休み明け月曜日のしんどさを減らすには、どうすればいいのか。心療内科医の森下克也さんは「土曜日を漫然と過ごすことはやめたほうがいい。
むしろやりたいことを徹底的にやることが大事だ。予定の組み方にはコツがある」という――。(第2回)
※本稿は、森下克也『「月曜の朝がつらい」がなくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「休日を楽しむこと」に罪悪感はいらない
仕事熱心であればあるほど、生真面目であればあるほど、休日であっても仕事のことが頭から離れません。
どんなに仕事の案件が重くのしかかっていても、週末の休日くらいはそのことを忘れて楽しむということが大切です。生真面目な人は、この「楽しむ」ということを罪悪視してしまいがちですが、「楽しむ」「だらだら過ごす」という時間があってこそ、翌週の活力につなげていくことができるのです。
平日は仕事です。上司の顔色をうかがい、同僚に気を使い、プレゼンテーションに緊張し、心の休まる暇がありません。せめて休日ぐらいは自分だけのために、わがままに過ごしたいものです。
言うまでもなく、休日には土曜日と日曜日があります。では、この2日間をどう過ごせばいいのでしょうか。平日と同様、土曜日と日曜日で少し過ごし方のニュアンスを変えることで、より有効に2日間を過ごすことができます。
充実感をもって翌週に入っていくことができます。
では、どうするか。土曜日は「したいことだけ」をして徹底的にわがままに過ごしましょう。いっぽう、日曜日は、「したいこと」と「するべきこと」を半々で過ごします(後述)。
■土曜日は欲求に任せる
ビジネスパーソンは平日を仕事に忙殺されています。休日であっても、仕事以外にやるべきことがたくさんあります。平日にはできないスマートフォンの修理、友人の恋愛相談、旅行の手続きなどです。こういうものは「したいこと」ではなく、義務に近いものです。これらはできるだけ日曜日にまとめてしまって、土曜日は徹底的に欲求だけで過ごすようにしましょう。
平日は義務に追われている生活で、欲求はつねに抑圧されています。抑圧されたものは解放してあげなければいけません。小さいことのようですが、そういう配慮でガス抜きをこまめにしていかないと、気がつけばストレスのたまりっぱなしでうつ病にかかっていたなどということになるのです。

週末だからといって、漫然と過ごしてはいけません。週末にはそれなりの過ごし方があるのです。その点をしっかりと押さえておきましょう。
土曜日はしたいことだけをします。何をしてもかまいません。とはいえ、何をしてもいいと言われると、案外何もすることがないものです。「さて、何をしようか。デパートに行ってみようか、ジムに泳ぎに行こうか」などと考えながら、結局何もせず漫然と過ぎてしまうということになってしまいます。
ですから、何をするか、あらかじめ決めておくことをおすすめします。
■“漫然と過ごして終わる”はNG
と言っても別に大そうな予定を入れる必要はありません。土曜日で大事なことは、「何をすべきか」ではなくて「何をしたいか」なので、自分の欲求に合わせて過ごし方を決めましょう。
何をするか決めておくという意味は、何か予定を入れなければいけないということではありません。
「土曜日はこのように過ごそう」とあらかじめ決めておき、それが実行できているということが大切で、「土曜日は徹底的に何もしないぞ」と決めていれば、それはそれでかまいません。
なぜ「決めておく」ということが大切なのかというと、それを達成することである種の充実感を感じることができるからです。漫然と過ごし、不全感だけを残して土曜日が終わるというのが一番いけません。
そのためにも、平日の後半には、週末をどう過ごすかのイメージを持つようにしておきましょう。
土曜日は「したいこと」を優先させるわけですが、平日に時間が取れないからといって、何でもかんでも土曜日に集中させてはいけません。週末は2日間ありますが、土曜日は特に平日とテイストの異なる日にするということが重要なので、忙しい平日に対してできるだけゆったり過ごすことを目指します。
■予定はゆったり、3つ以内で
その柱が、すでにお話ししたように、「するべきこと」より「したいこと」を優先させることであり、「ゆったり予定を組む」ということです。そうすることで平板な1週間にならないようにし、なおかつ潤いをもたらすことができます。
けれども忙しいビジネスパーソンは、「そうは言っても、平日が忙しいんだから、土曜日にやるべきことが集中しちゃうんだよ」ということになりがちです。
しかし、そう言って予定を詰め込んでしまうと、結局、完ぺき主義的に仕事をこなそうとするのと同じことになってしまいます。予定の消化が義務のようになって、交感神経が緊張し、仕事をしているのと何ら変わらない心理状態に追い込まれます。
では、土曜日の予定はどう組めばよいのでしょうか。

自分の許容量を超えないように、土曜日の予定を優先順位の高いものから縦に並べてしまいましょう。そして、下位のものは大胆に切り捨て、上位のものだけやるようにします。仕事ではないので、切り捨てやすいものはけっこうあるはずです。できれば入れる予定の数は1つか2つ、せいぜい3つ以内にとどめておきます。基本的には3つ以内、どんなに多くても5つ以内と決めておきましょう。
■遅起きはプラス2時間まで
平日の忙しい日々が過ぎ、やっと来た休日の土曜日です。つい仕事で無理をしてしまい、寝不足だったり感情が高ぶっていたりと、心と身体にずいぶんと負担をかけてしまっていることでしょう。
まず、この疲れをとりましょう。そのためには睡眠が一番です。リズムコントロールにおいて、本書では寝る時間と起きる時間をできるだけ一定にしましょうとお話ししました。これを、土曜日は少しずらしてもかまいません。
いや、むしろ、寝る時間も起きる時間も少し遅くし、睡眠時間自体も少し長くしたほうが、ストレスの解消、疲労の回復という点では好ましいと言えます。

とはいえ、それはあくまで生活のリズムが乱れない範囲のことです。土曜日の朝の遅起きであれば、だいたい普段起床する時間からプラス2時間までです。それ以上に寝てしまうと、睡眠―覚醒のリズムに変調をきたし、その日の夜に寝つけなくなってしまいます。
プラス2時間の睡眠は、本書の2章「『寝だめ』はNG、『補充睡眠』はOKの理由」でお話しした補充睡眠です。補充睡眠とは、普段十分に取れない睡眠をまとめて取ることです。平日の睡眠不足により軽度の断眠状態に陥っていると、補充睡眠ですみやかに深い眠りに入っていくことができます。
緊張していた交感神経のリラックスもはかられ、ずっと張りつめていた筋肉の張りは取れ、全身の血行も改善します。そして、スッキリ目覚めることができるのです。
■土曜の朝は「特別メニュー」を食べる
本書では、平日の朝食は基本的に同じものを食べ、週末とコントラストをつけることをおすすめしました。これを週末の視点から見ると、土曜日は意識して平日とは違う朝食を食べましょうということです。
なぜそんなことをすすめるかというと、まずは気分転換です。土曜日の朝も平日と同じトーストと目玉焼きにホットコーヒー、などという朝食を摂ると、その組み合わせには「さあ、これから仕事だ」という意識がすでに刷り込まれています。
それを土曜日も食べるとなると、せっかくのんびりしたい休日に水を差してしまいます。
また、平日の朝食は機能重視で、脳のエネルギーとなるブドウ糖やアミノ酸、胃の中での食物の停滞時間などを考えてメニューを組むべきですが、土曜日の朝食にそのような配慮は必要ありません。
それよりも、おいしい、見た目がきれいなど、楽しみを重視して好きなものを食べるようにするべきです。
■休日の“朝食抜き”と“昼寝”はNG
土曜日は朝食を食べないという人がいますが、これはよくありません。起床時、前日の夕食からはおおよそ12時間ほどがたっています。日中それだけの時間を何も食べないでいるとかなりお腹が空くように、起きたばかりの身体は飢餓状態に陥っています。
それでも、朝あまり空腹を感じないのは、脳と胃腸がまだ十分に目覚めていないからです。しかし身体がブドウ糖やアミノ酸をほしがっている状況に変わりはありません。だから、たとえお腹が空いていなくても、朝食はしっかりと食べるようにしましょう。工夫して土曜日の朝食に変化をつけることで、休日をより休日として認識できるようになり、自然と「休日モード」に入っていけるのです。
また、休日に昼寝はしないでください。平日の昼寝は、仕事の緊張感と不足がちな睡眠とによって、寝入るとすぐに深い睡眠に入っていけます。そのことによって、わずか20分程度の昼寝であってもとてもスッキリ目覚めることができ、その後も頭の冴えが持続します。
しかし、土曜日は補充睡眠によって十分に睡眠時間が取れていますし、ある程度リラックスもはかられ、交感神経よりも副交感神経が優位になっています。そういう状況で昼寝をしても、すぐには深い睡眠に入っていくことはできませんし、スッキリ目覚めるということもありません。寝つくのに時間がかかるし、目覚めてもいつまでも頭がぼーっとしています。
■起床後はさっさと寝具を洗濯してしまう
そうすると、なんとなく身体がだるく頭が冴えないまま、ダラダラと休日を過ごしてしまうということになってしまいます。
つまり、土曜日に昼寝をすると、昼寝の悪い側面ばかりが出てしまい、貴重な休日を台なしにしてしまうのです。
生活のリズムをくずさないために、週末こそ睡眠と覚醒のメリハリをはっきりさせることが大切です。そのために、土曜日は、朝起きたらさっさと寝具を洗濯してしまいましょう。万年床なら、布団を畳むか干してしまいましょう。
ダラダラした休日を過ごしていると、ついベッドや布団にゴロンということになってしまいます。ベッドや布団はあくまで夜の睡眠のためのものという認識が大事で、それ以外では使わないようにします。

(主な参考文献)

・森雄材『図説漢方処方の構成と適用』(名著出版)

・大塚敬節『症候による漢方治療の実際』(南山堂)

・大塚敬節『漢方診療医典』(南山堂)

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森下 克也(もりした・かつや)

心療内科医、医学博士

1963年生まれ。久留米大学医学部卒業後、東京女子医科大学で8年間の脳外科医のキャリアを経て、米国へ留学。帰国後は浜松医科大学心療内科にて、全人的医療の提唱者である永田勝太郎先生に師事、漢方と心療内科の研鑽を積む。浜松医科大学病院、浜松赤十字病院、豊橋光生会病院などを経て、2006年精神科漢方の専門施設としてもりしたクリニックを開業。著書に、『決定版「軽症うつ」を治す』(角川SSC新書)、『うつ消し漢方』(方丈社)、『もしかして、適応障害?』(CEメディアハウス)他多数。

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(心療内科医、医学博士 森下 克也)

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