ここからは細野氏の言葉を中心に、厚底シューズのメカニズムについて解説を進める。

速く走るためには斜め上方向への重心移動が必要

「走るという動作は『重心移動を連続して行う動作』です。歩きとの大きな違いは、重心移動の最中に両足が離れる瞬間があるということ。つまりバネのように弾む動きが必要になります。これは短距離でもランニングでも同じ。走りは体をバネのように使いながら前への推進力を得る運動なのです」

ここで問題になるのが、細野氏のいう「バネ」の方向。上に弾んだのでは前に進む力は得られず、前方に進もうとすると「バネ」の推進力が消えてしまう。

「まっすぐ前方(水平)ではなく、わずかに上方向に向かって跳ねる。斜め上に跳ねるように進むのが正解です。これは自然界にはかならず重力が発生しているから。ボールを投げると放物線を描いて飛んでいきますよね。あれと同じ原理で、前方に進むだけでは重力の影響で運動エネルギーが徐々に地面に向かって落ちて行ってしまうのです」

ヴェイパーフライは、このバネの方向を姿勢づくりから手助けしてくれている。

「ヴェイパーフライの一般向けシューズ、ズームフライが先行発売されてすぐにこのシューズを試着したのですが、前に軽く体重をかけるだけで重心が理想的な位置に来るのを体感しました。それまでは、かかとが沈み込まず、前足部に体重が乗りやすいシューズならどのシューズを履いても同じと思っていたのですが、ナイキの厚底シューズはまったく感覚が違いました」