中国メディアの北京商報はこのほど、中国のウイスキー市場で輸入品が減少し、国産品が増加する現象が起きていると報じた。
記事は、北京市にある酒販売店では、マッカラン、ジャックダニエル、シーバスリーガル、ジョニーウォーカーといった著名な輸入ウイスキーブランドの販売が低迷し、大量の在庫を抱えず注文を受けてから手配する態勢をとっていると紹介。
そして、潮飲荟(上海)ブランド管理有限公司の殷凱氏が、この状況について中国の伝統文化や消費習慣の変化に要因があると指摘し、輸入ブランド各社が現地化によって消費者への接近を試みているとの見方を示したことを伝えた。また、ディアジオやペルノ・リカールなどが中国国内に工場を建設し、現地生産のウイスキーの販売を開始したものの、業績は伸び悩んでいると紹介。さらに、酒類マーケティング専門家の肖竹青(シャオ・ジューチン)氏が、購買力不足と消費低迷も輸入ウイスキー消費に影響を与えていると分析していると報じた。
一方で、国産ウイスキーのブランドと産地は急速に台頭しており、かねてより白酒(パイチュー)の主要生産地で、中国最大規模のウイスキー蒸留所がある四川省成都市の県級市である邛崍(きょうらい)市では3億元(約60億円)を投じた中国発のウイスキー観光体験センターが昨年11月にオープンしたほか、四川郎酒集団も子会社のウイスキーメーカーの資本を増額し、30年までに年間1万トンの原酒を製造できる蒸留所の建設を進めていると紹介した。
また、中国酒業協会が発表した「中国ウイスキー産業調査報告」では、24年の中国国内のウイスキー生産拠点建設プロジェクトは、23年の24件から45件に増加したことが明らかになったと伝え、酒類マーケティングの専門家である蔡学飛(ツァイ・シュエフェイ)氏は、「中国ウイスキーの現地化はすでに一定の規模に達しており、現在の中国ウイスキー市場の規模は約50億~80億元(約1000億~1600億円)。白酒に比べるとまだ小さいが、年間成長率は15%を下回らない。また、国産ウイスキーは価格競争力があり、今後の発展が期待できる」と展望したことを伝えた。
記事は、輸入ウイスキーが減少し、国産品が増加する状況の中、市場規模は拡大を続けており、現在の中国ウイスキー市場規模は出荷額ベースで70億~80億元(約1400億~1600億円)、小売市場規模は150億元(約3000億円)に達したと紹介。特に中国国内の生産能力が顕著に高まっていると伝える一方で、すでに国内ウイスキー市場における在庫の積み上がりという潜在的な懸念の兆候が見え始めていると指摘し、一部スーパーでは製造日が昨年上半期や一昨年のものがなおも売り場に並んでいるとした。
その上で、中国酒業協会ウイスキー専門委員会の元月(ユエン・ユエ)事務局長が「企業は消費者のニーズ、消費シーン、文化的要素、そして国産サプライチェーン、研究開発、人材育成など、さまざまな角度から現地化の方向性を模索する必要がある」と指摘したことを伝えている。(編集・翻訳/川尻)