ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が24日から27日まで中国を訪問する。カナダ、英国などに続く西側主要国家の首脳の訪中であり、メルツ首相は自国経済の立て直しのため、中国との関係構築で経済面でのチャンスを得たいと望んでいるとされる。
メルツ首相が訪中の説明で米国を批判
メルツ首相の訪中には、ドイツ首相の訪中としてはメルケル元首相(在任:2005-21年)以来の最大規模の財界代表団が同行する。同行する企業人は約30人に及ぶ。ショルツ前首相は在任期間の2021-25年に2回訪中したが、同行した企業代表はいずれも12社にとどまった。
メルツ首相は18日、訪中についての説明で、「中国と戦略的パートナー関係を築く」と述べた。メルツ首相は「(ドイツは)志を同じくし、手を携えて未来を共創する準備ができているパートナーを探す必要がある」と述べ、さらに、トランプ米政権の関税措置については「もし米国人が関税によって全世界に影響力を及ぼそうと考えるなら……それは彼らの選択だが、我々の政策ではない」と表明した。
トランプ米大統領が全世界に対して貿易と関税戦を仕掛け、今後の予測がますます困難になるにつれ、伝統的な同盟国は相次いで中国などの貿易相手との交流強化を模索するようになった。過去3カ月以内に、フランスのマクロン大統領、カナダのカーニー首相、英国のスターマー首相が相次いで訪中した。
中国との経済関係で利益求めるが戦略上の立場は不変
メルツ首相は他の西側首脳に追随することになったが、米国から完全に離れて中国と手を握ろうとしているわけではない。先ごろ開催されたミュンヘン安全保障会議では「ルールに基づいた世界秩序はもはや存在しない」と述べる一方で、米国に向けて英語を用いて、「強権が対抗する時代において、米国といえども単独で戦い抜けるほど強くはない。親愛なる友人よ、(米国が)NATOの一員であることは欧州の強みであるだけでなく、米国の強みでもある。共に大西洋を越えた相互信頼を修復しよう」と呼び掛けた。
ドイツのシンクタンクであるメルカトル中国研究センター(Merics、メリックス)のフオタリ所長は20日のオンライン座談会で、現在のドイツ政府は「かなり巧妙な実務主義」を採用しており、数年前とは大きく異なると指摘した。
フオタリ所長は、ドイツの指導層は安全保障問題において中国に対し強硬な立場を取っており、同時にそのことが経済の問題と切り離して処理されることを望んでいると説明した。しかし、本当に両者の間でバランスを見いだせるかは断言しがたい。メルツ首相は今回の訪問で、中国側といくつかの協力覚書を締結し、両国の企業もいくつかの合意に達する可能性があるが、全体として見れば、ドイツは「この段階で具体的な成果を出すことを、必ずしも目標としていない」という。
ウクライナ問題について中国の影響力行使を希望
ドイツのクリンクバイル財務相とバデフル外相は2025年末に相次いで北京を訪問し、ドイツの対中貿易赤字や中国のレアアース輸出規制、ロシア・ウクライナ戦争における中国のロシアへの支援などについて中国側と議論したが、いずれも大きな「突破口」を得るには至らなかった。
ドイツからすれば、中国は最大の貿易相手であり、重要な市場でもある。ドイツの自動車メーカーにとっては特にそうだ。しかし、近年ではドイツ車の中国市場でのシェアは下落しており、ドイツ国内では中国の「過剰生産能力」に対する懸念もますます大きくなった。
レアアース問題も注目の的だ。中国が2025年10月に史上最も厳格なレアアース輸出規制を実施したことに伴い、ドイツでは中国のレアアースに強く依存する自動車、化学、製薬などの企業で深刻な影響が発生した。中国政府は同年11月に制限を緩和する可能性を示唆したが、ドイツ企業の不満の声は収まっていない。
また、ウクライナにとって欧州最大の経済と軍事の支援国であるドイツは、中国がロシアとウクライナに対して停戦を説得することを望んでいる。しかし中国は積極的な行動を起こしていない。
中国は国際的パートナーの存在を誇示か
ドイツにとっての懸念点は、中国に提供できる「誘因」が、中国に重大な譲歩を促すには不足している可能性があることだ。米国のシンクタンクであるローディアム・グループは最近になり、「中国はもはやドイツの商品を欲していない」との見方を示した。マルベツキ講師は、「中国にとって、産業でのドイツによる投入(工業用中間財や基幹部品、技術の提供)をかつてほど必要としていない」「全体として、情勢は中国にとってより有利な方向へ転じているようだ」と述べた。
メリックスのフオタリ所長は、メルツ首相の訪中によってドイツはリスクの低減分よりも、さらに大きなリスクを負う可能性があるとの考えを示した。フオタリ所長は、ドイツ側は「今回の1度の訪中で良い成果を得た」と満足するかもしれないが、中国はドイツ首相の訪中による国際世論の誘導で勝利を収める可能性があると述べた。「中国は必ず、共同声明を利用して、中国にはパートナーがおり、友人がおり、一連の国際的な友人の訪問があり、さらにはドイツ人さえいることを世界に示そうとする。このことは結果として、米国がますます孤立していると見せることになる」との考えを示した。
メリックスのシニア・アナリストであるザイヴァート氏は、中国の当局関係者やシンクタンクの最近の発言や記述を改めて分析した結果として、中国はメルツ首相の訪中を「欧州のパートナーの問題に対する解決の鍵になる」と見なしていると指摘した。中国はメルツ首相を「極めて現実的で業界志向の人物」と見なしており、メルツ首相が中国との関係構築がドイツにとって有利と認識することを期待しているという。
ヘルムート・シュミット大学のメッシンシュラーガー研究員は、「中国政府にとってドイツが特殊なのは、ドイツがEUの産業の中核であり、かつEUの貿易や防衛、技術審査、テクノロジー政策の領域で決定的な発言権を持っているからだ」と説明した。もしドイツがEU全体の封じ込め戦略の突破口になれば、中国当局の目には「象徴的な勝利」と映ることになるという。











