
[J3第22節、栃木シティFC 0-1 栃木SC、7月26日、栃木・CITY FOOTBALL STATION]
J3首位の栃木Cは17位栃木SCと対戦し、初のホームでのダービーを0-1で落とした。
栃木Cはリーグ戦5試合ぶりの敗戦となり、3位に転落した。
古巣とのダービーマッチに先発出場した栃木C・MF森俊貴は、フィジカルの強さを生かしたボールキープや守備に加え、果敢にラインブレイクを狙うなど持ち味を発揮したが、あと一歩及ばなかった。
ドリブルでボールを運ぶ森持ち味を発揮も敗戦反省を口に
今年3月にアウェイのカンセキスタジアムとちぎで行われた栃木SCとのダービーで、森は後半27分からの出場となり、アカデミー時代から昨季まで所属した古巣との試合で持ち味を発揮できずにゲームを終えた。
以前、Qolyが同選手をインタビューした際には「『僕ももっと頑張らないと』という気持ちになった」と明かしていた。
当時はベンチスタートとなる試合が多かった森だが、J3第20節ギラヴァンツ北九州戦で先発出場して以降は、3試合連続でスタートから起用されている。まるで、古巣とのダービーに照準を合わせて復調したようにも見えた。

ここまでリーグ戦4試合負けなしの栃木Cだが、前半32分にオウンゴールで失点。
1点ビハインドの栃木Cは、ロングボールで相手を押し込んでチャンスをつくるも、栃木SCの堅い守備を崩せない展開が続いた。
森は「天皇杯のときもそうですし、リーグ戦の前期の試合もそうでしたが、 先制されるとすごく堅いチームだと感じていました」と試合を振り返った。
続けて栃木Cの背番号8は、「(古巣とのダービーで)気合いが入っていたんですけど、僕自身の不用意なファウルで相手のセットプレーに時間を割いてしまったのが一つの反省点です。そこは冷静にプレーしなければいけないと思いました。
相手のセットプレーが特徴だと分かっていたので警戒していましたが、そこで結局やられてしまったら意味がない。そこを反省して、(得点が)ゼロで終わっていたら勝てないので、そこから1点、2点とひっくり返せるようなチームになっていかないといけない」と猛省した。

それでもこの試合では、フィジカルの強さを生かしたプレーなどを随所(ずいしょ)で見せて持ち味を発揮。
だが、森は自身のプレーに満足していないと言う。
「中盤から飛び出していくプレーは僕の持ち味ですし、チームから求められていることです。
ただ、そこで得点や、決定的なチャンスにつなげられなかったことが課題です。そこで得点に関わる仕事をしないと、意味がないポジションだと思う。その部分をこの中断期間で突き詰めて、こんなに悔しい思いを絶対にしないように取り組んでいかないといけない」と敗戦を糧にする。
古巣とのダービーに敗れ、悔しさをにじませた森だが、栃木C、そして栃木SCのサポーターからの視線を一身に受けて立つその姿は、どこかたくましく見えた。
「誰でも観やすい環境に」栃木ダービーの在り方とは
「僕のクリアミスでクリアミスで負けてしまった。栃木県のみんなの想いを背負ってやったつもりなので、ほかの試合と違って悔しい。この悔しさをバネにして、絶対にJ2へ昇格してやろうと思います」
栃木ダービーを盛り上げ続けてきた栃木C・FW田中パウロ淳一は、今季公式戦2度目のダービー敗戦に悔しさをあらわにした。

この日は、試合が行われる前から、栃木SCのファンがスタジアムの付近に栃木Cを侮辱する張り紙を張るなどピッチ外で栃木ダービーをめぐるトラブルが発生した。
両チームが公式サイトで「決して容認できません」「決して許されるものではありません」などと誹謗中傷行為に対する声明を発表。
試合後、ミックスゾーンに現れた田中だが、真っ先に向かった場所はチームバスの前で待つ子供たちのもとだった。
栃木Cの背番号77は子どもたち一人、一人のサインに笑顔で応じた後、囲み取材に戻ってきてくれた。

誰よりも地域の子供たちを想う田中が、栃木ダービーの在り方について持論を展開した。
「栃木CはJリーグ参入組ということで、ほかのJ1のダービーと比べたらダメです。初めて(観戦に)来る人、サッカーを知らない人が来やすい環境にしてあげることが、僕たちの目標です。
誰でも観やすい栃木県の新しいイベントとして確立するためには、僕たちがもっと盛り上げる必要があったかな」
また田中は「ほんの一部のファンがちょっと過剰ですけど、それは全然ファンでも何でもないと思っています。別に栃木SCが悪いとかではない。
海外のダービーに憧れる人が多すぎて。ここは日本ですし、J3なので日本の方が観ています。絶対に(試合を)観に行きやすい環境にするべきです。
海外とは文化の違いであったり、歴史が違うわけで、より日本が強くなることを考えたら、サッカーを知らない人たちからも応援されるようなイベント、興行にしないといけない」と今後の栃木ダービーの在り方への想いを語った。

この試合で、栃木Cは同じ街のライバルチームに今季公式戦2度目の敗戦を喫した。
田中は試合終了のホイッスルが鳴るとピッチに倒れこみ、チームメイトのGK相澤ピーターコアミとDF奥井諒がかけよるまで、腕で顔を覆い、起き上がることができなかった。
このときについて田中は「僕たちのチームのファンは、負けた試合の後にブーイングをせずに、『次勝てば大丈夫』と言ってくれるからこそ、非常に胸が痛いところがあった」と明かした。
栃木シティは来月16日午後6時からアウェイのとうほう・みんなのスタジアムで福島ユナイテッドFCと対戦する。クラブ史上初のJ2昇格に向けて、1試合も落とせない。
栃木Cのサイドアタッカーは「不甲斐なさと悔しさをバネに、絶対に今年中にJ2へ昇格してみんなに恩返しをしたいと思います」と、この敗戦を糧にすると誓った。
(取材・文 縄手猟)