中国メディアの環球時報はこのほど、自民党の総裁選を紹介する記事を発表した。5候補を巡る状況だけでなく、過去を振り返った上で、日本では首相が「走馬灯」のように交代する状態が続いており、だれが首相になっても「毒まんじゅう」を食べることになるとする論評なども紹介した。

記事は、「自民党が参議院と衆議院の両院で少数与党に転落しているため、新総裁が必ずしも日本の首相に就任できるとは限らず、野党の支持を得る必要がある」と指摘し、日本では、日本が「多党化時代」に突入したとの報道があると紹介した。

その上で、日本では1955年、自由党と民主党が合併して自民党が設立され、安定した派閥政治と経済の高度成長を背景に、その後約40年間にわたり政権を維持し、日本の政界は「一党優位」の構図になったと説明。さらに、1993年の衆議院選挙では、自民党がリクルート汚職事件などの影響を受けて多数の議席を失い、日本新党、社会党、公明党など8党が連立内閣を組織したが、1994年には、連立政権が内部対立により崩壊し、自民党が政権に復帰したと紹介した。

また、2003年には自民党と公明党が連立政権を組み、この協力体制は現在も続いているが、09年の衆議院選挙で民主党が大勝し、自民党の長期政権を終わらせ、初めて真の意味での「政権交代」が実現したことに触れた上で、鳩山由紀夫内閣(09年~10年)や菅直人内閣(10年~11年)などは、政策調整や震災後の対応において力不足であり、党内の分裂も重なって、民主党の支持率は急落し、12年には安倍晋三氏が自民党を率いて政権を奪還し、以後約8年間にわたり政権を担い、「アベノミクス」を推進し、自民党の優位を再び固めたと紹介した。

しかし、安倍首相が退陣してからは、自民党は今回を含めて5年間で総裁が4回も交代することになった。記事は、日本経済新聞の記事を引用して、「かねてより安倍晋三氏と対立してきた石破茂氏は結局、『ポスト安倍時代』の枠組みを築くことができなかった」と紹介した。

記事はさらに、「ポスト安倍時代」の日本の状況として、社会の基盤や有権者の意識に新たな変化が現れていると指摘し、「経済の停滞に少子高齢化が重なり、国民の実質所得が減少する状況で、人々は従来型の政党の統治能力に疑問を抱くようになり、新興政党の台頭にとって肥沃な土壌が生まれた。円安の状況下で、外国人観光客の消費と日本人の生活のへ圧力との対比が、『日本人優先』の排外的感情を生み出し、一部の有権者が極右的な主張に共鳴するようになった。同時に、自民党は長期政権の中で発生した汚職スキャンダルで国民の信頼を失い、若い有権者は『革新』の姿勢を打ち出し、草の根の動員力を持つ新興政党へと傾いている」と論じた。

記事はまた、日本の現状で首相に就任することは「毒まんじゅう」を食べるようなものと表現した。その根本的な原因としては、「日本では政権運営面で、実質的に自民党しか存在せず、政治的な競争は政党間ではなく、自民党内で展開される。だれかが総裁に選ばれても、すぐに他の誰かが権力を争い始めるという構図だからだ」と分析した。

そして、このところ首相任期が短期化していることについては、日本人自身も懸念していると論評し、「第2期安倍政権が7年8カ月続いた後、菅義偉首相の任期は約1年、岸田文雄首相は約3年、石破茂首相は1年にも満たなかった」と紹介した。

記事によると、ある日本人記者は、米国のオバマ元大統領は8年間の任期中に5人の日本の首相と接触したと指摘し、「当時は海外で日本の首相の名前すら正確に覚えられていなかった」と述べた。ワシントンに駐在していたこの記者は不安を感じたという。

この記者はさらに、現在の国際情勢は当時以上に、「日本の首相が走馬灯のように交代することが許されるような状況ではない」「トランプ大統領のホワイトハウス復帰によって引き起こされた国際秩序の混乱の中で、日本は多くの重要な選択を迫られている」と述べたという。(翻訳・編集/如月隼人)

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