使用済みiPhoneを高値で買い取ってもらうにはどうすればいいか。スマホアクセサリーメーカー「トリニティ」の創業者・星川哲視氏は「ちょっとした傷で数千~1万円超の減額になることも珍しくない。
一方で、付属品が『未使用』であることは絶大な効果をもたらす」という――。
■ケースを装着していてもiPhoneは傷つく
「大切なiPhoneを傷つけたくない」とケースに入れていたのに、下取りに出す時に傷がついていて査定価格が下がってしまったという話を聞きます。実はケース装着だけで完璧に傷を防ぐことはできません。
その大きな原因は、ケースと端末の間に入り込むゴミや砂です。ケースと本体のわずかな隙間に砂粒が入り、それがケースに押し付けられたり、摩擦でiPhoneの表面を擦って傷つけてしまうのです。
たとえば、現在のiPhoneのラインアップは再生アルミニウム(iPhone 16/iPhone 16 Plus)とチタニウム(iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Max)を使用しており、前面と背面は強化ガラスを使用しています。物質に傷がつく仕組みは「より硬い物質が傷をつける」という法則です。そのため、これらより硬い異物がケース内に入り込むと、iPhoneを傷つけてしまいます。
■傷がつく本当の原因は“硬度差”
鉱物の硬さを表す際に「モース硬度」という尺度があります。硬い鉱物が柔らかい鉱物を引っかくかどうかで定義される10段階の相対指標です。最高硬度はダイヤモンドで、人工超硬材料を除けば日常物質でこれを傷つけられる物質はありません。
この法則からすると、埃や髪の毛などの混入程度では傷がつくことはありませんが、砂や一部のハウスダストだと石英(モース硬度7の物質で地表に多く存在し、大気に運ばれて室内埃などに混入します)が含まれており、ガラスよりも硬度が高いため、iPhone本体のガラスやアルミニウム/チタニウムに傷をつけてしまいます。

ケースを握ったときやポケットなどに収納した際には、ケースとスマホの間で押し付けられるのでさらに傷がつきやすくなります。
なお、Androidの廉価モデルではプラスチック筐体も多く、硬度がさらに低くなるため傷がつくリスクが高まります。
■iPhoneを傷つけない実践方法
iPhoneを傷つけないための最善の方法は、まず、ケース装着時に入念にスマホ本体およびケース内部のホコリを取り除くことです。粘着性の低いセロハンテープなどを利用して見えていない埃も除去しておく必要があります。また、定期的にケースを外して清掃することも重要です。ケースと端末の間に溜まったチリを拭き取るだけでも摩耗リスクは下がります。
レザーなどを使用したケースの中には、内側にマイクロファイバー布地を貼ったケースもあり、こうしたタイプは「ケース内に入ったホコリでの微細な擦り傷」を減らす効果が期待できます。
ただしケースを装着していても、カメラ部分に開けられた穴から埃が入ってしまうということがあります。一部の製品ではこれを防ぐための防塵設計をしているものもあるので、ケース選びの際にはこのような配慮があるものを選ぶと良いでしょう。
長く使っていくうえで、完全に新品同様の輝きを保つのは難しいですが、ケース選びと装着時の配慮、こまめな清掃を心がけることで「ケース装着による擦り傷」リスクは大きく軽減できます。
■修理費が数個分のケース代を軽く上回る
ケースを使わずに“裸族”で運用したいという声もあります。しかし、万が一を考えるとケースは必須といえます。

たとえば、画面割れの正規修理費はiPhone 16 Pro Maxで5万6800円、背面ガラスは2万9800円(2025年6月時点のApple公式価格)です。一方、一般的なケースは3000~4000円で購入できます。破損が一度でも起これば、修理費が数個分のケース代を軽く上回る計算です。
中古市場の査定は極めて客観的です。微細な擦り傷で数千円、角の小さな打痕で1万円超の減額は珍しくありません。3000円の“保険料”を節約したつもりが、2年後の売却時に数万円の資産価値を失うわけで、費用対効果を冷静に考えれば、ケースがいかに優れた投資かは明白です。
■「背面カバー」「手帳型」どっちが正解?
iPhone Xで全画面化が始まって以降、すぐ操作できる利便性と筐体の美しさを見せるクリア仕様が好まれ、今や薄型の背面カバー型クリアケースがランキング上位を独占しています。
背面カバーは薄く軽く、透明ケースがトップシェアとなっており、iPhone独自の磁石システム「MagSafe」にも対応するものもあります。また、手帳型と違い、取り出してすぐに操作したり、写真撮影ができる利便性も選ばれる理由です。一方、画面側はまったく保護されないため、画面保護にはフィルム・ガラスが必須となります。
手帳型はフタを閉じれば360度保護できるため、追加の保護フィルム・ガラスが不要な点や、カード収納が便利な点から、特にビジネスパーソンや高齢の方に人気です。ほとんどの場合、MagSafeにも非対応なため、ワイヤレス充電ができないうえ、開閉の手間もかかります。

■査定額を大きく下げる「3つの要因」
iPhoneは、Androidと比べて中古買取価格が高いことで知られ、数年使用した機種でも買取査定を意識してしっかり保護して使えば、最新機種を購入する際の半額以上になることも期待できます。高価買取のための秘訣をお伝えします。
査定額を大きく下げる要因は大きく3つに集約できます。
1つ目は外装の傷や凹みなど、外観に関わる部分です。背面ガラスに浅い線傷が入ると平均で5000円、角に欠けがあると1万円前後の減額になります。これらはここまで説明してきたようにケースや保護フィルム・ガラスなどでしっかりと保護しておく必要があります。
なお、カメラレンズ部分を保護するレンズカバーもできる限り装着しておくと良いでしょう。カメラ機能はiPhoneの価値を大きく左右するため、査定の際には必ずカメラのチェックが行われ、少しでも傷がついていると大きく査定価格が下がります。
■防水性能を過信してはいけない
2つ目は機能性です。近年のiPhoneはIP68の耐水性能を誇りますが、この数値は真水・常温・静止状態という理想条件下でのテスト結果にすぎません。内部には液体浸入インジケーター(LCI)が設けられており、わずかな湿気でも赤く変色すると“水没品”として査定額が大幅に下がります。外観や機能が正常でも、一律で1万5000円以上の減額が一般的です。

浴室やサウナでの使用、水滴の付いた雨具のポケットへの収納、冬場の結露など、見落としがちなシーンでも変色する可能性があります。
耐水性能はシーリング材の経年劣化で徐々に低下します。プールや海辺では防水ポーチを併用し、雨天での撮影時にはこまめに水分を拭き取る習慣をつけましょう。“濡らさない”というシンプルな心構えが、数年後の売却価格を守る最大の保険となります。
■ケーブルは未使用のまま箱に保管する
最後に付属品です。欠品がマイナス査定になるのはもちろんですが、もう一歩踏み込んだ秘訣をお伝えします。それは「状態」です。特に「未使用であること」がもたらす絶大な効果です。多くの方はiPhoneを購入すると、付属のケーブルをそのまま普段使いにするでしょう。しかし、毎日使うことでケーブルは手垢で黒ずみ、ヨレや変色が生じます。
そこで筆者が強く推奨するのが、「購入時に付属してきたケーブルは一切使わず、箱にしまったまま保管しておく」という方法です。そして普段使い用には、別途高品質なサードパーティ製ケーブルを購入して使うのです。

こうすれば、2年後に売却する際、箱の中には「完全未使用」の純正ケーブルが鎮座していることになります。これは満額査定を引き出すための強力な後押しになります。わずか1000円程度の先行投資で、査定額が大幅アップする可能性があるのですから、これほど効果的な資産防衛策はありません。
■非正規修理は「改造扱い」となるので要注意
もし画面割れやバッテリー不調が発生したとしても、街の格安修理店で修理してしまうことは、買取査定という意味ではお勧めできません。
iOS 17以降のiPhoneは、本体が認識できない部品を装着すると設定アプリに「不明な部品」と表示され、これがあるだけで中古市場では改造品として扱われます。査定額は2万円以上下がる、あるいは買取不可となる場合も珍しくありません。
非純正パネルに交換するとTrue Toneが無効化されたり、Face IDが動作しなくなったりする事例も多く報告されています。こうした機能低下は査定に直結し、減額幅をさらに広げます。
iPhoneは購入時点で10万円以上の資産価値をもつものです。短期的な節約よりも、純正パーツを選ぶことで将来のリセールバリューを維持するほうが、結果として賢い選択になるでしょう。

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星川 哲視(ほしかわ・てつし)

経営者

1975年生まれ。ミュージシャンを目指してApple製品を使い始め、会社員を経てApple関連製品、スマートフォンアクセサリーのメーカー「トリニティ」を創業。
20年間で業界トップシェアを築きつつも事業承継と株式譲渡により同社を「卒業」。現在はスマホゲーム開発会社エウレカスタジオ株式会社代表取締役。スマホアクセサリーやガジェットなどIT関連に精通し、Hossy.orgにてブログやPodcast「リアル経営」を配信している。

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(経営者 星川 哲視)
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