米テキサス州で州政府が国家安全保障上の脅威と見なす中国など「敵対国」の市民による不動産購入を禁止する法案の成立を目指している、とAFP通信が報じた。反対派はこの措置に対し、少数派に対する差別を助長すると抗議している。

AFP通信によると、テキサス州の法案「SB17」は中国人富豪の孫広信氏が州内に大規模な風力発電所を建設するのを阻止するために提出された。2023年に一度不成立となったが、反移民・反中国を掲げるドナルド・トランプ大統領の政権復帰以降、共和党主導の同州で再び法制化の動きが活発化。9日に州下院を通過した。

不動産購入を禁止する国籍の対象には中国、イラン、北朝鮮、ロシアが含まれている。さらに最近の修正でトランプ大統領の盟友であるグレッグ・アボット州知事に新たな国を対象に加える裁量が与えられた

法案を提出した共和党のコール・ヘフナー州下院議員は「敵対的な国や抑圧的な政権から、テキサスの土地と天然資源を守るための措置だ」と主張した。

この法案に反対し、10日には州都オースティンで数百人規模の抗議デモが行われた。 テキサス州のアジア・太平洋系住民の支援団体「アジアン・テキサンズ・フォー・ジャスティス」の共同創設者アリス・イー氏は「出自や出身国を理由に特定の人々を標的とする法律を作るなら、それは人種差別だ。これは人種差別的な法案だ。ここは私たちの国でもある」と訴えた。

米国の国勢調査によると、23年時点でテキサス州の人口3130万人のうち約6%に当たる170万人がアジア系。州内で最も急成長している人種グループとなっている。

米国と中国の間で政治的・経済的緊張が高まる中、米国では複数の州で、中国人による土地所有を禁止する同様の法案が提出されている。

ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)は昨年4月末、中国など特定の非居住外国人や事業体による土地の所有権の取得を一部禁止するために、同州公示法典(OCGA)を改正する法案(SB 420)に署名。7月1日に施行された。これにより、非居住外国人などは直接、間接を問わず、農地または軍事基地、軍事施設、軍事空港の半径10マイル(約16キロ)以内の土地の所有権を取得することが禁止された。

ケンプ知事は法律の目的を「国家安全保障のため」と説明。「食糧供給のように、われわれの生存に不可欠なものを外国の敵対勢力に支配させるわけにはいかない」と述べた。(編集/日向)

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