
[J1第5節、ファジアーノ岡山 0-1浦和レッズ、3月8日、埼玉スタジアム2002]
クラブ史上初めて埼玉スタジアムに乗り込んだファジアーノ岡山だったが、浦和レッズに0-1で敗れて今季2敗目を喫した。
この試合、3-4-2-1のシャドーの一角で先発出場した元日本代表MF江坂任主将は、敵として埼玉スタジアムで浦和と向かい合った。
3季ぶりに埼玉スタジアムでプレー
2021年6月から2022年12月までの1年半、浦和に在籍した江坂は「(浦和に)所属してからアウェイのチームとしてくるのは初だったので、すごく楽しみな一戦でした」と、埼スタでの古巣対戦を心待ちにしていた。
同選手は浦和で公式戦53試合に出場して9ゴールを記録。1年半と短い在籍期間だったが、鮮烈なプレーの数々で浦和に勝点をもたらし、サポーターから愛される選手となった。
元チームメイトの浦和GK西川周作と抱擁を交わすMF江坂江坂にとっても浦和サポーターは特別な存在だ。
「自分が在籍したときもすごく(たくさんの)声援をもらっていました。 ACLだったり、アウェイですごく(多くの)サポーターの方が来てくれたので、やっぱり浦和は特別なクラブだったなと。きょうの応援を聞いて改めて思いました」と、浦和サポーターの熱狂的な応援を久しぶりに目の当たりにして、古巣への想いを馳せた。
3万5269人が詰めかけたスタジアムで、活躍する姿を見せたかった同選手だが、この日は本来の実力を発揮できなかった。
後半40分にDF立田悠悟の右サイドからのクロスを、ボックス内でトラップした江坂が右足でシュートを放つもゴールの左に外れた。

終盤の猛攻もあと一歩及ばなかった。試合終了のホイッスルが鳴り終わると、チームの今季2敗目に背番号8は肩を落とした。
試合後、両チームのサポーターから注目されていた岡山の主将は「もう少し自分も活躍したかったけど、なかなか(活躍)させてもらえなかった印象です」と唇を噛んだ。
苦境を糧に成長した韓国時代
2022年12月に浦和を退団した江坂は、韓国1部の強豪、蔚山現代FC(現蔚山HDFC)へ完全移籍。30歳となる節目の年に、新たな挑戦を決意した。
前年の2021年には日本代表に初招集されたJリーグ屈指の攻撃的MFの韓国移籍に、多くのファン・サポーターが驚いた。

2022シーズンのリーグ王者である蔚山に、鳴り物入りで入団した江坂だったが、同クラブでは左サイドハーフやボランチなど慣れないポジションでもプレーした。
もともとFWの後ろでチャンスメイクするプレーが得意だった同選手は、Jリーグで見せていた決定機を演出する天才的なパスセンスをなかなか披露することができず、一時は試合に出場できない時期も続いた。
当時を振り返った岡山の背番号8は「(試合の中で)本当に何も助けてくれないというか、自分でどうにかしないといけない場面がすごく多かった」と、在籍したJリーグのチームとは異なるサッカーへの適応に苦しんだと明かした。

それでも、「自分で考えながら、少ないチャンスをものにするところは、自分としても成長できた部分かなと思います」と、苦境を糧にして成長を実感した。
江坂の韓国での経験は、今季の岡山がより高い順位を目指すうえで重要な要素となる。
特にJ1初挑戦の岡山は今後、この日の試合のように押し込まれた状況から少ないチャンスをものにして勝点を積み上げていかなければならない。
同選手自身も「どの試合も我慢の時間帯と、自分たちの時間帯があるので、そこは自分たちのサッカーもできつつある。まだまだ経験の浅い選手も多い中で、そこは出せているのはいい部分かと思っていて、そのクオリティを、一つ、一つ上げていければと思います」とチームとしての手ごたえも口にした。

満席のホームでサポーターの期待に応えたい
岡山は次戦、3月16日午後2時にホームで川崎フロンターレと対戦する。
今季、本拠地のJFE晴れの国スタジアムでは、熱狂的でありながらも温かい岡山サポーターがスタジアムを満席にしてチームを後押ししている。
岡山の背番号8は「アウェイにもたくさんのサポーターが来てくれますし、ホームは毎試合ほぼ満席で(プレー)させてもらっています。
主将としてチームを牽引する立場となった江坂のさらなる活躍に期待だ。
(取材・文 Ryo、撮影 浅野凜太郎)