2025年11月30日、シンガポールメディア・聯合早報は、高市早苗首相の「台湾有事」発言に猛反発している中国が、米国からの圧力がない状態で日本への「攻撃」を強めていると報じた。

記事は、高市首相が11月7日に行った「台湾有事」関連発言について近ごろ釈明を行っているものの、中国は日本への世論戦や制裁を継続していると紹介。

中国共産党中央軍事委員会の機関紙「解放時報」が30日、高市氏の「立場は変わっていない」「今後言及しない」といった釈明は通用しないとする文章を発表したほか、呉江浩(ウー・ジアンハオ)駐日中国大使も人民日報上で、日本にとって唯一の正しいやり方は「直ちに誤った言論を撤回することだ」と主張したことを伝えた。

また、中国による圧力は文化・観光分野での制裁にまで拡大し、日本映画の公開撤回や延期に続き、歌手の大槻マキの公演の中断、浜崎あゆみのコンサート開催前日の中止、アニメ「美少女戦士セーラームーン」ミュージカルの中国巡回公演の全体キャンセルなどが報じられたほか、中国政府による渡航見直し要求の影響で、中国発日本行きの航空券予約、中国人客による日本のホテル予約で数多くのキャンセルが発生していると紹介した。

記事は、高市首相がサンフランシスコ講和条約を根拠として日本が台湾に関するすべての権利・権限を放棄したと説明していることについて、上海交通大学の鄭志華(ジョン・ジーホア)副教授が「中国はこの条約の交渉に参加しておらず、この条約に基づいた戦後秩序の取り決めは受け入れない」と述べ、中国から見れば「台湾地位未定論」を主張しているに等しいと解説し、中国側はあくまで日本が「四つの政治文書」に立ち戻ることを求めているとの見解を示したことを伝えた。

鄭副教授はさらに、今回の日中対立が日米同盟に絡まないところで発生し、米国による対中圧力がないと指摘。このため、中国はこの「機会」を捉えて日本に痛烈な打撃を与えようとしていると分析した。一方で、文化分野での過度な政治化は中国国内世論からの反発や国際社会からの懸念の声を増幅させるリスクもあるとし、「大国として強力な制裁ができるとはいえ、権威を振りかざして無謀な制裁に出れば、外交政策におけるスマートさを失うことになる」と指摘した。(編集・翻訳/川尻)

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