[J2第27節ジェフユナイテッド千葉0-3いわきFC、17日フクダ電子アリーナ]
いわきが3-0で千葉に大勝し、クラブ史上初となるJ2"4連勝"を飾った。この日先発したMF山下優人は激しい球際の守備でクリーンシートに貢献し、攻めれば技術の高さを生かしたボールコントロールとパスでチームを支えた。
「(いままで)3連勝があったんですけど、4連勝はチームになかったので達成できたことがチームとしてまた成長できたと思います。でもこの連勝をあまり意識せずに、自分たちは常に目の前の1試合、1試合にチャレンジャーとして向かっていく姿勢が大事だと思います」と謙虚な姿勢で記録達成を喜んだ。
ここまで4連勝を飾ったいわきだが、前途多難の中断期間を過ごした。守備の要であるDF照山颯人が同じJ2のV・ファーレン長崎へ完全移籍し、JFL時代から攻守において貢献してきたMF嵯峨理久がJ2ファジアーノ岡山へ完全移籍するなど主力の流出が相次いだ。
それでもいわきはただで転ばない。新加入選手に同じ福島県内のライバルチームであるJ3福島ユナイテッドFCからDF堂鼻起暉(どうはな・かずき)を獲得し、照山の穴を埋めた。この日は9日にJ1のFC東京から育成型期限付き移籍で加入したFW熊田直紀が初出場するなど新加入選手が存在感を見せてた。
「(新加入選手は)チーム自体が若くて同じ年代、年齢が多いので、そういう面では(チームに)入りやすいのかなと思います。いなくなった選手はすごい穴というか大きいですけど、それを嘆いていてもしょうがないです。いまいるメンバーで戦っていかなきゃいけないという中で、しっかり日ごろから練習で厳しさを持ってみんなでやっていけていることが大事だと思っています」と背番号24は連勝の要因を考察した。
チームは勝点を43に伸ばし、J1昇格プレーオフ圏内6位のレノファ山口と1ポイント差と肉薄している状況だ。クラブ初のJ1昇格に向けて手が届く場所まで近づいてきている。
「プレーオフ昇格圏もありますけど、気を抜いたらすぐに自分たちもどんどん下の順位に行ってしまう。あまり慢心しすぎずに、また目の前の1試合に向かって戦っていくことが後の結果に繋がると思います。また来週も試合がやってきますけど、その試合に向けてチーム全員で精進していきたいと思います」
アマチュアクラブ時代からチームを支える生え抜きは、手堅く実直に励む振る舞いを貫いていた。
故郷での勝利に笑顔
中学時代は千葉のアカデミーで過ごした山下。中学卒業後は高校サッカー屈指の強豪である青森山田高へ進学。桐蔭横浜大を経て当時東北社会人1部リーグのいわきへ入団。千葉と対戦するまで険しい道を歩んできた男は憧れだったピッチの上で躍動し、故郷で白星を飾った。
「僕がジェフのアカデミーにいたとそんなに認知はないのかなという思いがあります(苦笑)。でも中学のときからボールボーイだったり、試合をこのフクアリで観ていました。そういうところでまた試合をしに帰ってこれたことは、すごく感慨深さがありますし、負けたくないなという思いがありました」と白い歯をこぼした。
いわきでは鉄人と呼ばれるほどの選手に成長し、2021年シーズンから2023年シーズンまでリーグ戦全試合に出場するなどチームの柱としてJFL、J3、J2昇格に貢献。いわきでたくましくなって故郷に凱旋した。
「いまもサッカー選手としてやっていけていることを、自分の仲のいい友達や家族に見せられることがすごく幸せなんだろうなと感じています。そういう面では(故郷で活躍を見せられて)良かったと思います」と胸を張った。
第25節ブラウブリッツ秋田戦でクラブ史上初となるJリーグ100試合出場を記録。アマチュア時代から中盤の核として泥臭く守り、堅実なプレーでチームを支えてきた。
「いわきFC自体がいまJ通算103試合ですかね。僕が102試合に出ているので、一緒に積み上げてきたのかなという思いがあります。このチームだけで100試合に出られたことは光栄です。感慨深いというか、チームと一緒に上がって、試合をできることが僕としてはすごく誇らしいです」と鉄人は穏やかな笑みを浮かべた。
千葉で生まれ育った背番号24は、ひた向きに努力を重ねて着実に歩みを進めてきた。故郷でチーム記録を達成したが、それは通過点に過ぎない。「いわき市を東北一の都市にする」という壮大なクラブビジョン達成に向けて、まずはいわきの鉄人がクラブ初のJ1初昇格へと導いてみせる。
(取材・文 高橋アオ)