2012年に台湾・台北で結成されたKT Chang・Tell Chang・Tu Chia-Chinによる3ピースバンド Elephant Gym。2018年には数々の日本の音楽フェスへ出演し、結成7年目となる今年・2019年はアメリカのSWSXにも出演。
同時に行われたUSAツアーのチケットもすべてsold outするなど、アジアのバンドとして目を見張る成果を上げ、世界への進撃を続けています。そんなElephant Gymが、5月下旬に来日公演を行うとのニュースをキャッチ。待望の再来日を記念してインタビューへ駆けつけたところ、直近のUSAツアーのこと、はじめて明かされるバンド活動の思い出、そしてかけがえのない故郷・高雄への想いなど、奥深い表情を見せてくれたので、ノーカットでお届けします!それでは本編へ。

Elephant Gymがアメリカのシーンでこんなにも受け入れてもらえるなんて

Elephant Gym来日前インタビュー 日本・アメリカ・故郷への想い
(向かって左からTu・KT・Tell) Photo by Chiaki MachidaーーElephat Gymのみなさん、日本へおかえりなさいませ!今回、5月23日(木)には渋谷WWW Xで行われる<In&Out>への出演、そして同25日(土)には<2019 Shimokitazawa Sound Cruising>への出演が控えていますが、日本での活動は昨年11月に行われたtricotとの2マンライブ以来ですね。そこでまずは、日本を離れている間に行われた3月のアメリカツアーについてお聞きしていきますね。アジアのバンドにとって、はじめてのUSAツアーがsold outすることはなかなかの快挙だと思いますが、感触はいかがでしたか?Tu:もう、最高でした! アメリカへ出発するときには、全公演が完売し、あんなにも多くのオーディエンスに迎えてもらえるとは思っていませんでしたよ。KT:実を言うと、今回のツアーが見事に完売したのは、SXSWを含め東海岸で行われたいくつかのライブのおかげです。
東海岸の「口コミ」の影響によって、西海岸のチケットもsold outしたんですよ。ーーSXSWから西海岸のライブまで、それほど日が空いていませんでしたね。KT:まさにその通りです。このことから、インストゥルメンタルコミュニティの強い繋がりや、情報が伝わる速さを感じました。ーー実際にステージへ立ってみて、Elephant Gymの音楽は、アメリカのオーディエンスへどのように届いていると感じましたか?Tell:チケットが完売したこと以上に驚いたのは、お客さんひとりひとりの音楽の楽しみ方で、かなりノリよく踊っていました。そして、さらに驚いたのは、ライブが終わったあと、ファンの方と一緒に写真を撮っているときに、「長い間、Elephant Gymのファンだよ!」と伝えてくれた方がいたことです。
ーーはじめてのUSAツアーで、以前からのファンと初対面。これもなかなか貴重な経験だと思いますが…Tell:こんなすごいことが起きたのは、KTが言うように口コミの伝達速度ーつまりSNSの発展があり、アメリカでのレーベルTopshelf Recordsから大きなサポートが受けられたおかげで、本当に感謝しています。ーーKTさんはいかがでしょうか。KT:今回のライブで、アメリカのオーディエンスと私たちは音楽を通じて双方向の対話ができたと思います。ーーElephant Gymの音楽性は、インストゥルメンタルロックが軸となっていますが、演奏中、オーディエンスにはどのようなメッセージを送っていますか?KT:私たちは演奏をしている間、「オーディエンスの体がもっと開放的になること」を求めています。そして、この呼びかけにこたえるように、アメリカのオーディエンスは、音楽のリズムや、Elephant Gymが放ったパワーを余すところなく受けとめてくれました。
Tu:アメリカのオーディエンスはライブ後に話に来てくれる方も多く、僕たちの音楽の「どこに驚いたか」を熱心に伝えてくれました。「マスロックとポストロックが入っているだけでなく、ヒップホップやジャズ、R&Bの要素も巧みに混ざっている!」とより詳しく感想を伝えてくれたお客さんもいたんですよ。ーー最新アルバム『Underwater』の音楽性が、アメリカのお客さんにもしっかり伝わっていることを感じます。Tu:他にも「ライブのパワーがかなり強い」「スタイルが魅力的」など色々褒めてくれました。そんな風に言ってもらえるのはとてもうれしいし、なにより、私たちの作品をそこまで真剣に受けとめてくれたことに、感動しました!

叩きつけてしまった楽器には、申し訳ないと思っています

Elephant Gym来日前インタビュー 日本・アメリカ・故郷への想い
Photo by Chiaki Machidaーーありがとうございます。Elephant Gymを結成してから今年で7年が経ちますが、これまでで印象深いエピソードを教えていただけますか?KT:ああ...すぐに思い浮かぶことといえば、割と嫌な思い出ばかりですね(笑)ーーそれは意外です。差支えなければ、どんなことが起きたのかお聞きしてもよろしいですか?KT:バンドがこれからどう進んでいくのかについて、年に1~2回くらい兄(ギター)とケンカして、どんどんヒートアップしていくと、床にいすを投げたり楽器を叩きつけたりもしました。
ーーそれらのケンカについて、今はどう思っているのでしょう?KT:......投げてしまったいすや、叩きつけてしまった楽器に対しては、本当に申し訳ないことをしたと思っています。ーー一同笑Tu:あはは、バンドをやるのって、楽しい時が多いのを当たり前のように感じてしまうときもありますが、たとえいっときの称賛を受けたとしても、まだまだ先が長くて…。だから、生意気になる余裕なんてないなぁって思います。ーーとても謙虚ですね......。Tu:ですから、辛い時や悲しいことというのも、逆に忘れられない。一番大事なのは、どれだけイヤなことがあっても、それでもまだ前へ進んでいくことです。
Tell:理想的なフルタイムアーティストになるためには、目の前はおぼつかないことばかりで…。それでも何かを掴めることを信じて、全身全霊今までがんばってきました。そのひとつひとつの記憶が、とても印象深いです。

人間ばかりではなく、都市も年齢を重ねるということ

Elephant Gym来日前インタビュー 日本・アメリカ・故郷への想い
Photo by Chiaki MachidaーーTellさんから「目の前はおぼつかないことばかり」とお聞きしましたが、Elephant Gymにとって大きな転機といえば、2017年に首都台北から高雄へ活動拠点を移したことですよね。そこでまずは、Elephant Gymの3人にとって、故郷・高雄で過ごすお気に入りの時間を教えていただけますか?KT:家族と過ごす時間です!それが目的で高雄に戻りました。家族と過ごす時は一緒にテレビを見たり散歩したりして、日常生活の醍醐味を贅沢に味わっています。Tu:家族と過ごすだけでなく、おいしいものを食べるのも好きな時間に違いないんだ!ーー台湾グルメが今、日本でも流行しているんですよ!高雄のグルメには、どんな特徴がありますか?Tu:南台湾のグルメというと、いつもお隣の台南が美食の街として取り上げられるのですが、実は高雄もおいしくて安いレストランがいっぱいあるんですよ。
僕は食事の前に、先に食べたいものを考えておきます。そして、決めたものが食べられた時は、とても嬉しくなります!Tell:子供の頃からずっと、果物屋と屋台に行くのが好きでした。店主達はみんな、まるで自分の子供のように僕へ優しく接してくれます。ーーTellさんは、過去のインタビューで「台北から高雄にもどって、心の中の大事な部分・ほかの人と違う部分を見つけたかった」とのご発言もあり、とりわけ高雄への思い入れが強い印象があります。Tell:僕たち、バンド活動は大学生の頃から始めました。台湾の男性には兵役の義務があるので、Tuと約束して同じ時期に兵役に行くことにして…退役した時に、ちょうどベーシストのKTも大学を卒業して。そのタイミングで、僕たち三人は台北から故郷の高雄への引っ越しを決めたのです。そしてこの段階では、当時としては未知なことや挑戦がいろいろと待っていて、うまくいくかどうか疑わしいことばかり。たとえば、「正式に社会人になったからには、自力で収支を合わせなければいけないが大丈夫か」「台北、つまり<台湾の中で一番音楽シーンが発達している首都>を離れてもやっていけるのかどうか」など、挙げはじめたらキリがありません。ーー実際に高雄で活動をはじめて、国際的にも多くの活躍の扉が開けましたよね。そういったなかで、「心の中の大事な、特別な部分」は見つかりましたか?Tell:高雄に戻ると、長いこと家から離れていた少年が戻って、故郷に住むことにかえって新鮮さを感じました。子供の頃、親は成長する私たちを支える神のような存在です。しかし大人になってみると親が抱える喜怒哀楽、憂愁や幸福を知り、そして同時に、親がどれほどの早さで歳を重ねるのかも知るようになってきたのです。ーー日本には、「親の心子知らず」ということわざもあります。Tell:年齢を重ねているのは、人間ばかりではありません。「高雄」という街についても、同じことがいえます。ーー都市が成熟化しているということでしょうか?Tell:高雄の、のんびりしている地域性や情熱的な人たちがいてくれることが、曲作りに良い影響をもたらします。その反面、この工業化都市は今まさに老化していて、低賃金問題や、就職口についての課題を抱え、若者が定着しにくい環境となっていることもまた事実です。僕の「心の大事な、特別な部分」は緩やかに、心地よい負担へと形を変えていくのかもしれません。

2nd album「Underwater」では、ひとりひとりがプロデューサーになりました

Elephant Gym来日前インタビュー 日本・アメリカ・故郷への想い
Photo by Chiaki Machidaーーアメリカのリスナーからの感想にもあるように、2018年に発売された2nd album「Underwater」では、音楽性が「ポストロック」から更に幅が広がっているようにも見受けられます。KTさんにお聞きしたいのですが、このアイディアは、どのようなスタート地点からはじまりましたか?KT:このアルバムのひとつ重要なコンセプトは、「メンバーがそれぞれ数曲のプロデュースを担当すること」です。ここには、バンドメンバーが平等であることを重視し、曲作りのスタート地点は各々が自由に個性を発揮できるようにするという目的がありました。ーーメンバーが平等に個性を発揮する機会を持つことは、まさに正解のひとつですね。KT:このことが、音楽性の幅が広く見受けられる理由になっています。そして、以前と違う点は「良いメロディを単純に探し出す」のではなく、先に作りたい雰囲気を固めてから、曲作りに着手します。ーーこれまではメロディ先行だったところ、楽曲のコンセプトを先に決めるということですね。KT:私が担当して作った曲「Underwater」と「Satellite」を例にあげると、「水の中に沈んでいく感覚」や「宇宙に到達する感覚」はどのように再現できるのか、をまずはスタート地点とします。そして、その感覚はどのようにスリーピースのインストゥルメンタルロックで再現できるのかを探り当てていき、最後はあらゆるサウンドエフェクトを用いて、聴覚に更なるインパクトを与えていくよう手を尽くしました。ーーアルバムの中には、日本のアーティストと協力して作った楽曲もありますね。Tell:僕たち3人は、本当に日本のバンドが好きなんですよ。実際、「Underwater」のうち「Quilt」はWONKのボーカル・長塚健斗さんと、「Moonset」はYeYeさんと協力して作りました。これからも日本のアーティストと一緒に、世界中のリスナーを引きつける楽曲を作りたいと思います。ーーElephant Gymは、活動を重ねていくにつれ、日本のシーンやアーティストたちと徐々に距離が近づいている印象があります。今後は「日本のアーティストたちと、一緒にこんなことがしたい!」というアイディアはありますか?KT:日本のミュージシャンとコラボレーションする機会がもっと増えればいいなぁ!Tu:日本のバンドとライブする機会に恵まれつつも、なかなかライブだけだと一緒に過ごす時間が限られていて。なので今後は一緒に過ごせる時間がもっと増えたらいいなと思います。また、言葉が通じないという理由で奥深い会話ができないことも課題のひとつです。ーーもしも言葉がスムーズに通じたら、こんな話をしてみたい!というテーマはありますか?Tu:曲作りの考え方や音楽を仕事にするということに対する姿勢、そして暮らしやカルチャーにまつわる深いテーマで意見を交わしてみたいです! お互いに良い刺激になると思います!Tell:台湾は小さい国なので、音楽メディアや音楽誌がたくさんある日本とはやや状況が異なります。ですから、アジアの情報を総合的に提供する音楽メディアがあるといいなと思います。そうすれば、音楽好きの僕たちも各地の面白い音楽の話を知ることができます!ーー今後、日本で展開してみたい活動について教えてください。KT:規模を問わず、日本の各地のフェスへ参戦して、Elephant Gymの音楽をお客さんひとりひとりへ丁寧に届けたいです。Tu:以前のツアーは主に東京、名古屋、大阪などの大都市でライブをしたので、これからは違う都市のお客さんと会えたらいいなと思います。もちろん、フェスもいいと思いますので、ぜひ誘ってください。お願いします!

今回の来日ライブへの気合を伺う

Elephant Gym来日前インタビュー 日本・アメリカ・故郷への想い
Photo by Chiaki Machidaーー今回の来日ライブが、Elephant Gymにとって「こんなものになったらいいな」という意気込みをおひとりずつお願いします!KT:日本のみなさんへ、最新アルバム「Underwater」に込めたストーリーを一曲ずつ知ってもらいたいですね。だから、日本語の勉強をもっと頑張らなきゃ!Tell:お客さんと僕たちが一緒にダンスできたらいいなと思います! 今回のライブセットはアルバムの中でもビート感が強い曲が何曲か入っていますので、一緒に踊ってもらえると思います。できれば、ダンスしている時は考えることをいったん止めて、直感でワクワクするエネルギーを受け止めてほしいですね!Tu:僕にとって「下北沢」には忘れられない記憶があり、とても思い入れのある場所です。下北沢が本当に大好きです。そして、Elephant Gymにとって、下北沢でライブするのは今回が初めてのことなので、感謝の気持ちを伝えたい!ーーありがとうございます。それでは最後に、バンドを代表して…Tuさん!5月23日(木)にWWWXで行われる<In&Out>・5月25日(土)の<SHIMOKITAZAWA Sound Cruising>のステージに足を運ぶ日本のファンへ、一言コメントをお願いします!Tu:<In&Out>そして<SHIMOKITAZAWA Sound Cruising 2019>でお会いするみなさん、ぜひ僕たちのステージへ足を運んで、Elephant Gymの魅力を感じ取ってください!皆さんと会えるのがとてもとても楽しみです!!!ーーたくさんの質問にお答えくださり、ありがとうございました!今回の来日公演もよいものになりますように!

Text:中村めぐみInterpreter:張家綸Cooperation:TAIWAN BEATS Brien John / 張凱鈞


INFORMATION


【Elephant Gym 来日ライブ情報】

2019年5月23日(木)<In&Out>会場:WWW X出演:Elephant Gym(Taiwan)、WONK料金:前売 ¥3,300 / 当日 ¥3,800(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)時間:OPEN 19:00 / START 20:00チケット発売日:4月6日(土)e+ 、ローソンチケット、チケットぴあ、iFLYER、WWW店頭問い合せ:WWW X 03-5458-7688詳細はこちら2019年5月25日(土)<Shimokitazawa Soundcruising 2019>※出演ステージ・時間等の公演詳細情報は公式Webサイトよりご確認ください公式Webサイト

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