フランスメディアのRFIはこのほど、米国とイスラエルのイラン攻撃により一気に深刻化したエネルギー資源の確保について、中国は準備をしていたが、欧州連合(EU)はしていなかったと論じる記事を発表した。

「想定外の事態悪化」は想定していないEU

EUでエネルギー問題を担当するダン・ヨルゲンセン委員は取材に対して、中東での戦争が長期的なエネルギーショックを引き起こすと予想していると述べた。ヨルゲンセン委員は「エネルギー価格はかなりの長期にわたって高い水準のままでいる」「いくつかのより重要な製品の状況が、さらに悪化する可能性すらある」などと表明した。

ヨルゲンセン委員はさらに、「EUはまだ供給安全の危機にはない」と主張した上で、EU本部はすでに、紛争がもたらす「構造的かつ長期的な影響」に対応するための計画を策定していると説明し、「情勢が悪化し続ければ、戦略的エネルギー備蓄を再び取り崩す可能性も排除しない」と表明した。

しかし、備蓄を取り崩し、新たな債務を負ってまで補助金を捻出し、さらに家庭や企業に対する全面的な通行制限や封鎖などの「措置」を実施したとしても、競争力のある経済を維持することは困難だ。

そしてEUは、液化天然ガス(LNG)は米国の輸入に依存する方針だ。ヨルゲンセン委員は、米国やその他の「自由市場で機能している」パートナーに依存して追加の供給を提供してもらうことは受け入れられるとの考えを示した。また、トランプ米大統領はかつて、ロシアの石油に対する制裁を一時的に緩和したがEUは追随しなかった。

EUは、ノルドストリームパイプラインに対しても制裁を実施した。パイプラインの1本は依然として天然ガスで満たされており、数週間以内に供給を回復できるが、誰もこの資源を再利用することはできない。情勢がさらに悪化し、米国がLNGの輸出禁令を実施した場合、EUはどう対応するのだろうか。基本的にはノルウェーの天然ガスに依存するしかないが、価格が異常に高騰する可能性が高い。

「危ない橋」容認しても手段の多角化進めた中国

これに比べて、中国は事態の進展を「想定外」とは思っていないようだ。中国にとって、中東からのエネルギー輸入の重要性はEUよりもさらに高い。中国の石油の半分以上は中東、特にイランから来ている。また、2025年に中国はイランが輸出する石油の80%以上を購入したとのデータもある。

米国とイスラエルは26年2月28日、イランに対して攻撃を仕掛け、イラン側は数時間後にホルムズ海峡を封鎖した。しかし中国政府はその時点で、すでに緊急体制に入っていた。そもそも、中国の習近平国家主席は21年に油田を視察した際、中国はエネルギー供給を「しっかりと自分の手に握らなければならない」と表明していた。

中国は「ティーポット製油所」と呼ばれる独立系で小規模な製油所を石油製品の供給に役立てている。ティーポット製油所は制裁のために売り先を得られず価格が下落した原油を輸入してきた。たとえばイランやロシア、ベネズエラ産の原油だ。中国ではこの種の製油所の製油能力が国全体の4分の1を占めており、大型の国有製油所と補完関係を形成している。石油大手が制裁対象になっている国の原油を買い付ければ、自らが制裁対象になると考えねばならないが、ティーポット製油所ならば外国からの目が届きにくいという状況がある。

「ひょうたんから駒」も意思疎通のパイプも活用する中国

香港大学政治・公共行政学部のアレハンドロ・レイエス准教授はアルジャジーラの取材に対して、「中国がティーポット製油所を設立した当初の目的は制裁を回避することではなく、独立した体系を構築することにあった。そしてこの体系は戦略的価値があることがすでに証明された」「中国のエネルギー体系は、中国に選択の余地、冗長性、そして必要時に制裁違反を否認する能力を提供した」と説明した。

中国はまた、船舶がホルムズ海峡を通過できるようにイランと緊密なコミュニケーションを保っている。中国外交部の毛寧報道官は3月4日、「(中国は)必要な措置を講じて自らのエネルギー安全を保障する」と表明した。

イランは3月中旬、通貨自国船および友好国と見なすマレーシア、中国、エジプト、韓国、インド、パキスタンなどの少数の船のホルムズ海峡通過を許可し始めた。中国外務省は3月31日、中国船3隻がすでにホルムズ海峡の通過に成功したと表明した。さらに中国は近年、パイプラインを利用して安価なロシア産原油の入を増やすことで石油の供給源の多元化も実現している。

ブリュッセルに本部を置くシンクタンクであるブルーゲルの上級研究員で、大手投資銀行のナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミストのアリシア・ガルシア・エレロ氏は3月17日に提出した報告書の中で、「北京は積極的に備蓄を構築し、影のネットワークを容認し、さらに柔軟な緩衝を維持することを通じて、この種のエネルギーショックに向けて長期にわたって一貫して準備をしてきた」と指摘した。

もちろん、中国はこれらの措置を講じていても、燃料価格上昇の影響から完全に、あるいは長期にわたって免れることはできない。ティーポット製油所のビジネスモデルも低価格で原油を獲得できることに依存している。しかし、この体系は中国が分散化された構造と実務的な市場志向に基づいて、危機の中で他の国よりもさらに落ち着いた様相を示すことを可能にしている。(翻訳・編集/如月隼人)

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