狭山店の横山さん(写真左)船橋店の沖島さん(写真右)



角上魚類には、黄色い帽子を被った「親切係」という店員がいます。対面接客を大切にする角上魚類のなかでも、特にお客様からの質問や相談に特化した存在です。



今回は、全社でもわずかな人数しか取得できない接客優秀者の称号「スターマイスター」を持つ、二人の女性「親切係」にお話を伺いました。船橋店の沖島さんと狭山店の横山さんが、いかにして知識ゼロからお客様の心を掴むプロフェッショナルへとたどり着いたのか。その奥深い接客マインドの裏側に迫ります。

「アジとイワシしか知らない」からの出発。お客様と同じ目線で歩む誠実さ

角上魚類の接客において、最初から高度な専門知識が備わっている必要はないそうです。お店が何よりも大切にしているのは、お客様を思う誠実な心と、自ら学び続ける謙虚な姿勢です。船橋店で女性「親切係」として活躍する沖島さんも、入社当時は魚の種類すらほとんど知らない、まさに「知識ゼロ」からのスタートでした。

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


「入社した頃はアジ、イワシ、サバくらいしか知らなくて、店頭に並ぶ魚を見て『こんなに種類があるんだ!』って驚いたくらいです(笑)。だから、休憩時間になるとネットで『今、旬の魚』や美味しい食べ方を一生懸命調べて、店長や現場の社員スタッフにもたくさん質問して知識を吸収していきました」

沖島さんがそこまで知識を蓄え続けた理由は、自分を誇示するためではありません。ただ純粋に「お客様の『美味しい』という笑顔に貢献したい」という、その一心からでした。

「自分が食べたことがないお魚のことを聞かれたときも、知ったかぶりはしたくないんです。でも、お答えできないのも申し訳ない。
だから、白身や青物といったベースの知識から、『これならきっと、何にしても美味しいですよ』と正直にお伝えするようにしています」

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


この「お客様と同じ目線に立って、共に学ぶ」という姿勢こそが、沖島さんの接客の原点であり、角上魚類が大切にする哲学そのものなのです。角上魚類の店頭には、その日、その時で最高品質の魚が並びますが、調理法を知らなければそれは単なる「食材」のまま。沖島さんは、自分の知識がお客様の「今夜のおかず、どうしよう」という悩みを解決し、食卓を彩る様子を常に想像しています。

「『銀鮭を多めに焼いておけば、ほぐして翌朝の鮭ごはんにできるから楽ですよ』なんて、自分自身の主婦としての経験もお話しするようにしています。鯛のアラからキッチンペーパーを使って手軽に美味しい出汁を取る裏技なんかも、お客様に教えると本当に喜んでいただけるんですよ」

沖島さんが勧めるのは、単なる魚ではありません。その先にある「家族の笑顔」や「明日の朝のゆとり」までを見据えた、確かな真心なのです。

店舗を越えて続く絆。街の食卓と若手を見守る「母の眼差し」

「お客様の人生の節目やご家族の日々の成長に寄り添う、地域で一番の魚屋」でありたいと願う角上魚類。その想いは、スタッフとお客様との間に生まれる長期的な信頼関係に色濃く現れています。

沖島さんが船橋店へ異動した後も、以前勤務していた津田沼店(※)時代からのお客様が「お久しぶりですね」と、わざわざ船橋店まで訪ねて来てくださるなど、店舗の枠を越えた関係性が続いています。

「赤ちゃんのときからずっと来てくれていた子が、小学3年生になって一緒に来てくれて。『大きくなったね』って成長を見られるっていうのも幸せですよね」

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


この温かな「母のような眼差し」は、共に働く若いスタッフたちにも等しく向けられています。
新入社員として入社し、当初は声も小さくたどたどしかったスタッフが、月日を経て一人前の売り場担当者へと成長していく。そして、素晴らしいスピードで魚を捌く姿を見るのがたまらなく嬉しいと、沖島さんは微笑みます。

「新入社員の子が一人前の対面売場スタッフとして素晴らしいスピードでお魚を捌いている姿を見たときも、しみじみと『お、すごくなったね』って。母のような目線で喜びを感じています」

こうした家族のような温かな風土と、沖島さんの包み込むような眼差しが、店舗全体の活気を内側からしっかりと支えているのです。

※(津田沼駅南口再開発事業による施設閉館に伴い2025年3月閉店)

「どんなに多忙でも笑顔を絶やさない」。自らの失敗から学んだ、揺るぎないプロ意識

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


お客様と同じ目線で歩む沖島さんのような温かさがベースにある一方、その高い接客レベルを「どんな状況でも維持する」ことは、決して容易なことではありません。狭山店で最前線に立つもう一人のスターマイスター、横山さんは、かつての苦い失敗を教訓に、現在の揺るぎない接客スタイルを確立しました。

「以前、すごく多忙だった週末に、接客の覆面調査員(ミステリーショッパー)から『対応が優しくなかった』と厳しいご指摘を受けたことがあったんです。忙しさを言い訳にして、自分の心に余裕がないことがお客様に伝わってしまった……それが本当に悔しくて、深く反省しました」

それ以来、横山さんは「自分の余裕のなさを、お客様への不誠実の理由にしてはいけない」と心に誓ったそうです。どんなに忙しくても笑顔を絶やさず、自分の焦りや私情は絶対に対面には持ち込まない。舞台裏を見せないこの徹底したプロ意識が、横山さんの接客に圧倒的な説得力を与えています。

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


技術面でも、横山さんのこだわりは徹底しています。
例えば三枚おろしを頼まれた際、横山さんは必ず「皮は引きますか?」と確認を入れます。というのも、三枚おろしは半身2枚と中骨1枚であわせて3枚に身おろしすることを指しますが、お客さまによっては「三枚おろし=刺身のサク」と思い込んでいる方も少なくなく、角上魚類の「当たり前」がお客様の「当たり前」とは限らないことを熟知しているからです。

「今の時期なら春が旬のサクラマスを勧め、煮魚のやり方が分からない方には定番魚と一緒に店特製のタレを提案する。お魚の鮮度の見分け方を聞かれたら『目が澄んでいて、お腹が硬いもの』と、誰でもすぐ実践できる明確なポイントをお伝えするようにしています」

こうした誠実な積み重ねは、時に想像以上の結果を生み出します。横山さんが以前所沢店で接客していたあるお客様は、横山さんの働く姿に感銘を受け、なんと角上魚類への入社を決めたといいます。

「実は、所沢店でお買い物をしてくれていた女の子が、接客を見て『ここだったら働けるかな』って入社してくれたことがあったんです。彼女は今、この狭山店でスタッフとして私と一緒に働いています」

お客様を「ファン」にするだけでなく、その人生に影響を与え、未来を創る「仲間」へと変えてしまう。横山さんの接客がいかに人の心を動かすか、その影響力の凄さが伝わってくるエピソードです。

つい言葉をかけたくなる、柔らかな空気。笑顔がつなぐ幸福の循環

市場さながらの活気に満ちた店頭では、時にプロの世界特有の「近寄りがたさ」が生まれてしまうこともあります。そんな中、親切係が店頭に立つことで生まれる「つい言葉をかけたくなる柔らかな空気」は、お客様にとって大きな安心感に繋がっています。魚のプロが立ち並ぶ活気ある売り場でも、この空気感が対話のハードルを劇的に下げ、街の食卓と魚のプロを繋ぐ大切な架け橋となっているのです。


「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


二人に共通するのは、スタッフが心から仕事を楽しんで働く姿こそが、お客様に活気と喜びを与える最大の要素であるという考え方です。魚という恵みを通じてお客様が「帰ってから食べるのが楽しみだわ」と笑顔でお帰りになること。それが一番の幸せだと、二人は口を揃えます。

角上魚類の店舗に漂う独特の活気は、魚の鮮度や品質だけでなく、働くことの喜びを知り、お客様に喜んでいただくことを心から楽しんでいるスタッフたちの「笑顔」によって作られています。レシピ本には載っていない「生きた知恵」の共有こそが、彼女たちが大切にしている「親切」の本質です。

「美味しい幸せ」を、店先から食卓へ。女性親切係が紡ぐ、対話のぬくもり

売り場に響き渡る声、あふれる笑顔。これらは私たちが日々の接客の中で、何より大切に守り続けてきた財産です。沖島さんと横山さんは、魚という素晴らしい自然の恵みを通じて、これからも街の人々と心を通わせていきたいと考えています。時代がどれだけ効率化を求めたとしても、対面販売という「心の通い合い」が色あせることはありません。

お客様が「今夜は何にしようかしら」といらっしゃったところから、食卓を囲んで「美味しいね」と語らう瞬間まで。そのすべてのプロセスに寄り添い、共に歩んでいきたい。
その想いがある限り、黄色い帽子が揺れる店頭からは、明日もまた、たくさんの「美味しい幸せ」が生まれていくことでしょう。

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


お二人は、これからの展望をこう語ります。

沖島さん 「やっぱり『あ、美味しそうだね、いいの買えたね』って、笑顔でお帰りいただく場所でありたいと願っています」

横山さん 「もっとお店全体を盛り上げたい。お魚に詳しくないお客様にも『また来たい』と思ってもらえるような活気あるお店をみんなで作っていきたいです」

地域の食卓を、もっと魚で、もっと笑顔で満たすために。「店舗の顔」となった彼女たちの挑戦は、これからも街の日常に確かな温もりを届けながら、どこまでも続いていきます。

「今日のお魚、何がいい?」がもっと気軽に。 対面売場と食卓を笑顔でつなぐ、角上魚類・女性親切係の「対話の架け橋」。


狭山店の横山さん(写真左)船橋店の沖島さん(写真右)

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