12月20日に放送された『M-1グランプリ2020』(朝日放送制作・テレビ朝日系)は波乱の展開となった。特筆すべきなのは、ピン芸人の「おいでやす小田」と「こがけん」が組んだユニットコンビである「おいでやすこが」の躍進だろう。
大会史上初の決勝進出を果たし、最高得点でファイナルラウンドへ進出。審査員からは上沼恵美子ダウンタウン松本人志の2票を獲得し、準優勝を果たした。

 おいでやすこがの2人は『R-1グランプリ』(フジテレビ系)の決勝経験者。「R-1」が今年から芸歴10年位内に改められたため、出場資格を失い「M-1」に賭ける形となった。ネット上では「コンビ芸人に荒らされた『R-1』出身のピン芸人が逆に『M-1』引っ掻き回している」といった評価の声がある一方で、歌ネタへの特化は「漫才のスタイル壊しすぎ」といった否定的な声も聞かれ、賛否両論となっている。「やはり下積みを重ねてきた芸人に評価を与えるべき」といった声もあり、ユニット芸人の是非が問われていると言えるだろう。


 おいでやすこがは大会史上初の、決勝まで残ったユニット芸人だが、「M-1」全体を見ればそうしたコンビは少なくない。今年は彼ら以外にも、AKB48大家志津香と中西智代梨が「めんたい娘。」として出場し、福岡出身の方言を生かした漫才で1回戦を突破している。

 このほか、ジャニーズ事務所からも、昨年は3回戦までコマを進めた「つ~ゆ~」のほか、「おつゆ」も出場したが、ともに1回戦突破にとどまった。両コンビは4人グループのふぉ~ゆ~を2組に分けたものであり、実質的な「M-1」仕様コンビと言える。


 ただ、これらのコンビが決勝まで残るかと言えば、疑問符が付く。やはり、おいでやすこがは芸歴、実力ともに十分だったため勝ち上がったと言える。ルール上は、ベテラン芸人の片割れ同士がユニットを組んで出場も可能になってしまうため、今後は力のあるユニットコンビの取り扱いについては議論も起きそうだ。

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 ユニット、企画系コンビでは過去には誰が活躍してきたか。よく知られているところでは、2018年に出場した『ろくでなしBLUES』の森田まさのりさんと、『SHIORI EXPERIENCE』の長田悠幸さんが結成した、そのものズバリなコンビ「漫画家」が準々決勝まで進出。職業を生かした漫画ネタで会場を沸かせた。
にぎやかし的な存在に見えながらも、彼らはきちんと笑いに対するリスペクトが感じられると話題になった。

 同年の大会ではしゅんしゅんクリニックPが、大学の同級生の医師と組んだコンビ「しゅんしゅんクリニックPと循環器内科医」として出場し、3回戦まで進んだ。ネタではしゅんPのキレのあるダンスがメインであり、これはピン芸人が「M-1」に出るための急ごしらえユニットコンビだったと言えるだろう。

 さらに、TRFのものまねを専門とする「イージードゥダンサーズ」も、ピンやコンビの片割れが5人組として集まり、2017年から3年連続で3回戦まで進出。他にも、3人組の四千頭身や、6人組の超新塾が「M-1」には出場しており、出場芸人は2人である必要はないが、かなり個性派のグループだろう。

 何より、今回優勝を果たしたマヂカルラブリーも、変わり種漫才の一種とも言えるだけに、かつてよりは大会の裾野が広がっているとは言えそうだ。