
[J2第3節、ジェフユナイテッド千葉 3-2モンテディオ山形、3月1日、千葉・フクダ電子アリーナ]
千葉が山形を3-2で下し、クラブ史上初の開幕3連勝を飾った。
2018年以来(7季ぶり)に勝利した相手だった。
J1クラブからのオファーもあった千葉のスピードスター
今シーズン、田中は特別な想いを持って闘っている。
「自分はジェフに来なかったら、選手として終わっていた。本当に自分の力を必要としてくれていると伝わったので、今シーズンは恩返ししたい。チームをJ1に上げて感謝の気持ちを示したいという想いで臨んでいます」
2023年シーズンにJ1京都サンガF.C.から期限付き移籍で加入し、初年度はリーグ戦38試合2得点4アシストを記録した。完全移籍した昨季は右サイドを主戦場にして33試合5得点9アシストをたたき出すと、京都でリーグ戦1試合の出場に終わった男がJ2屈指のサイドハーフに変ぼうした。
千葉でメキメキと頭角を現し、昨季J2ベストイレブンに選ばれた背番号7を他クラブが放っておくわけはなかった。シーズン開幕前、田中の元にはJ1クラブからのオファーも届いていたが、「ステップアップのチャンスを得られたのも、自分を成長させてくれたチームのおかげだと思っている」と今季も黄色のシャツに袖を通している。
今季すべての試合に先発出場している田中は、サイドを切り裂く快速と無尽蔵のスタミナで相手選手を苦しめ続けてチームの連勝に貢献した。
昨季の最終節に出場した田中そして迎えた第3節の山形戦。
田中は「申し訳なかった」と言葉を続けた。
宿敵の山形戦で躍動
J1昇格POを懸けた昨季の一戦で、田中は先発メンバーとして名を連ねていた。
勝てば無条件でJ1昇格PO進出という状況だったが、前半2分に失点。背番号7はシュートブロックに身体を投げ出した際に腰を強打した。
「元々その週にぎっくり腰をやっていたんです。それでも何とか出場しようとしましたが、失点のときに再発してしまった。無駄な交代カードにもなってしまいましたし、そこから失点を重ねて負けてしまったので、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした」

腰を痛めた田中は何とかしてプレーを続行するも、パフォーマンスを発揮できず。前半30分で途中交代し、ベンチから0-4の大敗を見届けた。
「最後に負けて、J1への切符を断たれた相手だったので、俺だけじゃなくてみんなも意識していた」と、イレブンは不退転の覚悟でこの日のピッチに立った。
前半13分に失点を許すも、10分後にはMF横山暁之(あきゆき)の同点ゴールでゲームを振り出しに戻した。一進一退の攻防が続く中、田中はサイドで上下動を繰り返しながら、裏抜けのチャンスを狙っていた。
すると前半37分に、FW石川大地が右サイドでボールを受け、スプリントを開始していた背番号7へスルーパスを送った。田中は並走していた相手ディフェンダーを猛スピードで追い越すと、右足でグラウンダーのクロスを供給。ボールは大外で走りこんでいた椿の元へとつながり、最後は右足ダイレクトでゴールへ流し込み、逆転に成功した。
「あれを狙っていました。今シーズン初アシストなのでうれしかったです」とニヤリと笑ってみせた。

千葉はその後に1得点を返されるも、後半9分に鈴木主将がヘディング弾を決めて、再び勝ち越し。2018年以来勝てていなかった因縁の相手を、『今年は違うぞ』と言わんばかりに打ち破った。
「悔しい思いをしたのは選手だけじゃないし、サポーターも絶対に感じていたと思う。きょうはその気持ちをエネルギーに変えられました。(サポーターが)背中を押してくれたので、『ありがとうございます』という気持ちです。この結果に満足せずにこれからもやっていくので、『一緒に頑張っていきましょう』と伝えたいです」と17季ぶりのJ1復帰を目指す。
千葉は次節、今月9日午後1時5分より大和ハウスプレミストドームでJ2北海道コンサドーレ札幌と対戦し、勝てば開幕4連勝となる。
「(得点やアシストを)取れるだけ取って、チームの勝利に貢献したい」と決意した田中は感謝の気持ちをエネルギーにして走り続ける。
(取材・文 浅野凜太郎)