
現在J1リーグで首位に立っているサンフレッチェ広島。今夏トルコ系ドイツ人MFトルガイ・アルスラン、ポルトガル人FWゴンサロ・パシエンシアを獲得したが、これが大当たりだった。
広島はJリーグ開幕当初から他クラブがあまり目を付けていない国の選手を獲得する傾向があり、1990年代にはオーストラリア人選手を立て続けに獲得した時期もあった。
これは当時クラブが経営難だった事情もあるが、バルセロナ五輪でオーストラリアを4位に導いた故エディ・トムソン監督が就任し同国の隠れたタレントを多く連れてきたのである。
その彼らは現在、オーストラリアサッカー界で大きな影響力を持っていることをご存じだろうか。
トニー・ポポヴィッチ
ブラジル代表アドリアーノをマークするポポヴィッチオーストラリア代表:58試合8得点(1995~2006年)
サンフレッチェ広島:87試合13得点(1997~2001年)
現在:オーストラリア代表の監督(2024年~)
オーストラリア代表の新たな指揮官に就任したトニー・ポポヴィッチは同国のレジェンドであり、またサンフレッチェ広島史上最高のDFの一人だ。
1997年、恩師エディ・トムソン監督と共に広島へ加入。空中戦の強さやリーダーシップを遺憾なく発揮し、得意の左足でPKキッカーも担当した。
指導者となってからは、Aリーグ年間最優秀監督を3度受賞している。ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ時代の2014-15シーズンには同国初となるACL制覇を成し遂げ、AFC年間最優秀監督にも選ばれた。
日本代表の森保一監督は広島時代のチームメイトであり現在も友人。森保監督が広島の監督を退任した直後、最初に海外研修へ行ったのがポポヴィッチ率いるウェスタン・シドニー・ワンダラーズだった。
グラハム・アーノルド

オーストラリア代表:56試合19得点(1985~1997年)
サンフレッチェ広島:28試合7得点(1997~1998年)
現在:なし(オーストラリア代表の前監督)
グラハム・アーノルドはオーストラリア代表史上屈指のストライカーであると同時に、同代表で最も成功した指揮官でもある。
トムソン監督との縁で1997年に広島へ加入。すでに34歳とキャリア最晩年であまり結果は残せなかったが、退団直前の高木琢也、若かりし久保竜彦という新旧エースFWとプレーした。
引退後は指導者となり、ベガルタ仙台などの指揮を経て2018年にオーストラリア代表の監督に。
今年9月に成績不振で退任してしまったが代表の在任期間は史上最長で、代表での試合数・勝利数は歴代1位となっている。
スティーヴ・コリカ

オーストラリア代表:32試合5得点(1993~2006年)
サンフレッチェ広島:43試合14得点(2000~2001年)
現在:オークランドFCの監督
今夏、浦和レッズを退団した酒井宏樹が新天地に選んだのがスティーヴ・コリカ率いるオークランドFCだ。
1992年バルセロナ五輪で4位に輝いた黄金世代の選手で、オーストラリア代表としても活躍。得点力の高い攻撃的MFであり、1995年には日本代表との親善試合でゴールを記録した。
広島には、英国のレスターやウォルヴァーハンプトンでプレーした後の2000年に加入。恩師トムソン監督はその年限りで退任したが、翌年にはヴァレリー・ニポムニシ監督の攻撃サッカーのもと22試合11得点と大暴れした。
引退後はシドニーFCで長くコーチを務め、2018年に指揮官へ昇格。国内リーグを2度制するなど成功を収めており、今年6月、新設されたオークランドFC(ニュージーランドだがAリーグに参加)の初代監督に就任している。
アウレリオ・ヴィドマー

オーストラリア代表:45試合17得点(1991~2001年)
サンフレッチェ広島:24試合6得点(1998~1999年)
現在:メルボルン・シティFCの監督
オーストラリア代表として1990年代に活躍したストライカー。実弟のトニー・ヴィドマーも元代表DFである。
90年代にはベルギーリーグで得点王に輝いた実績があり、その後オランダの名門フェイエノールトにも在籍。スイス、スペインでのプレーを経て、1998年にトムソン監督の広島へ加入した。
ヨーロッパでの実績はオーストラリア勢でも最上位だったが、広島では1998年に15試合4得点、1999年に9試合2得点と振るわなかった。
指導歴は長く、オーストラリアのU-20・23代表、タイ、シンガポールなどで指揮をした経験も。これまで大きなタイトルは獲得していないが、国内リーグと2008年のACLで準優勝した実績がある。
ハイデン・フォックス

オーストラリア代表:11試合2得点(1998~2003年)
サンフレッチェ広島:37試合5得点(1998~2000年)
現在:オーストラリア代表のコーチ
ポポヴィッチ監督が就任したオーストラリア代表のコーチに任命されたハイデン・フォックスも、かつて広島でプレーした元同国代表DFだ。
オランダのアヤックス・アカデミーで育ち、ドイツのビーレフェルトでデビューしたという変わり種で、1998年5月にトムソンが監督を務めていた広島に加入。
活躍した期間は短かったが、ポポヴィッチ、上村健一と形成した3バックはJリーグ最強ともうたわれ、その後ウェストハムやポーツマス、リーズなどでプレーした。
監督としてのキャリアはほぼゼロだがコーチとしては「大成功を収めている」と評価されており、2022年には元代表レジェンドであるジョン・アロイージ監督のもとでコーチとしてリーグ優勝を経験している。
赤髪がトレードマーク。ポポヴィッチ監督とは代表と広島時代のチームメイトで、複数クラブでコーチとして仕えるなど関係は非常に深い。