ザ・ローリング・ストーンズスティーヴィー・ワンダー、スーパースターが1972年のツアーの最終日に共演し感動的なアンコールを披露した映像を回想する。

1972年の春、スティーヴィー・ワンダーは『心の詞』を、ザ・ローリング・ストーンズは『メイン・ストリートのならず者』をリリースした。
両アルバムは瞬時にヒットとなり、ビルボード200で前者は21位、後者は1位を獲得した。ストーンズはその年の夏のツアーのオープニング・アクトとして当時まだ22歳のワンダーを指名した。ツアー中4回のライブのアンコールでワンダーとストーンズは共演し、ワンダーの1966年のヒット曲「アップタイト」とストーンズの前年のヒット曲「サティスファクション」のメドレーを披露するとその興奮度は最高潮に達した。

6月26日のニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでの2日目のライブでミック・ジャガーがワンダーをピアノに案内するとホーン・セクションも準備万端といった様子になる。やがてトランペットの演奏で「アップタイト」が始まり、ワンダーは彼のバックバンドの演奏でその曲を歌った。ジャガーはワンダーの後ろから手拍子をしながら近づき、曲が「サティスファクション」になるとワンダーをステージの中央に誘導し、曲をリードした。歌詞の「and I try」のパートでワンダーが加わり、2人はお互いのキャリアの中でも最も歓喜に満ちたお祭り騒ぎの曲の1つであるこの曲にのって踊り、飛び跳ね、お互いの手を取り合い、ステージ中にものを投げ散らかした。

映画作家のロバート・フランクとダニエル・シーモアはこのパフォーマンスをドキュメンタリー映画『コックサッカー・ブルース』のために撮影していたが、ストーンズがその映画に収められた彼らの不品行が公になることを阻止するために訴訟を起こした。そのため、その映画が公式にリリースされることはなかった。その全編は現在、非公式にYouTubeで公開されている。

ローリングストーン誌の1976年のこの映画に関する記事では、ハイライトはワンダーとのコラボレーションであると書かれた。「短いライブのシーン、特にジャガーとスティーヴィー・ワンダーが『サティスファクション』で踊っているところは唯一見た者の頭から離れない。
この映画は大部分において距離と冷たさが感じられる。ストーンズはツアーのメンバーからもお互いからもアンディ・ウォーホルやリー・ラジヴィルのような取り巻きからも頑なに距離を置いていた(ジャガーはフォトグラファーに『クソみたいな盗撮野郎』と暴言を浴びせている)。結局、最後に残るのは音楽であり、1972年のツアーを記録に残すために最終的にリリースされた4チャンネル方式で録られた映画『レディース&ジェントルメン』はその音楽と同じく非現実的なまでにすばらしいものである」と同誌は書いている。

当時、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューでワンダーは、いくつかの会場で看板に自分の名前がなかったことや演奏時間の長さ以外は大部分でツアーに満足していたようで「どんなに口論したとしても悪い空気を打ち消して余りあるほどのいい空気があった。私にとって音楽は宗教のようなものなんだ。ミュージシャンとオーディエンスの間で共有すればするほど音楽はよりスピリチュアルなものになる。”魂を動かして”力を出し切るために長い時間がほしいと思っているけど私たちは30分か40分しか演奏できる時間がない。それでもどうにか多くの人に魂に響く経験をさせてあげられている」と語っている。

最近のツアーにおいても「サティスファクション」はストーンズのライブを締めくくる曲として演奏され、彼らがライブで最も多く演奏している曲である。「アップタイト」もワンダーが最も多く演奏している曲の1つであるがストーンズのツアーが終わってしばらくしてから1972年の内にリリースされた「迷信」に1位の座を明け渡している

当時、少なくともワンダーにとって重要だったのは次元を超越した瞬間をオーディエンスと共有することだけであった。「ステージに上でそれが起こるのを感じるのが好きなんだ。オーディエンスと一緒に自由を感じるのが好きなんだ。
みんなの熱が冷めてきたら私は手を叩いてファンキーなパフォーマンスを始める。そうするとすぐに一体感が生まれる。私はそういった反応が好きなんだ」と彼は語っている。
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