ウィンク、スマイル、ブレイクダンス、そしてジャケットを羽織ったり脱いだりするしぐさ。
ソウルを拠点に活動するNCT 127はNCT(ネオ・カルチャー・テクノロジーの略)という別グループのサブユニットだ。”127”という数字はNCT 127の故郷ソウルの経度に由来する。NCT 127はポップス、ヒップホップ、ラテンラップを取り入れた5月発売予定の最新ミニアルバム『We Are Superhuman』のプロモーション活動の真っ只中だ。
打ち上げ花火、衣装替え、ブロードウェイミュージカル並みのセットの移動などが2時間のライブで繰り広げられた。メンバーのひとりひとりは数分間の時間を設けてオーディエンスに呼びかけ(ほとんどのメンバーは英語で話したものの、ボイスオーバー通訳を使うメンバーもいた)、どのメンバーが一番大きな声援をもらえるかを楽しんでいた。なんといっても9名いるのだから、叫び続けるのもなかなか大変だ。
コーチェラ・フェスティバルでヘッドライナーを務めたガールズグループBLACKPINKが示したように、アメリカはいま、空前のK-POPブームを迎えている。BTS(防弾少年団)のニューアルバムは発売と同時に音楽チャートのトップを獲得し、BTSは1年未満で3枚のアルバムをナンバー1入りさせた。そんな彼らにとってNCT 127は新たなライバルなのだ。K-POPに詳しくない人にとっては馴染みのないグループかもしれない。でも、NCT 127はお気楽なリスナーや物好きな客層でアリーナを埋め尽くしているわけではない。主に女子高生を中心としたファンは、数年前からNCT 127を熱心に追いかけていたのだ。
ニュージャージー州ニューアークから来た女子高生3人がK-POPにのめり込んでいった経緯を教えてくれた。彼女たちはすでに2018年に2日間にわたって開催されたK-POPの音楽フェス、KCONに参加していた。「最初の頃はBTSが好きだった。でも、NCT 127を聴いたとき、ビートがすごくいいと思った。なんていうか、EDMみたいなの」と17歳のリズベット・デルガドーさんは言った。デルガドーさんの目当ては、ハードなダンスが魅力のNCT 127のヒットシングル「Regular」だ。パフォーマンスは期待通りだったようだ。すべてのヒット曲を網羅しただけでなく、NCT 127は「Highway to Heaven」のミュージック・ビデオの上映とともに3つの新曲を披露した。そしてニッキー・ミナージュの「Truffle Butter」のような重厚感あふれるデビューシングル「Fire Truck」で本編を締めくくった。
ライブ前、少女たちの集団が会場の外で写真を取り合っていた。「私は韓国人だから、K-POPを聴きながら育ったの」とニューヨーク州クイーンズから来た18歳のキャサリン・クォンさんは言った。「なんだかものすごいことだと思う。
「NCT 127はいままで聴いてきた他のアーティストと違って、ファンとのつながりがあるみたい」とニュージャージー州生まれの22歳のキアナ・コックスさんはライブ後に語った。「灯台のような存在っていうとなんだか変に聞こえるかもしれないけど……言葉がわからなくてもNCT 127の音楽は心に響くし、自分の家にいるような安心感に包まれる。未来は明るいって思えるの」。