※本稿は、香山万由理『仕事ができる人は、「人」のどこを見ているのか』(光文社)の一部を再編集したものです。
■10点の質問メールに回答1つしかなかったら
仕事ができる人は、「ひと手間」を見ている
以前、一緒にお仕事をしていたイベント会社のAさんから、朝こんなメールが届きました。
Aさん「あさってまでに11人必要。よろしく」
メールの文面はたったこれだけ。
「11人必要と言われても……。これだけでは、何をどうすればいいのかさっぱりわからない……」
そこで、質問事項10個にまとめて、Aさんに次のように返信しました。
私「いつも大変お世話になっております。香山でございます。このたびはご連絡ありがとうございます。今回いただいたメールについて、10点ほど確認させていただきたいことがございます。
①何かのイベントでしょうか。
②11人必要とのことですが、女性・男性の希望人数はございますか。
③イベントの日時をもう少しくわしく教えてください。
④場所はどのあたりでしょうか。
⑤ギャラはおいくらでしょうか。
……(以下、省略)
それでは、お忙しいところ恐れ入りますが、上記10点について、お知らせいただけますでしょうか。どうぞよろしくお願い申し上げます」
しばらくしてAさんから返信がありました。そこには……
Aさん「場所は新宿です。全員女性です。よろしく!」
■10点の回答が出そろうまで丸一日かかる
私の質問に対して、答えが1つしか書いてありません。イライラする気持ちを抑えながら、私は次のような返事を書きました。
私「ご返信ありがとうございます。場所が新宿であるということ、11人は全員女性をご希望だということ、承知いたしました。
これに対して返信がきました。そこには、
Aさん「時間は10時~17時です。飲料メーカーのイベントです」
ブチッとキレかけたのがわかりました(笑)。
またしてもAさんは、私の質問に2つしか答えてくれていないのです。
結局、10点の回答が出そろったのは、その日の夜になってから。すでに丸一日が無駄になっています。
いろいろ手を尽くしたのですが、短い時間で人を集めることができず、Aさんには「お役に立てず申し訳ございません」とお詫びの返信をしました。
■相手の貴重な時間を奪わずにすむメールの書き方
これは極端な例かもしれませんが、こうした「情報不足」のメールを送っている人は結構いらっしゃいます。なかでもLINEなどチャットでのやりとりに慣れている人は、こうしたことをやってしまいがちです。
LINEは短文をポンポンポンッとやりとりするツールですが、メールは基本的に一度のやりとりで必要な情報を過不足なく伝え合うツールです。
ですから、メールで何度もやりとりしなくてはいけなかったり、相手から質問と確認のメールが何度も来たりするということは、そこには伝えるべき情報が明らかに不足しているということなのです。
「メールは時間をかけて書くな」と主張する人もいますが、それでは自分の都合しか考えていないことになります。
ある程度時間がかかっても、質問が返ってこないくらいわかりやすく、すみずみまで気を配り、礼儀をわきまえたメールを書くこと。そうすれば、その後のやりとりが少なくて済みますし、結果的に時間の節約にもつながります。
メールひとつとっても、すみずみまで気を抜かない。そうすれば、相手の貴重な時間を奪わずに済むのです。
■会場URLに添えると感激される情報の種類
白状しますが、私はいわゆる“地図が読めない女”。Googleマップを見ても矢印がどの方向を指しているのかわからず、歩きながらスマホをグルグル回したり、自分自身がその場でグルグル回っていたりすることがよくあります。
ですから、セミナーやイベント会場のご案内メールに、会場のURLを貼り付けるだけではなく、最寄り駅はどこか、何番出口から徒歩何分くらいなのか、といったことまで書かれていると、なんと親切な方だろうと感激します。
また、会場への道順に途中の景色がわかる写真が添えられていると、迷うことも少なくなります。特に直前の打ち合わせが押したため急いで向かっているときなど、こんなにありがたいことはありません。
「神は細部に宿る」といいますが、こういう細やかな配慮ができる人は、「信頼」というブランドを持っている人に違いありません。
ブランドというのは、一流企業に勤めているとか、地位が高いとか、年収が何億あるなどで決まるものではありません。
「細やかな配慮ができる」「相手や場の空気に合わせた発言ができる」「自分の都合で相手の時間をいたずらに奪わない」……。そんな評価こそが、その人のブランドを決めているのです。
■ブランド構築には時間がかかるが、崩壊するのは一瞬
私がCAだった頃、国内線でお弁当を召し上がっているお客さまには、お飲み物サービスの前であっても、先に日本茶をお持ちするのが当たり前のようになっていました。マニュアルに書いてあるわけではないのですが、誰もがそういう気くばりができる社風があるのです。
あるとき、私がお弁当を召し上がっていたお客さまのことに気づかず、その横を素通りしたところ、そのお客さまが「JALはいつもお弁当のときお茶を持ってきてくれるのに、何で今日は持ってきてくれないんですか?」とおっしゃいました。
私は自分の気くばり、目くばりが不十分だったことを深く反省し、「サービスには、ばらつきがあってはいけない」ということを痛感しました。そうした不注意によって、企業のブランド価値を毀損することにもつながりかねないのです。
「ブランドの構築には長い時間がかかるが、崩壊するのは一瞬」といわれますが、それは個人にも当てはまります。不注意な発言やふるまいで、自分のブランドを傷つけないよう心がけてください。
仕事ができる人のポイント
気くばりは、自分のブランド価値を上げる
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香山 万由理(かやま・まゆり)
研修コンサルタント
立教大学卒業。JAL(日本航空)に入社。国際線CA(キャビンアテンダント)として10年半乗務。
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(研修コンサルタント 香山 万由理)