台湾メディアの中時新聞網は17日付で、カナダのカーニー首相の訪中に注目し、米国のトランプ大統領の「覇権主義」の影響で西側諸国の同盟関係が緩みつつあると指摘する社説を発表した。以下は、その主要部分を再構成した文章だ。
カーニー首相はトルドー前首相の失敗を鑑みて政策転換
米国の同盟国の指導者の訪中のうち、カナダのカーニー首相の訪中は最も象徴的な意味を持つ。カナダは米国が主導する機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」の一員であり、G7メンバーでもあり、さらには米国の北の隣国だ。カナダが対中関係を「雪解け」に向かわせたことは、西側諸国の対中政策が実務的な方向へ転換したことを反映している。
中国とカナダの関係は過去数年間、イデオロギーと米国の介入の影響を受け、大きく後退した。2018年にはカナダ当局が米国の要請に応じて、航空便の乗り換えのためにカナダの空港に立ち寄った孟晩舟氏を逮捕した。孟氏は華為技術の創業者である任正非最高責任者(CEO)の娘で、同社の最高財務責任者(CFO)だ。中国側は直ちに麻薬密売の名目でカナダ人2人を逮捕した。この応酬により、カナダと中国の関係は急速に悪化した。カナダはその後、米国に追随して中国製の電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に差別的な関税を課し、中国は対抗措置としてカナダ産の農産物に制裁を科したため、両国間の貿易関係は深刻な打撃を受けた。
カナダのトルドー前首相が退陣に追い込まれた原因には、中国との関係悪化も一因となった景気の低迷や、トランプ米大統領による高関税率の問題への対応が不首尾だったことなどがあった。後任のカーニー首相は金融分野に精通しており、米国の要求を不当として強硬に対応し、一方では経済政策をより実務的に調整してリスクの分散を図った。このような背景の中で対中路線の調整が始まり、中国側もカナダの政策転換を好機として関係の改善を図った。
カナダ経済は長期にわたり、米国市場に強く依存しており、カナダの輸出の7割以上が米国向けだ。特にエネルギー輸出の価格決定権は米国側に握られ、自動車製造業も米国と深く結びついている。トランプ政権がことあるごとに関税で脅し、さらにはカナダを米国の51番目の州にすると発言したことで、カナダ政府は主権と利益の二重の圧力を痛感した。
カーニー首相の訪中はカナダが外交の自主性を求め、市場を分散させる重要な試みだった。カーニー首相の訪中期間中に、両国は経済貿易合同委員会メカニズムを再開させ、農産物への差別的関税の撤廃や自由貿易協定の研究の推進などで合意に達した。このことはカナダが米国への経済依存度を下げるのに役立つだけでなく、北米の産業チェーンにおける交渉力を高めることにもつながる。
米国の覇権主義に直面した西側諸国が方針転換
トランプ米政権は2025年末に国家安全保障戦略報告書を発表し、モンロー主義への回帰を鮮明にした。26年年初のベネズエラに対する軍事行動は、西半球における覇権を守るための米国の決心が、もはや手段を選ばないものであることを証明した。トランプ大統領が、軍事手段の使用も辞さずにグリーンランドを手に入れると再三表明したことで、カナダ人は改めて警戒心を抱くようになった。
米国がベネズエラの石油生産権を取得したことで、カナダのエネルギー輸出に大きな圧力がかかることになった。なぜならば、ベネズエラの原油とカナダで生産される原油は同じ重質原油に属するからだ。カナダは毎日約400万バレルの原油を米国に輸出している。カナダ産原油は主にメキシコ湾岸の製油所で加工されている。ベネズエラの石油が米国に流れ込めば、長距離を輸送されるカナダ産原油は競争力が大きく落ち込み、石油生産に依存する同国のアルバータ州の税収に深刻な打撃を与える。
経済の大きな危機に直面するアルバータ州では独立運動が再燃した。すなわち、米国と中国のはざまに置かれたカナダは、かじ取りを間違えると国家の統合の危機に直面しかねない。カーニー首相にとって、今回の訪中でエネルギー市場を拡張できるかどうかは非常に重要だった。台湾を訪問していた与党籍の2人の下院議員が、予定を早めて切り上げるよう「アドバイスされた」ことにも、カーニー首相の中国での交渉の「リスク要因」を除去する考えがあったとの見方がある。
カーニー首相の訪中は、西側諸国の対中政策が理性を取り戻したことを裏付ける。25年年以来、ドイツのショルツ前首相やオーストラリアのアルバニージー首相か、フランスのマクロン大統領など、西側諸国の指導者が次々に訪中した。このことは、西側諸国が「中国切り離し」のコストが極めて高いことをますます意識するようになったことを意味する。これらの国々と比べるとカナダは一歩遅れており、まさに急いで追い上げようとしているところだ。カーニー首相の訪中は、多極化する世界において、「陣営の対抗」がふさわしくないことを証明した。G7から北欧に至るまで、米国が戦後に作り上げた政治、経済、軍事の全方位的同盟は、すでにぐらついている。(翻訳・編集/如月隼人)
The Canada-China relationship has been distant and uncertain for nearly a decade.
— Mark Carney (@MarkJCarney) January 17, 2026
We’re changing that, with a new strategic partnership that benefits the people of both our nations. pic.twitter.com/2Geqt7Zf1d











