中国と東南アジアを結ぶ「汎アジア鉄道」は構想が発表されてから30年が経過したが、いまだに実現していない。香港メディアの亜洲週刊はこのほど、技術面の問題よりも関連各国の「政策の壁」を取り除くことが進んでいないことが原因と指摘する論説を発表した。
マレーシアのマハティール首相(当時)が1995年に「汎アジア鉄道」の構想を発表してから、すでに30年が経過した。しかし同構想は今も実現していない。技術面の問題もあるが、より大きな障害は各国の「政策の壁」だ。汎アジア鉄道の実現には、国家間の信頼と互恵精神の欠如という壁を打ち壊す必要がある。
たとえば、タイはマレーシアの一部製品について鉄道による越境通過を認めておらず、自国内を通過するだけの場合にも規制を設けている。このことが貨物輸送における越境鉄道の効果を大きく制限している。マレーシアのアンソニー・ローク運輸相は、マレーシアとタイは鉄道でいずれもメーターゲージを採用しており、技術面では相互乗り入れが可能だが、政策面の障壁、たとえば貨物の種類に関する制限や通関手続きの調整などを取り除く必要があると述べた。
ローク運輸相はさらに、現在の世界情勢は不確実性に満ちており、サプライチェーンの分断リスクが高まっているため、安定した地域の鉄道ネットワークの構築が食料安全保障や商品流通にとって極めて重要と述べ、マレーシアは地理の強みを生かし鉄道網によって中国、ラオス、タイなどと接続し、アジア大陸を結ぶ重要な結節点、そして陸路と海運のハブとなる必要があると主張した。

中国も、自国と東南アジアを結ぶ鉄道網の建設に熱心だ。習近平国家主席は最近、ベトナム、マレーシア、カンボジアの3カ国を訪問し、相互接続の強化を強調した。
中国はベトナムおよびマレーシアで鉄道建設計画を進めている。中越両国は越境鉄道の協力を推進し、中国側が融資して両国を結ぶ2本の新たな鉄道を建設することで合意した。
また、急ピッチで工事が進められているマレーシア東海岸鉄道は、中国側が全長665キロメートルの建設を担当し、2027年1月の営業開始を目指している。同鉄道はマレーシア東海岸の経済発展を大きく促進することが期待されている。将来は東海岸鉄道をタイの鉄道と接続し、複数の国を結ぶ鉄道路線にする構想だ。(翻訳・編集/如月隼人)