中国人ジャーナリストの胡錫進氏はこのほど、米国の報道を引用するなどで、トランプ米大統領には従来のG7とは異なる、新たな主要国枠組みの「コア5(C5)」を設立する構想があると紹介する文章を発表した。C5に含まれるのは米国、中国、ロシア、インド、日本という。

C5について最初に報道したのは米国メディアで政治情報を扱うポリティコと防衛情報を扱うディフェンス・ワンだった。C5は欧州の国を完全に排除していることで、欧州にもたらされた衝撃は特に強烈だったという。

ポリティコは、第2次トランプ政権として初めて、5日に発表された「国家安全保障戦略」(NSS)には、もう一つの非公開の完全版があり、C5の主張はこの機密版に記載されていると報じた。米国政府は、NSSにはいかなる追加バージョンも存在しないと否定した。しかしC5についてはさまざまな見解が飛び交うことになった。

ポリティコはC5を「奇想天外」と評した上で、バイデン政権時代に国家安全保障会議の欧州担当部長を務めたトーリー・タウシグ氏による「これは確かにトランプ氏の姿勢、すなわち非イデオロギー化、強権指導者への接近、地域で勢力圏を持つ大国との協力への傾倒がある」といった見方を示した。

ポリティコはさらに、C5の構想は、トランプ政権にとっての対中政策の大きな転換を意味すると論評する、別の評論家の見方を示した。第1期トランプ政権では、中国を競争相手あるいは敵対者と認識し、米中関係を対立軸でとらえていたが、C5には、中国を地政学上の重要な協力国として引き込む意図が見られるという。

ディフェンス・ワンは、トランプ大統領の「強者とは手を組んだ方がよい」という傾向について、トランプ大統領がロシアがG8から締め出されたことについて、「非常に大きな間違い」だと述べたと指摘した。

また、NSSの「完全版」には、「覇権の追及は誤っている。達成不可能だ」「すべての責任を米国が単独で負うべきではない」と書かれているが、「公開版」からは削除されている。

胡錫進氏は、メディアに暴露されたNSSについて、「執筆過程における中間バージョンである可能性がある」との推測を示した。

胡氏は「最終的にまとめられなかったため非公開だが、それはトランプ氏の真意を反映しており、トランプ氏のチームの実際の行動の中で時として具体化される可能性がある」との見方を示し、さらに「米国はロシアとウクライナ紛争を巡り、ウクライナの利益を犠牲にしてモスクワに対して何度も譲歩していることが、その重要な具体例の一つだ」と論じた。

CNNはNSSについて、中国への言及が極めて少ないとする専門家の指摘を紹介した。全33ページの中で、中国は19ページ目でようやく言及される。バイデン政権が2022年に発表したNSSは、全48ページの中で中国に繰り返し言及した。

米国の主要な外交政策シンクタンクである外交問題評議会でアジア問題を専門とするデビット・サックス研究員は、「特に注目すべきは、この文書にはイデオロギーの対比が完全に欠落しており、人権問題への言及もないことだ」と指摘した。以前のNSSでは人権などの問題が大きく扱われており、例えばバイデン政権は新疆とチベット問題を重点的に強調した。サックス研究員は「もしかすると、最近の貿易戦争で意外にも米国が面目を失い、米国政府が中国に対する見方を変えたのかもしれない」との考えを示した。

サックス研究員はさらに、「我々はここ数カ月間、米中両国にある程度の相互依存が出現しているのを目撃してきた。両国とも経済分野で相手に重大な損害を与える可能性がある」と述べた。

また、新しいNSSは台湾問題について以前よりも多く言及しており、台湾をめぐる衝突を抑止するための強大な軍事力を保有していることを強調したが、一方では、かつては「いかなる類似の変更にも反対する」と、「反対」の語を使ったのに対して、今回のNSSは「一方的な台湾海峡の現状の変更を支持しない」など、表現をやわらげた。

胡氏は、「トランプ大統領がC5を正式に提起するかどうかはそれほど重要ではない、トランプ大統領が提起しても、中国がそれを受け入れて参加するかどうかは疑わしい」との考えを示した。なぜなら、「世界は間違いなく変革の中にあり、中国の全面的な台頭がこの変化の最大の原動力の一つだ」という事実があり、世界が「台頭した中国」を認め、尊重せざるをえなくなることは確実で、違いは早いか遅いかしかないという。

胡氏は最後に、中国は今後、C5構想の進展があっても冷静さを保つべきであり、中国がやるべきことは国内統治でのさまざまな課題を解決し、発展の潜在力を最大限に引き出し、同時に国内の団結を固めることと主張した。(翻訳・編集/如月隼人)

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