前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」

[第103回全国高校サッカー選手権、決勝、前橋育英高(群馬県代表)1-1(PK9-8)流通経済大学付属柏高(千葉県代表)、13日、東京・国立競技場]

決勝が行われ、前橋育英高がペナルティキック(PK)戦の末に流経大柏高を下して7大会ぶり2度目の栄冠に輝いた。決勝では同大会史上最多となる計20選手が蹴るPK戦となり、サドンデス突入の末に決着が着いた。

この日7人目のキッカーを務めたMF石井陽(はる、3年-前橋FC)主将は、これまで重要な局面で2度PKを外してきたが、3度目の正直となった今回は成功し、優勝に貢献した。

3度目の正直でPK成功

1-1で延長戦を終えてPK戦に突入し、6人目まで両校のキッカーが成功。互いに譲らない死闘の中、7人目に石井の番が回ってきた。駆け引きが下手だという背番号14は「きょうは触れられても勢いで入るくらいの強い球で蹴ろうと思っていた」と迷わずに右足を振り抜き、ゴール左側にシュートを突き刺した。

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PKを成功させて喜びを爆発させた石井主将

「愛工大名電戦で自分が外してチームに迷惑をかけて、あの反省から悔いなく蹴ろうと思っていました。自分が思った方向に力強く振り切ろうと思っていたので、それが入って良かったと思います」と白い歯をこぼした。

これまで重要な局面でPKを外してきたという背番号14は、夏のインターハイ群馬県予選準決勝・共愛学園高戦で2-2の末にPK戦となり、その際にシュートを外したという。さらに今大会2回戦の愛知工業大名電高との一戦(2-2)でもPK戦でファーストキッカーを託されたが、失敗していた。

3度目の正直となったPK戦。「5番以内には入らないだろうな(苦笑)」と7番目のキッカーを託されていたが、自身の順番まで回ってきた。

前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
果敢なドリブルを披露した石井主将(右)

これまで大事な場面でPKを失敗してきたキャプテンは「こういう場で蹴ることはなかなかないので、蹴りたいと思っていました。緊張より、楽しみでした」と強心臓の一言。

夏のインターハイ県予選でPK戦の末に敗退してから、練習後にPK特訓にも励んできたからこそ成功につながった。

「最後にこういう大舞台で決められたので良かったと思います」と笑顔で高校最後の大会を終えた。

キャプテンは大学サッカーの名門である明治大へ進学し、失敗から学んだ経験を糧にプロを目指して奮闘する。

大会を通じて成長したイレブンが栄冠

流経大柏高との死闘を終えた山田耕介監督は「きょうの試合はPK戦じゃないと勝てないと思っていた。とにかく我慢して耐えて、なんとか勝つことができて良かったと思います」と安堵(あんど)の表情を浮かべていた。

前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
前橋育英高・山田耕介監督

高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグEASTで両校は2度対戦し、1勝1敗と互角の結果だった。それでも前橋育英ホームで行われた第6節は0-2で敗れ、名将も「勝負にならなかった」と完敗を認めるほど圧倒された。

アウェイでは2-0で勝利するも、試合内容は流経大柏高が良かったという。「このチームに勝たないと『日本一にはならないんだな』と思ってやっていました」というように、格上と見ていた相手に肉薄する死闘の末に白星を手にした。

今大会は接戦続きだった。初戦の米子北高戦、準決勝の東福岡高戦は2点差で勝利するも、2回戦の愛知工業大名電高戦はPK戦に突入し、3回戦の帝京大可児高戦、準々決勝の堀越高戦は1点差と僅差で勝利を収めた。そして決勝では前半12分に失点を許し、同31分にMF柴野快仁(はやと、2年-ウイングスSC)が頭で同点弾を挙げて1-1にするも、延長戦で決着がつかなった。

それでも息もつけない連戦を通じてイレブンがたくましく成長し、決勝でも粘り強さを発揮して大会を制した。

前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
前橋育英高が7大会ぶり2度目の選手権制覇!3度目の正直でPK成功のMF石井陽主将「大舞台で決められたので良かった」
2度目の高校日本一に歓喜する前橋育英イレブン

「接戦ばかりだったんですけど、どんどん成長、進化していった。(相手の)力が上でも彼らは粘り強くやってくれたので上出来だと思います」

大事な局面でPKを外し続けながらも、大舞台でシュートを突き刺した石井主将を筆頭に、イレブンの成長に名将は目を細めていた。

7大会ぶりの栄冠を勝ち取った進化するイレブンは有終の美を飾った。夏のインターハイ県予選敗退を経験したタイガー軍団は失敗を糧に、高校日本一の粘り強さを身に付けて全国制覇を果たした。

(取材・文 浅野凜太郎、写真 Ryo)

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