2025年10月21日、仏国際放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、新たに誕生した高市早苗首相がさまざまな試練に直面しているとし、その理由について解説する記事を掲載した。

記事は、高市氏が21日に国会での指名を受けて日本初の女性首相に就任したと紹介。

直近の衆参両院選挙で単独過半数を失った自民党が改革派の中道右派政党・日本維新の会と連立を組んだ上での政権誕生となったものの、この連立も衆議院の過半数に当たる233議席に2議席足りないことから、法案成立には他党との協力が不可欠という状況下での新政権の船出になったことを伝えた。

その上で、高市新政権が今後直面する試練について言及。まず来週韓国で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議での米国、中国、韓国など各国首脳との会談を挙げ、米国についてはトランプ大統領が求めるであろう防衛費のGDP比2%以上への引き上げにどう応じるかが注目されるとした。

また、自ら「対中強硬派」を標榜し、日米同盟を最重要視する姿勢を明確にしている高市首相にとって最大の課題は対中関係であると指摘。戦犯を祭る靖国神社への参拝を繰り返してきたことに加え、台湾問題では師と仰ぐ安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」という立場を支持し、今年4月の台北訪問時には、日本、台湾、欧州、オーストラリア、インドによる「準安全同盟」構築を提唱したことを懸念材料に挙げた。

一方で、高市氏が近ごろ、靖国神社に関する発言を控えめにしていることもあり、中国政府は21日の高市政権発足を受けて「歴史問題や台湾問題などの重要課題における政治的約束を日本が守ることが前提」としつつ、日中関係を前進させる意向を示していると伝えた。

さらに、韓国との関係も微妙であり、経済・外交関係を強化するために高市首相の民族主義的立場に妥協すれば国内からの厳しい批判にさらされかねない李在明(イ・ジェミョン)大統領との会談にも注目が集まるとし、高市首相の対応次第では日本が孤立する事態も懸念されるとの見方を示した。

記事はこのほか、政治的イメージと実際の政治姿勢の乖離として、女性閣僚の多い内閣を組閣すると約束していたにもかかわらず、新内閣の女性閣僚はわずか2名にとどまったことを指摘。また、女性天皇を認めず、保守的な家族観を擁護し、同性婚や夫婦別姓に反対するなど高市首相はジェンダー平等問題では保守的であり、女性初の首相就任は「実際には女性の政治的勝利とは無関係であり、むしろ日本のジェンダー不平等を悪化させる可能性さえある」と評した。

また、さらなる大きな課題として、深刻な少子高齢化とインフレに直面する中で国民の政府への信頼回復と経済成長の再活性化を挙げ、国家安全保障、エネルギー自給、サプライチェーン保護を基盤とする経済政策を打ち出す姿勢を示しているものの容易ではないとした。特に移民問題では、国内の反移民感情に呼応する強硬姿勢を示しているものの、外国人労働力が不可欠という事実の中で難しい調整を迫られることになると伝えた。(編集・翻訳/川尻)

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