル 24本

・飲料水宅配サービス「おいしい水の宅配便」「うるのん」12Lボトル 2本
○ QUOカード 1000円分
○ フレンチレストラン「ヴォーシエル」お食事券 2000円分
○ グループ会員サービス「TLCポイント」 2000ポイント
○ “LIBMO”月額割引 4200円
● PER:13.06倍

● PBR:1.40倍
● コメント

・東海地盤のガス供給事業会社だが、ガス供給事業以外にも宅配水事業、情報通信事業、レストラン事業など、幅広く事業展開する。
・堅調な業績のもと、配当金は安定的かつ、たびたび増配も行われている。
・全5種類から選択できる株主優待については、私は吟味した結果、「うるのん『富士の天然水さらり』 500mlボトル(年間24本)」を選択しており、これは1本あたり約100円(TOKAIオンラインショップ価格基準)とすると、金銭的価値は年間2400円となる。
これは私にとって、最も使い勝手が良く、そして金銭的価値が高い(であろう)選択であると自負している。

・総合利回りは6%弱と、ほど良く高水準と言える。

※本文中の株価・配当利回り・優待利回り等の数字は2025年6月19日現在

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藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)

ファイナンシャルプランナー

1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

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(ファイナンシャルプランナー 藤原 久敏)
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