いまだかつてレッド・ツェッペリンほど伝説や虚報に満ちたバンドが存在しただろうか? インターネットが登場するはるか昔、ロック・スターの情報はほとんど入手できなかったため、(ドラッグで朦朧としたヤク中たち、ツェッペリンに取り憑かれた十代を含む)ファンはその大きな隙間を根拠のない噂話や、放蕩・悪魔・悪名高き魚類などをモチーフにした狂気じみた夢物語で埋めていた。
1. 『レッド・ツェッペリンIV』の見開きジャケットに描かれている年老いた隠者は『指輪物語』の登場人物だった

噂の背景:レッド・ツェッペリンが『指輪物語』をとても気に入っていたことは誰もが知っていた。それが証拠に1969年リリースの楽曲「ランブル・オン」ではモルドールやゴラムを歌っている。そのため、彼らの4枚目のアルバムの見開きジャケットに、中つ国にいるようなマントを着てランタンを持ったミステリアスな人物を見つけたファンは、これをJ.R.R.トールキンの『指輪物語』の登場人物だと思い込んだ。
真実:この「隠者」はタロットカードの隠者にインスパイアされたものだった。1976年の映画『レッド・ツェッペリン熱狂のライブ』の幻想シーンではペイジが隠者の役を演じている。
2. 「デジャ・メイク・ハー」という曲名はジャマイカに関する古いコックニーのジョークに由来する

噂の背景:アルバム『聖なる館』収録のこの曲の曲名を「ダイアー・メイカー」と発音すると思っている人が多いが、コックニー訛りで発音するとカリブ海に浮かぶある国の国名に近い音になる。
真実:プラントは「Dyer Maker」が古いコックニーのジョークから来ていると認めている。そのジョークは下記のようなものだ。
コックニーの男1:嫁が休暇に出かけるんだ。
コックニーの男2:ジャマイカに行くのか?
コックニーの男1:いや、嫁が勝手に決めたのさ。
上のコックニーの男2のセリフは英語では「Jamaica?」なのだが、早口で言うので「Did you make her?」(お前がそうさせたのか?)に聞こえるため、コックニー男1はそう解釈して「いや、嫁が勝手に……」と答えている。とは言え、この曲名でジャマイカ絡みのジョークを使っているのはレゲエ風な曲調と一致する。
3. ツェッペリン4枚目のアルバムのタイトルは『Zoso』

噂の背景:彼らのアルバムは1枚目から3枚目まで『レッド・ツェッペリン』、『レッド・ツェッペリンII』、『レッド・ツェッペリンIII』とシンプルなものだった。そこで1971年11月に4枚目のアルバムをリリースする段になって、彼らはアルバム・タイトルをさらに簡略化することにし、ジャケットに文字を印刷することすら拒否した。バンド名すら印刷しないで、憎らしいロック・メディアを混乱に陥らせようとしたようだ。「俺たちが成し遂げたことを無視して、連中は相変わらず俺たちを『インチキ』と呼んでいた」とペイジが説明した。「4枚目のアルバムにタイトルをつけなかった理由はそれさ」と。当然、これがかなりの混乱を引き起こし、アトランティック・レコードをも激怒させた。とは言え、バンドはジャケットにそれぞれのメンバーを表す4つのシンボルを載せることにし、ペイジのシンボルに書かれた文字は「Zoso」と読めた。
真実:ペイジはあのシンボルは文字ですらないと主張しているが、それでもファンは彼らの4枚目のアルバムを「Zoso」(または「レッド・ツェッペリンIV」)と呼んでいる。しかし、厳密に言えば、このアルバムにタイトルはない。
4. レッド・ツェッペリンはグルーピーをマッドシャークと呼んで冒涜したことがある

噂の背景:ツェッペリン伝説で最も悪名高い伝説が生まれたのは1969年7月27日に出演したシアトル・ポップ・フェスティバルで、演奏後に彼らはエッジウォーター・インに引き揚げた。
真実:この話は胡散臭い。このマッドシャーク事件の異なる説では、自伝本の情報源であるコールを胡散臭い犯罪者と呼んでいる。また、ヴァニラ・ファッジはこの事件の責任を認めているのだ。同バンドのドラマー、カーマイン・アピスが、件の少女は自分につきまとっていたグルーピーで、ヴァニラ・ファッジのキーボーディスト、マーク・スタインがその様子をすべて映像に収めた、と言う。事件がおきた時間、ツェッペリンはホテルにいたはずだが、ジョン・ボーナムが偶然現場にいた。それを証明できる60代の女性がいたが、その女性が名乗り出て証言するのはほぼ無理だろう。
5. ジミー・ペイジはレッド・ツェッペリン在籍中に14歳の少女とデートした

噂の背景:ローリー・マドックスが最初にロサンゼルスのグルーピー・シーンに登場したのが1970年代初頭だった。マドックスによると、ペイジは彼女に夢中になり、ローディーに頼んでロサンゼルスにあるハイアット・ハウスの彼のスイートルームに彼女を連れ込んだ。
真実:マドックスがペイジと知り合ったとき、彼女はまだ14歳だった。ペイジは二人の関係をひた隠しにしたが、フリーセックスが当たり前だった70年代においても、未成年者との情交は犯罪で、刑務所送りになる可能性があった。しかしTMZやUS Weeklyによると、ページはその難から逃れたらしい。最終的にページは法定年齢に達していたべべ・ビュエルに乗り換えることにして、マドックスを捨てた。
6. ジミー・ペイジは悪魔崇拝だった

噂の背景:ページはオカルティストで著述家のアレイスター・クロウリーに心酔していたため、結果としてペイジとサタンが強く結びついているという噂が広がった。しかし、これに加えて、レッド・ツェッペリンのメンバーたちはスターダムを得るために悪魔と契約書を交わしたという噂もまことしやかに囁かれていた。
真実:ペイジがクローリーの個人の解放という哲学を信じていたとしても、彼が悪魔崇拝者だという証拠は一つもない(ペイジはオリジナルのアナログ盤『レッド・ツェッペリンIII』の溝なしの部分にクローリーの宣言「Do what thou wilt」[訳注:「汝の意志することを行え」の意]を印字したこともある)。ツェッペリンの歴史の中でペイジは悪魔崇拝関係の噂をほとんど訂正していないが、彼はこれらの噂にビジネス的なメリットがあると判断したのだろう。ペイジは「個人的な信心や魔法への関与に関しては話したくない。
7. ジョン・ボーナムは死亡した夜にウォッカをショットで40杯飲んだ

噂の背景:ボーナムが死体で発見されたのは、ウィンザー・バークシャーにあるペイジの自宅で、1980年9月25日の朝だった。この前日、彼は酒を飲んでリハーサルを行っていた。
真実:検死報告書によると、ボーナムの体内からウォッカのショット40杯に相当するアルコールが検出された。その日早くからボーナムはアルコール濃度が4倍のウォッカを飲んでおり、酔い過ぎていた彼は身体がアルコールを放出しようとしたときに目覚めなかった。
8. ザ・フーのキース・ムーンがレッド・ツェッペリンというバンド名をインスパイアした

噂の背景:1966年5月、ムーンとザ・フーのベーシスト、ジョン・エントウィッスルは、ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ、ジェフ・ベックと一緒にインストゥルメンタルの「ベックズ・ボレロ」をレコーディングした。この曲の出来が良かったので、新しいバンドを組もうといろいろなアイデアを話し合った。真偽のほどはわからないが、ムーンが冗談で「このバンドは無視されて失敗する」(訳註:英語のイディオム「go down like a lead balloon」が使われている)と言ったらしい。ペイジはこのときのムーンの冗談を覚えていて、2年後に組んだバンドを「レッド・ツェッペリン」と命名した。
真実:発言者が違う。エントウィッスルは何年間も「大失敗(=lead balloon)」のジョークを言ったのは自分で、ムーンではないと言い続けた。しかし、世の歴史はそんな事実は無視して、ムーンにこの冗談を言わせたいらしい。
9. ジミー・ペイジは一時的にアレイスター・クロウリーが過去に住んでいた家を所有していた

噂の背景:クローリーは20世紀初頭に黒魔術に手を染めたイギリスの哲学者でオカルティストだ。ペイジはクローリーに心酔し、クローリー関連のメモラビリアを多数コレクションしている。
真実:実際にペイジは1971年にかつてクローリーが住んでいたスコットランドのネス湖にある家を購入し、後にこの家には幽霊がよく出るが、これはクローリーが住んでいたことと関係ないと主張した。1975年のローリングストーン誌のインタビューで、ペイジは「クローリーが引っ越す前にこの家を所有していた人が2~3人いた。それに、この家が建つ前に、中に信者がいるままで全焼した教会がそこにあった。確かに奇妙なことがあの家では起きたが、それはクローリーとは関係のないことだったし、彼が引っ越す前から嫌な雰囲気がすでにあった。あそこで首をはねられた男がいたし、そいつの首が階段から転がり落ちる音が聞こえることもある」と語っていた。
10. 「天国への階段」を逆回転で再生すると悪魔崇拝のメッセージが聞こえる

噂の背景:テレビ伝道師ポール・クラウチは、1982年に彼の頭の中にあった疑惑を公表した。それはツェッペリンの名曲「天国への階段」の「bustle in your hedgerow」の部分を逆回転で再生すると、「優しい悪魔にこれを捧げる/私を悲しくさせる生き方をする人、その人の力はサタン/彼は自分の666と共にこれを捧げるだろう/彼が私たちを苦しめた小さな道具小屋があった、悲しいサタンよ」と聞こえるという主張だった。
真実:「Stairway」のパートを逆回転で再生するとクラウチの主張に似たような感じで聞こえるが、これは奇妙な偶然に過ぎない。逆回転すると悪魔崇拝の文言に聞こえるという主張に、ロバート・プラントは「そんなふうに聞くなんて一体誰が考えるんだ? そんなふうに聞く人がいると思いつくのは、よっぽど暇な人だろうな」と呆れ果てた。