ザ・スミスやジョイ・ディヴィジョン、オアシスなど数多くの伝説的なバンドを生み出したマンチェスターから、期待のニューカマーがデビューした。
まるでティム・バートンが描く、ダーク・ファンタジーの世界から抜け出してきたようなゴス・ファッションを身にまとう、ヘザー・バロン・グレイシー( Vo、Gt)率いる男女4人組、ペール・ウェーヴス。The 1975やウルフ・アリスらを擁するレーベル、Dirty Hitからリリースされた『マイ・マインド・メイクス・ノイジーズ』は、80年代のきらびやかなシンセとポップなメロディ、それとは裏腹のダークネスが同居した意欲作だ。
先日のSUMMER SONICで初来日を果たし、新人とは思えぬ地に足のついた貫禄たっぷりのステージを見せつけた彼女たち。中でも、新たなUKロックのアイコンとして注目を集めるヘザーは、一体どんな人物なのだろう。音楽的なルーツはもちろん、影響を受けたファッションや気になるタトゥーについてなど、様々な角度から迫ってみた。
─ペール・ウェーヴスの活動は、マンチェスターでヘザーとシアラが出会ったことから始まるんですよね?
ヘザー:そう。同じ大学に通っていたシアラ(・ドラン:Dr)と出会って1週間くらいで親友になって。それですぐに音楽を作り始めたの。今まで出会った中で、シアラほど強い絆を感じた人っていなかったんじゃないかな。彼女の好きなところは……音楽好きっていうのもあるけど、すごく地に足がついているというか。しっかりしてて、同時にユーモアのセンスもあって。
─マンチェスターというと、たくさんの伝説的なバンドが生まれた特別な場所という印象なんですけど、現在はどんな状況ですか?
ヘザー:今も素晴らしい街だし、ライブハウスもたくさんある。私たちはほぼ全てのライブハウスに出たんじゃないかな。ロンドンよりも小さな街だから、生活するにも便利だしね。最近、「イギリスで住みたい街」のトップ5にも選ばれてたけど、実際住みやすいと思うな。
─なるほど。そもそもヘザーさんが、音楽に目覚めたのはいつ頃だったんですか?
ヘザー:物心ついた頃から好きだったと思う。特に80sミュージックが大好きで、フリートウッド・マックやプリンス、マドンナなんかをよく聴いてたわ。80s以外でも、ボブ・ディランやアヴリル・ラヴィーンとかね(笑)。80sに関しては、ずっと家の中でかかっていたから、それが自分の一部になっちゃったというか。
─そういえばペール・ウェーヴスは、ザ・ キュアーの40周年記念コンサート(※)にも出演しましたよね。どうでした?
※今年7月にロンドンのハイドパークで開催。インターポールやライドなども出演した。
ヘザー:本当に素晴らしい経験だった。リスペクトしまくっているミュージシャンから誘ってもらえるなんて、すごく光栄なことよね。でも、あの日はライブが終わったらそのまま移動しなくちゃならなくて、メンバーに挨拶できなかったの。残念だったなあ。
─あなたたちが所属するDirty Hitは、The 1975やウルフ・アリスもレーベルメイトですよね。
ヘザー:オーナーの1人、ジェイミー・オズボーンって人が大の80s狂なの(笑)。というか、今はほとんどのイギリス人が80sミュージックのファンよね。
─そうなんですか! ペール・ウェーヴスは男女2人ずつの混成バンドですけど、そういう編成のバンドって80年代に入ってから圧倒的に増えましたよね。
ヘザー:あ、確かに。自分たちでは男女の差ってあんまり感じてなくて、すごく近い存在だから一緒にいるだけなんだけど。でも、ステージ映えはするっていうか、男女両方いたが見た目は華やかだよね(笑)。私たちがよく言われるのは、「2組の双子みたい」というのと、それが余りにも絵になるくらい出来過ぎているから「ヤラセバンドなんじゃないか?」っていうこと(笑)。
─(笑)。ステージ映えといえば、ライブで楽器を持っていない時のヘザーの踊りがとても可愛かったのですが、振り付けのイメージとかあります?
ヘザー:ありがとう(笑)。ダンスに関しては、まったくの自己流よ。今は大きな鏡の前で練習する時間がないんだけど、毎日のようにライブをしてたら、だんだんあの動きが身についてきて。
─ゴスっぽいヴィジュアル・イメージも最高なんですが、どこから影響を受けてますか?
ヘザー:マドンナやレディ・ガガのファッションが好きだけど、それに限らず特にストロングなアイテムにずっと興味を持ってる。もともとプレーンなものは苦手なのだけど、何か意識してこういう格好をしているわけでもなくて。自然に選んでいたらこうなってたというか。服はいつも、ロンドンのブリック・レーンにある古着屋で買うことが多いかな。あとは、ミュージックビデオの撮影で着たものとか、気に入ったら譲ってもらうこともあるわ。
─音楽以外で影響を受けてるものは?
ヘザー:そうだな……ティム・バートンの映画とか。いつもみんなから、「ティム・バートンの映画に出て来そう」って言われてる(笑)。
─僕もそう思いました。彼から出演依頼が来そう……。
ヘザー:あははは! バートン作品は大好きだから嬉しいな。
──実は僕、タトゥーを入れたいと思っていて、ヘザーのタトゥーがとても気になっているんですけど、最初に入れたタトゥーはどれですか?
ヘザー:(腕を見せながら)この「Hide and Seek」と鍵穴のマーク。「Hide and Seek」というのは、15歳の頃に生まれて初めて書いた、私の祖父についての曲のタイトルなの。とても古い曲だから、ペール・ウェーヴスでやることはまずないだろうけど(笑)。ちなみに、おじいちゃんの名前、「Karl」も入れてる。それは今回のアルバムにも入れた「Karl(I Wonder What Its Like to Die)」という曲になっているわ。
──おじいさんは、ヘザーにとって大きな存在だったんですね?
ヘザー:うん。もう亡くなってしまったんだけど、ストロングなファッション・センスでカッコ良かった。ちょっとクレイジーだったんだけどね(笑)。だから繋がりを感じるのかな。
FaceCultureによるヘザーのインタビュー動画。再生開始~4分過ぎで、「Hide and Seek」のタトゥーを披露している。
──じゃあ、最もお気に入りのタトゥーは?
ヘザー:えー、なんだろう。
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PALE WAVESさん(@palewaves)がシェアした投稿 - 2018年 8月月14日午前4時01分PDT
──へえ! 参考になりました。普段はどうやって曲を作ってますか?
ヘザー:基本的に私とシアラで書いているんだけど、まず私がアコギ1本で作った曲をもとに、キアラがコンピューターでアレンジしていく場合と、シアラが打ち込んできたトラックをもとに、私がメロをつけていく場合がある。私たちは月と太陽みたいな関係というのかな、どちらが欠けてもうまくいかないと思うわ。
──なるほど。デビュー・シングル「Theres A Honey」は、The 1975のマシュー・ヒーリーとジョージ・ダニエルがプロデュースして話題になりました。彼らとはどんな作業をして、どんなアドバイスをもらいました?
ヘザー:私たちが作ったデモを彼らに渡して、彼らがコンピューターを使ってより良いものにしてくれたの。彼らとは良い友達でもあるし、レコーディング中にたくさん会話をした。「自分たちが正しいと思ったことは曲げずに信じて突き進むべき」ということを学んだわ。
──ちなみにデビュー・アルバム『マイ・マインド・メイクス・ノイジーズ』のプロデューサーは?
ヘザー:基本的にシアラがやっていて、ジョナサン・ギルモアという、The 1975のマニュピレーターやエンジニアもしている人が協力してくれてる。シンセなどのプログラミングとかね。シアラはこのレコーディング期間にどんどんスキルアップしていて、コンピューターでのミキシングとかも上手くなったと思う。
──歌詞は全てヘザーが書いているんですよね?
ヘザー:ええ。自分の人生そのものというか……アルバムのタイトルどおり、頭の中にあったイメージをそのまま形にしたのがこのアルバムよ。すべてが実体験だし、実際にあった人たちを基にして曲を書いているわ。
──これからどんな展開をしていきたい?
ヘザー:実は、来年の初頭リリースを目標に曲を書き始めているのだけど、最近はグランジにハマっているので、そういう要素が増えるかも知れない。
──へえ! それは楽しみですね。
ヘザー:もちろん、私たちの本質は「ポップなメロディ」だから、そこはしっかり守りつつ。大好きな80sの要素は、残すかも知れないし少なくなるかも知れない。そこは進めてみないと何とも言えないけど、境界線を押し広げながら、これからも面白い音楽を作っていきたいな。
<リリース情報>

ペール・ウェーヴス
『マイ・マインド・メイクス・ノイジーズ』
発売中
レーベル:Dirty Hit / Hostess
品番:HSE-6862
価格:2,400円+税
※ボーナストラック1曲、歌詞対訳、ライナーノーツ(粉川しの)付
収録曲:
01. Eighteen
02. Theres A Honey
03. Noises
04. Came In Close
05. Loveless Girl
06. Drive
07. When Did I Lose It All
08. She
09. One More Time
10. Television Romance
11. Red
12. Kiss
13. Black
14. Karl (I Wonder What Its Like To