男性下着の「グンゼ」メディカルとフィルムでM&Aに注力

男性用下着などを手がけるグンゼ<3002>は、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)に、人工皮膚などのメディカル分野と食品包装材などのプラスチックフィルム分野でM&Aに力を入れる。

男性用下着などのアパレル分野が、国内市場縮小などの影響で振るわないことから、成長が見込めるメディカル分野やプラスチックフィルム分野で、外部の資源を活用した成長を目指すことにした。

国内市場縮小、競争激化、円安進行などに直面

グンゼは繊維事業の技術をもとに幅広い事業を展開しているのが強みで、現在は総売上高の40%強を占める男性用下着などのアパレル事業をはじめ、同40%近い機能ソリューション事業(プラスチックフィルムやエンジニアリングプラスチックなど)、同10%ほどのメディカル事業(人工皮膚や癒着防止材など)、同10%弱のライフクリエイト事業(スポーツクラブ、温浴施設など)で事業を構成している。

同社の主力事業が属するアパレル分野は、国内市場が縮小しているのに加え競争の激化や円安の進行などの問題に直面している。

アパレル分野に次ぐ規模を持つプラスチックフィルムなどの分野は、食品ロス削減や衛生意識の高まりから市場の堅調な成長が見込まれほか、メディカル分野でも高齢化や再生医療の発展などにより、人工皮膚などの需要は拡大傾向にある。

こうした情勢を踏まえ、同社ではアパレル分野で、生産、物流の再編や、間接部門の効率化、地産地消などの取り組みを強化する一方で、プラスチックフィルム分野では環境対応型の新製品を積極的に市場に投入し、メディカル分野では人工皮膚や癒着防止材を中心にグローバルに展開する医療機器企業への成長を目指すことにした。

環境対応技術を事業化

M&Aはプラスチックフィルム分野と、メディカル分野での目標達成のために活用する計画で、プラスチックフィルム分野では、リサイクルや環境対応技術の補完、事業化、社会実装に向けた取り組みの加速などにつながる企業や事業の取得を目指す。

またメディカル分野では、生体吸収性を主とした医療機器やシナジーが期待できる周辺領域、グローバル販路の開拓などにつながる企業や事業をM&Aの対象とする。

これらM&Aをはじめ新規事業の開拓などに2028年3月期までの3年間に210億円以上を投じる計画だ。

6件中買収は2件

同社が2010年以降に適時開示したM&Aを見ると、6件中4件が譲渡で、買収は2件に留まっている。

買収の一つは2016年のジーンズカジュアル専門店チェーン「dan」などを運営するジーンズ・カジュアル ダン(大阪市)などを子会社化した案件で、もう一つは2019年の形成外科などの領域で先端的な医療機器の販売事業を手がけるメディカルユーアンドエイ(大阪市、現グンゼメディカル)を子会社化した案件だった。

いずれもそれぞれが属するアパレル事業とメディカル事業の事業拡大が狙いだ。

直近では2024年に、製本関連機器メーカーのホリゾン(滋賀県高島市)に、メカトロ事業を譲渡するための交渉を開始したと発表した案件がある。

男性下着の「グンゼ」メディカルとフィルムでM&Aに注力

グンゼの2025年3月期は売上高1371億1700億円(前年度比3.2%増)、営業利益79億2100万円(同16.9%増)と増収営業増益となった。

2026年3月期は2.1%の増収、7.3%の営業増益と2期連続の増収営業増益を見込んでおり、3年後の2028年3月期については、売上高目標は示していないが、営業利益は125億円(2025年3月期比57.8%増)と年平均16%ほどの増益を見込んでいる。

M&Aによってこの予想はどのように変化するだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一

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