香港誌の亜洲週刊はこのほど、中国における人工知能(AI)の軍事作戦への応用を紹介する記事を発表した。作戦行動への投入だけでなく、AIを軍事利用する能力のあるなしで、発言力や威嚇力に大いに差が出るという。
深センのあるAI開発企業は2025年、軍事関連での意思決定をするAIの大規模言語モデル(LLM)を発表した。この企業は、自社のLLMは戦闘指揮、無人兵器群の協同行動、戦略シミュレーションなど70以上の軍事応用で利用が可能と説明した。同社はまた、作戦シミュレーション推論システムを開発し、「未来から戦争を学ぶ」ことを実現したと表明した。
専門家からは、中国軍はAIを認知電子戦(AIを利用して敵の通信を妨害したりかく乱する戦法、CEW)、無人戦車やロボット犬による都市での掃討戦に用いるとの指摘が出ている。また、極超音速兵器などの精密誘導ミサイルにAIを結合させ、政治や軍事での指導者の、時々刻々と居場所を変える目標を「瞬殺」することを狙っているという。このことは、前線の抵抗を回避して指揮中枢を直撃し、「発見―意思決定―打撃」の連鎖を分単位あるいは秒単位まで圧縮するとみられる。
中国軍は内モンゴルのジュルフ(朱日和)訓練基地で、台湾の総統府を模した施設をたびたび建造し、空爆や特殊部隊による急襲の演習を実施してきた。今年1月の演習では、偵察ドローンがJ-16戦闘機を誘導して精密攻撃を行い、特殊部隊が夜間に建築物を襲撃した。軍事情報メディアは、中国軍は台湾の前線の非対称兵器である「ハリネズミ式防御」を回避し、AIドローンや無人装備で台北の指導層を直接攻撃し、心理戦とも組み合わせて投降を促すことができると繰り返し論じている。
中国の軍事専門家は、中国軍は演算能力、データ規模および自律型兵器の研究開発において迅速に進展しており、(米国が対中輸出を差し止めている高性能の)チップの自主代替をすでに実現したと指摘した。しかし中国は、商用AI大規模モデルを軍の機密ネットワークに深く組み込むことや、リアルタイムの全領域意思決定などの面で、依然として米国より遅れている。
しかし、今後5年から10年で、スマート戦争の体系が成熟するにつれて、中国のこの分野での能力はさらに増強されるはずだ。
専門家は、AIによる「斬首作戦」の能力は、大国間の駆け引きの「標準装備」になると指摘している。中国と米国は、この分野で「対峙」することになるだろう。中国軍が生成AIの軍用大規模モデルや量子通信およびドローン群の分野での「突破口」を獲得できれば、台湾海峡において、「外部勢力」のいかなる干渉に対しても有効に「威嚇」することができる。
一方で、中国国防部の呉謙報道官は記者会見で「中国はAIの軍事応用がもたらす安全保障上のリスクを極めて重視しており、各国、特に大国に対して、軍事領域におけるAI技術の研究開発と使用について慎重かつ責任ある態度を取るよう呼びかける。AI技術の優位性を利用して他国の主権や領土の安全を損なうことに反対する」と述べたことがある。
政治や経済を研究する鄭永年氏は中国メディアの取材に対して、「もし中国がAIを民生用の『花火』に留め続けるならば、歴史の轍(わだち)を踏むことになる。我々は火薬を発明しながら爆竹を鳴らすためだけに使い、西洋はそれを用いて大砲を造り世界を征服した。米国は今日、軍事関連でAIを極限にまで利用している。我々はそれに追随しなければ、大国を自称することはできず、イランのように受身で叩かれることになるだろう」と述べた。
なお、「中国は火薬を発明したが爆竹を鳴らすためだけに使った」の表現は、中国で「科学技術は軍事にも応用せねばならない」と主張する際によく用いられるが、歴史上、中国でも火薬の爆発力を利用した兵器は作られた。西洋で「強力な大砲」が登場して盛んに使われるようになったのは、砲身を製造するための冶金学や弾道を計算する物理学の発展に伴うものと、一般には考えられている。











