どうすればケチケチせずに資産形成ができるか。6人の子どもを育てるFPの橋本絵美さんは「必要な額が貯まっていく先取り貯蓄の仕組みさえ整えれば、あとは自由にお金を使っていい」という――。
■「お金が使えない症候群」の正体
資産形成を頑張っていると、貯めても貯めても不安でお金を使うことができなくなってしまうことがあります。必要なものであってもすんなり買えず、欲しいものやしたいことがあってもお金を払うことに罪悪感を感じてしまうのは、いわゆる“お金が使えない症候群”の特徴です。
本来はお金を貯めて経済的に自由になることを目指していたはずが、逆に不自由になってしまっているような状況です。今回はいくら貯めても不安が拭えない“お金が使えない症候群”になってしまう原因と、安心してお金を使える資産形成術についてお話しします。
資産形成を始めて100万円、500万円、1000万円と順調に資産が増えていき、5000万円に到達したらどのように感じるでしょうか。5000万円というと準富裕層に入ります。きっと贅沢な暮らしができるんだろうなぁと思うかもしれませんが、資産が5000万円あっても不安でお金が使えないという人もいます。何もないところから貯蓄を始め、資産は増えているので、安心してお金を使ってもいいはずなのに、貯めても貯めても不安でお金が使えないのはなぜでしょうか。それにはいくつかの原因が考えられます。
■将来の人生設計ができていない
いくら貯めても不安になってしまう理由の一つは将来の人生設計ができていない、またそれを金額ベースに落とし込めていないことにあります。
人生の三大資金は教育資金、住宅資金、老後資金と言われますが、いくらかかるかは人それぞれです。子どもは何人欲しいのか、人数によっても異なりますし、中学から私立に行かせるか、高校から私立に行かせるか、進路によっても金額は全く異なります。
老後資金については老後2000万円問題という言葉もありましたが、一律ではありません。何にいくらかけたいか、価値観は人それぞれ異なります。自分の人生設計ができていないと、いくら必要かがわからない、ゴールのないレースをすることになります。そのため、貯めても貯めても満足することができなくなってしまうのです。
■お金を使わない訓練をしすぎてしまった
資産形成を始めると、今使おうとしているこのお金を貯蓄や投資に回せば、将来のために増やすことができると考えることでしょう。ただ、こうした考え方を繰り返していると、次第にお金を使うことが悪という考え方になってきてしまいます。お金を使うことに罪悪感を感じ、お金を使うことができなくなり、いくら貯めても満足できなくなってしまうのです。人生を豊かにするための手段であるお金が、お金を貯めることが目的にすり替わってしまっているということです。
新NISAが開始され、非課税投資枠が拡大されたので、中には収入の大部分を投資に回すという人も出てきました。預貯金はほとんど増えないので投資に回したいという気持ちはわからなくもありません。ですが、投資をすると相場によって資産が増減するため、増えるかもしれない、減るかもしれないという振れ幅がでてきます。
お金は希望の人生を送るための道具にすぎません。例えば包丁は料理のための道具ですが、正しく管理し、正しく使わないと危険でけがをしてしまうように、お金という道具を安心して使うには、やはり正しい使い方や管理方法があります。
一番必要なのはライフプランの作成です。ライフプランとは希望の人生設計を金額ベースに落とし込んでグラフ化したものです。家族の年齢とともにやってくるライフイベントや家族の希望を一つずつ挙げていきます。子どもの進学、家族旅行、車の買い替え、住まいの引っ越しなど、金額とともに表にします。
ライフプランを作ることで、希望する人生が金額ベースで成り立つかどうかがわかります。もし、このままでは資金がショートしてしまうという結果になった場合には、支出を減らしたり、転職して収入を上げたり、子育てなどでいったん仕事を離れた後に復職するなど対処することができるようになります。
ライフイベントごとの予算を知ることで、今いくら貯蓄に回すべきかが明確になります。貯めるべき金額が明確になれば、おのずと使える金額も明確になるでしょう。
■必要な金額を貯めて残りは使ってよい
ライフプランを作り将来のために貯蓄をしていても、自分ではどうしようもできない事態が起こることもあります。そのような場合に備えた生活防衛資金と将来のために、必ず必要な資金を分けてそれぞれ準備しておくと、さらに安心してお金を使うことができるようになるでしょう。
これを一緒にしてしまうと、何かあったらどうしよう、といつまでたっても安心できません。生活防衛資金としては生活費の6カ月分を目安にするとよいでしょう。目安をしっかり決めておくことが、安心してお金を使うことができるようになる秘訣です。
必要な金額さえ貯めていれば、残りは使ってよいという考え方がおすすめです。これをしくみとして作っておくといいでしょう。
必要な金額が確実に貯まっていくように、余ったら貯めるのではなく、先取り貯蓄をしましょう。月々の収入の中から先に貯蓄分を取り、残りのお金で生活するというスタイルです。
このとき貯蓄と生活費が同じ口座にあると、いくら使って良いのかわからなくなってしまいます。貯蓄は生活費とは別の口座に貯めていきましょう。別の場所に取り分ける際には自動的に資金移動されるサービスを利用するようにしてください。
ここで肝心なのは意志の力ではなく、しくみの力を使うということです。給与天引きや自動振り込みなど自動的に別の場所に先取り貯蓄されるしくみを作りましょう。別の場所に先取りされていれば、生活費の口座で余ったお金は全て使っても大丈夫ということになります。
私はこの方法を学生のアルバイト時代から実践しています。手取りの4分の1を先取り貯蓄し、最初からなかったことにして、残りの4分3で生活をします。これは大好きな偉人、本多静六博士が提唱する蓄財の方法で、「4分の1天引き法」と言います。本多静六博士は4分の1を蓄財に回し、投資していました。この4分の1天引き法を実践すれば貧乏になることは絶対にありません。
かくいう私も実は、“お金を使えない症候群”っぽいところがあります。子どもが多く、その分不確定要素も大きくなるので仕方ない部分もあるのですが、ケチケチした節約生活にならないような工夫として、ポイントは無駄なことに使ってOKということにしています。
ポイ活をしているので月1万円程度はポイントが貯まります。
子どもたちにはお菓子を取り扱っている100均で、好きなお菓子を選んで買わせるようにしています。一つ100円のものもあれば、3つで100円、4つで100円というものもあります。兄弟でわけあったりしながら色々と考えて買い物をしているようです。
ふるさと納税も米や日用品を貰って生活費を節約することもできますが、必要なものではなく、ただ単純に欲しいものを貰うようにしています。
まとめ
お金は使わなければ貯まるのは当たり前ですが、使わなければお金を持っていても何の意味もありません。橋本家でも実践している、上手に貯めて上手に使うための工夫をご紹介しました。車のハンドルやペダルには“遊び”の部分があります。“遊び”がなければ常に緊張状態でちょっと間違うと事故を起こしてしまうでしょう。人生は長い道のりです。
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橋本 絵美(はしもと・えみ)
はしもとFPコンサルティングオフィス 代表
6人の子どもを持つママFP&お片づけプランナー。福岡県出身。小さな頃から「大家族のママになりたい!」という夢を持ち、慶應義塾大学商学部卒業後、学生時代から交際していた夫と結婚。現在、中学2年生から3歳まで2男4女の子育て中。
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(はしもとFPコンサルティングオフィス 代表 橋本 絵美)
■「お金が使えない症候群」の正体
資産形成を頑張っていると、貯めても貯めても不安でお金を使うことができなくなってしまうことがあります。必要なものであってもすんなり買えず、欲しいものやしたいことがあってもお金を払うことに罪悪感を感じてしまうのは、いわゆる“お金が使えない症候群”の特徴です。
本来はお金を貯めて経済的に自由になることを目指していたはずが、逆に不自由になってしまっているような状況です。今回はいくら貯めても不安が拭えない“お金が使えない症候群”になってしまう原因と、安心してお金を使える資産形成術についてお話しします。
資産形成を始めて100万円、500万円、1000万円と順調に資産が増えていき、5000万円に到達したらどのように感じるでしょうか。5000万円というと準富裕層に入ります。きっと贅沢な暮らしができるんだろうなぁと思うかもしれませんが、資産が5000万円あっても不安でお金が使えないという人もいます。何もないところから貯蓄を始め、資産は増えているので、安心してお金を使ってもいいはずなのに、貯めても貯めても不安でお金が使えないのはなぜでしょうか。それにはいくつかの原因が考えられます。
■将来の人生設計ができていない
いくら貯めても不安になってしまう理由の一つは将来の人生設計ができていない、またそれを金額ベースに落とし込めていないことにあります。
人生の三大資金は教育資金、住宅資金、老後資金と言われますが、いくらかかるかは人それぞれです。子どもは何人欲しいのか、人数によっても異なりますし、中学から私立に行かせるか、高校から私立に行かせるか、進路によっても金額は全く異なります。
住宅資金についても住むエリア、広さによって家賃や購入価格に大きな差が出ます。
老後資金については老後2000万円問題という言葉もありましたが、一律ではありません。何にいくらかけたいか、価値観は人それぞれ異なります。自分の人生設計ができていないと、いくら必要かがわからない、ゴールのないレースをすることになります。そのため、貯めても貯めても満足することができなくなってしまうのです。
■お金を使わない訓練をしすぎてしまった
資産形成を始めると、今使おうとしているこのお金を貯蓄や投資に回せば、将来のために増やすことができると考えることでしょう。ただ、こうした考え方を繰り返していると、次第にお金を使うことが悪という考え方になってきてしまいます。お金を使うことに罪悪感を感じ、お金を使うことができなくなり、いくら貯めても満足できなくなってしまうのです。人生を豊かにするための手段であるお金が、お金を貯めることが目的にすり替わってしまっているということです。
新NISAが開始され、非課税投資枠が拡大されたので、中には収入の大部分を投資に回すという人も出てきました。預貯金はほとんど増えないので投資に回したいという気持ちはわからなくもありません。ですが、投資をすると相場によって資産が増減するため、増えるかもしれない、減るかもしれないという振れ幅がでてきます。
今ある資産が確定せず、減るかもしれないという不安感が出てきてしまいます。預貯金が少なく、投資に回す金額が大きすぎると資産の振れ幅が大きくなり、いくら貯めても不安ということになってしまいます。
お金は希望の人生を送るための道具にすぎません。例えば包丁は料理のための道具ですが、正しく管理し、正しく使わないと危険でけがをしてしまうように、お金という道具を安心して使うには、やはり正しい使い方や管理方法があります。
一番必要なのはライフプランの作成です。ライフプランとは希望の人生設計を金額ベースに落とし込んでグラフ化したものです。家族の年齢とともにやってくるライフイベントや家族の希望を一つずつ挙げていきます。子どもの進学、家族旅行、車の買い替え、住まいの引っ越しなど、金額とともに表にします。
ライフプランを作ることで、希望する人生が金額ベースで成り立つかどうかがわかります。もし、このままでは資金がショートしてしまうという結果になった場合には、支出を減らしたり、転職して収入を上げたり、子育てなどでいったん仕事を離れた後に復職するなど対処することができるようになります。
ライフイベントごとの予算を知ることで、今いくら貯蓄に回すべきかが明確になります。貯めるべき金額が明確になれば、おのずと使える金額も明確になるでしょう。
■必要な金額を貯めて残りは使ってよい
ライフプランを作り将来のために貯蓄をしていても、自分ではどうしようもできない事態が起こることもあります。そのような場合に備えた生活防衛資金と将来のために、必ず必要な資金を分けてそれぞれ準備しておくと、さらに安心してお金を使うことができるようになるでしょう。
これを一緒にしてしまうと、何かあったらどうしよう、といつまでたっても安心できません。生活防衛資金としては生活費の6カ月分を目安にするとよいでしょう。目安をしっかり決めておくことが、安心してお金を使うことができるようになる秘訣です。
必要な金額さえ貯めていれば、残りは使ってよいという考え方がおすすめです。これをしくみとして作っておくといいでしょう。
必要な金額が確実に貯まっていくように、余ったら貯めるのではなく、先取り貯蓄をしましょう。月々の収入の中から先に貯蓄分を取り、残りのお金で生活するというスタイルです。
このとき貯蓄と生活費が同じ口座にあると、いくら使って良いのかわからなくなってしまいます。貯蓄は生活費とは別の口座に貯めていきましょう。別の場所に取り分ける際には自動的に資金移動されるサービスを利用するようにしてください。
お金を自分で下ろして別の場所に移すとなると意志の力が必要になります。
ここで肝心なのは意志の力ではなく、しくみの力を使うということです。給与天引きや自動振り込みなど自動的に別の場所に先取り貯蓄されるしくみを作りましょう。別の場所に先取りされていれば、生活費の口座で余ったお金は全て使っても大丈夫ということになります。
私はこの方法を学生のアルバイト時代から実践しています。手取りの4分の1を先取り貯蓄し、最初からなかったことにして、残りの4分3で生活をします。これは大好きな偉人、本多静六博士が提唱する蓄財の方法で、「4分の1天引き法」と言います。本多静六博士は4分の1を蓄財に回し、投資していました。この4分の1天引き法を実践すれば貧乏になることは絶対にありません。
かくいう私も実は、“お金を使えない症候群”っぽいところがあります。子どもが多く、その分不確定要素も大きくなるので仕方ない部分もあるのですが、ケチケチした節約生活にならないような工夫として、ポイントは無駄なことに使ってOKということにしています。
ポイ活をしているので月1万円程度はポイントが貯まります。
このポイントでお菓子を買ったり、大好きなドーナツを買ったりしています。ポイント自体も運用で増やすこともできますし、ポイントで生活費を賄うという考え方ももちろんあります。ですが、そこまでしてしまうとお金を使えない症候群になってしまうので、ポイントは無駄なことに使ってOKと決めて、お金を使う練習をすることも大切かなと思います。
子どもたちにはお菓子を取り扱っている100均で、好きなお菓子を選んで買わせるようにしています。一つ100円のものもあれば、3つで100円、4つで100円というものもあります。兄弟でわけあったりしながら色々と考えて買い物をしているようです。
ふるさと納税も米や日用品を貰って生活費を節約することもできますが、必要なものではなく、ただ単純に欲しいものを貰うようにしています。
まとめ
お金は使わなければ貯まるのは当たり前ですが、使わなければお金を持っていても何の意味もありません。橋本家でも実践している、上手に貯めて上手に使うための工夫をご紹介しました。車のハンドルやペダルには“遊び”の部分があります。“遊び”がなければ常に緊張状態でちょっと間違うと事故を起こしてしまうでしょう。人生は長い道のりです。
資産形成においても目的地をはっきり決め、“遊び”の部分も持ちながら日々前進していきましょう。
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橋本 絵美(はしもと・えみ)
はしもとFPコンサルティングオフィス 代表
6人の子どもを持つママFP&お片づけプランナー。福岡県出身。小さな頃から「大家族のママになりたい!」という夢を持ち、慶應義塾大学商学部卒業後、学生時代から交際していた夫と結婚。現在、中学2年生から3歳まで2男4女の子育て中。
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(はしもとFPコンサルティングオフィス 代表 橋本 絵美)
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