婚活がうまくいく人、うまくいかない人の差はどこにあるのか。主宰する結婚相談所でカウンセラーを務めている大屋優子さんは「相手に食事をご馳走になったら、しっかりと感謝を伝える。
それだけで結果は変わる。ある30代女性は、独自の“奢られルール”を持っており、相手の男性にまったく感謝していなかった。彼女は婚活を4年間続けているが、いまでも成婚には至っていない」という――。
※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている。
■婚活で話題が尽きない「奢り・奢られ問題」
結婚相談所の婚活にはルールがある。その中の一つが「お見合い時のお茶代は男性が二人分負担する」というものだ。
お見合いで初めて会い、1時間ほどお話しし、そのお茶代はお見合いの結果にかかわらず、男性が支払う。それが結婚相談所のルールなのだ。結婚相談所の婚活では、このルールの影響なのか、2回目以降のデートでの食事代なども男性が負担することが多い。
一日も早く結婚したい、相手からの信頼を得たい、好意をもってもらいたい、カッコつけたい、交際相手を気に入っている……などの理由から、一部の高所得男性を除き、結婚相談所で婚活する男性は、多かれ少なかれ無理をしながら女性に奢っている。
だが、お見合い後、交際になってからは男性が奢るとか、多くデート代を負担するとか、そのような婚活ルールは一切ない。あくまでもこのルールは、お見合いのときまで適用されると考えていただきたい。

女性は、きれいにお化粧し、おしゃれする費用が男性よりかかるのだから、男性がデート代を出すべき、という意見も散見するが、令和の時代は男性だっておしゃれには気を使っている。
髭脱毛や、美容院のヘアスタイリング、日々の化粧水や日焼け止め、歯のホワイトニングなど、男性も女性同様に身だしなみには余念がない。結婚したい男女は、見た目が大切だとわかっているからだ。
こんな背景もあるからか、デートでは、男性が奢ることがマストではないと、交際に入ったら、割り勘主義の男性もいる。
一方、結婚相談所で婚活している女性たちは、デート費用の「奢り・奢られ問題」をどのように考えているのか。
男性がデート費用を持つのは当然と平気で思っている女性もいるし、全額奢りではないにせよ、男性が多く払うべきと心のどこかで思う女性は少なくないのも事実である。あるいは、自分が食べた分や自分にかかった費用は、自分で払うと考えている女性もいる。
所得は同じようにあるのだし、気に入った男性には喜んでご馳走する、という男前の女性だって存在する。
そして、確実に言えることは「奢ってもらって当然」と思う女性を、評価する男性はいないということだ。
■「男性の半分しか払わない」という謎ルール
34歳、大卒、バリキャリ女性。
一流大学を卒業後入社した企業で、営業職につき、優秀な成績で会社からの高い評価を得、年収も800万円を超える。
自分の努力で、いまの地位や年収を獲得しているこの女性は、お金の価値をわかっている分、支払うお金にはシビアで、コスパを重視する。
すでに、婚活には4年の月日を費やしており、未だご縁に巡り会っていない彼女だが、交際になった相手とのデートでは、基本的に「男性が多く払うのは当然のこと」という考えを持っている。
仕事においては、男性と同じ働きをしているのだから、自分が男女の性差なく、所得を得るのは当然、と思っているのに、婚活における「奢り・奢られ問題」となると、男性の奢りはごく普通でしょ、というのである。
彼女が、交際相手とのデート費用について、「ご馳走してくれなかった」という愚痴は何度か聞いた。ただ、そのことよりも印象的だったのが、彼女の頭の中にある「独自の費用分担ルール」だ。それは、女性がデート代を負担するのは、最大でも男性の半分、というものだった。
■「私が払うべき額は3000円なのに!」
結婚祝いや、出産祝いなどで、「半返し」というマナーが存在する。
知人や友人からいただいたお祝いの半分程度をお返しするのは、慣例ではあるが、婚活デート費用にも、どうやらそれをあてはめているようだ。デートで男性が全額奢ってくれたら、次のデートでは、何らかのお礼の品を持参するか、または彼女が決めた割合に応じてお返しをするのだという。
例えば、デートの食事代が二人で1万円だったとする。その半分は5000円になるが、その半分の金額の2500円が、彼女が負担するべき“正しい費用分担”だと考えているようだ。
とはいえ、男性側から全額ご馳走になったのに、お礼もせずケロリとしている女性よりは、マナーがあると言えるかもしれない。ただ、彼女は「男性の支払い分の半額以上」を超える負担を強いられると穏やかでいられないようで、そのことを理由に交際終了を言い出すのだ。

ある時、食事代の総額が1万2千円で、相手の男性から5000円を要求されたときには「信じられません! お会計が1万2000円弱で、私が5000円出させられました。私が払うべき金額はその半額のせいぜい3000円なのに!」と怒り狂ってしまった。そのときの叫ぶような声は忘れられないが、そのときだって、相手の男性は多く払ってくれているではないか。
「相手の方は、○○さんを大事に思ってくださっているから、お食事代も多く払ってくださっています。デート代は、男性が負担する約束も、多く払わなければならないルールもないんです。女性だって、自分が飲み食いした分はお支払いをするのは人としてのマナーです」
彼女をなだめながらそう伝えたが、そんな当たり前のアドバイスをしたところで、聞く耳を持ってもらえなかった。
きっと、5000円を要求された際の、彼女の態度は、相当相手に悪印象を与えるものであったであろう。翌日には、先方のカウンセラーから「価値観の相違」を理由に、こちらが交際終了を出す前に、交際終了された。
■「おいくらでしたか?」のひと言は必要
結婚相談所の交際における奢り奢られルールに、絶対の正解はないが、これは男女の関係以前に、人としてのマナーの問題であると思う。
たしかに、結婚相談所での婚活というフィールドにおいては、男性側が奢る方が多いのは事実。だが、大前提として、たとえ男性のほうが収入が多かったとしても、奢るのは当然ではないし、ご馳走していただいたら、きちんとしたお礼をするのは当たり前のこと。そして、男性に気持ちよく奢られる女性は、結婚相談所の婚活においてうまくいきやすい。

では、デートのお会計の際は、婚活女性は具体的にどのようにしたらよいのであろうか?
男性が、女性がトイレに行っている間や、帰りの際にさっさと支払いをしてくれたら、女性は店のレジ前で「いくらですか?」など聞かず、店を出たらすかさず、「おいくらでしたか?」と、必ずお財布を持って尋ねること。
財布を出さずに、金額を聞くのは、出すつもりがなさそうに見えるので注意したい。男性に「ここは僕にご馳走させてください」と言われたら、気持ちよく心からの感謝の気持ちを伝え、「次回は私にご馳走させてくださいね」と一言添えること。
もし、食事後に少し時間があり、散策などをするのであれば、「お茶を私にご馳走させてくださいね」でも良い。
金額の多少にかかわらず、していただいたことに対する感謝の気持ちを持てる女性かどうかは、絶対に男性はチェックしていると考えたほうがいい。
■相手の努力に感謝できる人が幸せを掴める
また、いまのご時世でも「男性を立ててくれる女性」は好感を持たれやすい傾向にある。男性が女性にも負担をしてもらいたいと考えていたとしても、お店の人の前で割り勘を申し出るより、店の人がいない場所で、という配慮も大事ではないか。
次回のデートで、美術館や水族館などを予定しているのなら、そのチケットを女性が二人分用意しておくなど、人目のない場所で、女性側が費用負担するようなことは好ましく思われやすい。
男女平等、共働き、共家事、共育児の令和の結婚生活だが、それでも女性より半歩先にいたいと思う男性は少なくないので、スマートに男性に奢らせてあげるのも、できる婚活女性の手腕の見せ所なのだ。
男性が奢ってくれることは当たり前ではない。
彼らは、一日も早く結婚したいからこそ、普段の生活のなかで節約をし、“武士は食わねど高楊枝”と言わんばかりに、歯を食いしばって女性を喜ばせようと、ご馳走してくれるのだ。
それに心からの感謝をし、彼のお財布事情も思いやれる女性から幸せを掴んでいくのは、紛れもない事実である。


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大屋 優子(おおや・ゆうこ)

結婚カウンセラー

1964年生まれ、株式会社ロックビレッジ取締役。ウエディングに特化した広告代理店を30年以上経営のかたわら、婚活サロンを主宰。世話好き結婚カウンセラーとして奔走。著書に『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)がある。

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(結婚カウンセラー 大屋 優子)
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