米国のトランプ次期大統領は電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を新設される予定の「政府効率化省」のトップに任命した。マスク氏は中国政府との友好的な関係を維持してきた。
米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は11月16日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため訪問中のペルーの首都リマで首脳会談を行った。バイデン、習両氏の直接対談はこれが最後となるとみられる。
米誌ニューズウィークは「トランプ次期大統領がマスク氏を閣僚に指名したことで、次期政権は複雑な『事情』を抱えることとなった。今後の米中関係も見通しにくい状況だ」と報道。その理由としては「新政権の内部では対中政策に関して意見の激しい相違が見られる」を挙げた。
トランプ氏は対中タカ派のマルコ・ルビオ上院議員とマイク・ウォルツ下院議員を国務長官と大統領補佐官(国家安全保障担当)にそれぞれ指名した。トランプ氏は中国からの輸入品に60%の関税をかけ、メキシコで製造された中国メーカーのEVにも制裁措置を取ると主張している。
9月には8000億ドル(現レートで約125兆円)の対中貿易赤字に触れ、「関税は最も偉大な発明品だ」と述べてもいる。一方でテスラにとって、上海のギガファクトリーは生産台数の半分を担うドル箱であり、マスクの対中姿勢はトランプ氏とは大きく異なる。
「テスラとしても私としても関税を求めたことはない」。
マスク氏は2020年にポッドキャストで「中国は素晴らしい」と褒めたたえ、翌21年の中国共産党の創立100周年を祝って以降、一貫して中国当局に従順な態度を示している。
21年に中国当局がテスラに対し、28万5000台の自動車のリコールを求めた時も素直に応じたし、22年に新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)でテスラの上海工場が閉鎖された際もおとなしく従った。米カリフォルニア州で同じような流行対策が取られた際に「ファシスト」的だと激しく非難したのとは対照的だ。
今年4月、マスク氏は中国の李強首相と会談。李首相はテスラを米中の通商協力の成功例だと持ち上げた。こうしたことから、ニューズウィークは「一部の専門家からはマスク氏がかつてのヘンリー・キッシンジャー米国務長官に似た外交における仲介者の役割を果たす可能性があると指摘する声も出ている」とも伝えた。(編集/日向)