「鉄路12306」に現れた緑の「寵」マーク。都市間移動において、中国の高速鉄道がペット輸送の需要に制度で応え始めたシグナルだ。

対象は飼い猫・飼い犬で、体重15kg以下、肩高40cm以下。乗車券購入者は最大2匹まで預けられ、無人での単独輸送は1匹まで(地域・時期で運用差の可能性あり)。同一列車・別車両の貨物扱い、乗車券購入後に事前申請・審査という運用で、10月末時点で40駅、50本、4757件に拡大した。「公共性の確保」と「伸びる市場を取り込む」という極めて中国的な設計思想が見て取れる。

ペット飼育世帯の増加で関連消費は拡大する。だが長距離移動は航空(受託・貨物)か自動車に偏っていた。高速鉄道は静粛性・衛生の要請が高く、客室への持ち込みは制度上難しい。結果として「行きたいが連れて行けない」が発生し、市場の拡大を阻害していた。今回の制度は貨物扱い輸送で活路を開く。ここに「公共性と個別ニーズの両立」という発想転換がある。

中国高速鉄道がペット輸送を本格化、日本との違いは?

この取り組みについて、中国中央テレビ(CCTV)をはじめとする主要メディアが相次いで報道。「付き添いなしでのペット輸送」という新しい運用形態がペット飼育世帯の関心を集めている。

4月に京滬線(北京-上海線)の5駅・10本で試行開始。秋までに累計4757件を取り扱い、現在は約50本で運用される。需要は北京-上海・杭州・南京や深セン-長沙などのビジネス・転居動線に集中する。報道ベースでは対応駅は40駅規模に拡大。これは需要を見ながら「空き枠」で運用を調整し、段階的に定着させる段階にあることを意味する。

日本と中国の違いは数値より制度の目的にある。日本は「隣席の快適性を損ねない最小限の同伴」を許容する。一方、中国は「公共性(衛生・安全)を守りつつ需要を取り込む」ために、貨物扱いに位置付ける。結果として、中型域(~15kg)までを鉄道でカバーできる。これは市場を育てる制度になっているといえる。

中国高速鉄道がペット輸送を本格化、日本との違いは?

鉄道がペット輸送を制度化することは、消費支出の場が広がるということだ。ペットツーリズム、長期出張の帯同、引越し需要のほか、周辺にはホテル、清掃、保険、ケア用品がある。

今は空き枠管理の試行拡張だが、駅設備、温度管理、ハンドリングの標準作業手順(SOP)が整えば、恒常化と収益化は十分に見える。重要なのは「公共性を損なわずに市場を伸ばす」という設計思想を堅持することだ。

制度は設計思想の表れだ。日本は「最小限の持込」で公共空間の秩序を守る。中国は「貨物扱い」で公共性を維持しながら、新しい需要を制度に引き込む。この差は、そのまま市場の創出速度の差になる。ペット移動は小さな話題に見えるが、公共交通と個人消費の接続を巡る重要なテーマだ。(提供/邦人NAVI-WeChat公式アカウント・編集/耕雲)

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