ー84年は市川少年が中学2年生の年です。全体的な84年の思い出はいかがですか?
前回の83年は、セックス・ピストルズとかパンクロックを聴き始めたターニングポイントなんですけど、84年はミュージシャンになるきっかけになった年で、中目黒の質屋さんでベースを初めて買ったんです。前回も言ったけど84年っていうのは『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』や『DOA』といった海外もののビデオを、たまり場でみんなに見せていたんですよ。誰か1人でも好きになってもらいたかったのと、少しでもパンクに興味を持ってもらって、バンドをやろうって手を挙げてくれるが人いるかなと思って。何をやっても面白かった。実際、僕の曲の「Summer Night Scent」は、84年の夏を思い出して作った曲で。夜遊びして友達の家に行って、モクモクしていた部屋を開けたときの匂いというか。シーブリーズ、扇風機、夜の夏っていうのが、84年の匂いなんですよ。
ー世の中的には、ロサンゼルスオリンピックが開催されました。また、グリコ・森永事件が起こった年でもあります。
中2の夏休み、体育の教師から「オリンピックを見ろ!」って言われたのをすごく覚えています。
ー2つ目のテーマなんですけど、ファッションと髪型についてですね。
まさしくチェッカーズヘアですよね。ちょっと後ろを刈り上げて頭を立てるっていう。イメージ的には、やっぱり『もっと!チェッカーズ』ですよね。あの太さのパンツ、今もありますよね。テレビ東京で志賀ちゃん(志賀正浩)時代の『おはスタ』を見ながら朝飯を食って学校に行くんですけど、番組終わりの5分ぐらいの枠で、その時の新人アイドルのPVみたいな映像が流れるんですよ。
ー次はヒット商品についてです。この年に初めてソニーがディスクマンというCDプレーヤーを出したり、野村トーイっていう玩具メーカーがチクタクバンバンっていう…。
動く時計が進むための道を作っていくゲームですよね。
ーお菓子では、カラムーチョが出たり、コアラのマーチとかが発売された年でもあります。
「ポテトが辛くてなぜおいしい!」ですよね。学校でカラムーチョ早食い選手権みたいなことをやっていたんですけど、細くて鋭利な早食いだから口の中が痛い。そういう下らない遊びをしていました(笑)。お菓子でも何でも日々味ってアップデートしてるじゃないですか。あと、やっぱり量が違うよね。昔やっぱ何でもでかかったですもん。
ー続いて音楽の方ですけど、84年の売り上げランキングトップ10なんですが。
歌謡曲全盛の中、バンドで来たのは安全地帯ですよね。あと『ベストテン』をすごくたまに観ていた。すごく覚えているのは、石川秀美の「もっと接近しましょ」っていう歌が、シーラ・E のフレーズと同じなんですよ。それと、とんねるずが『成増』っていうアルバム出しているんですけど、「どうせ僕は母子家庭」っていう石橋貴明が歌っている曲が、プリンスの「パープル・レイン」なんですよね、松田聖子さんもアイドルからシンガーになってきたというか、「和製マドンナ」って言われたり。あと中森明菜さんの「十戒」ね。中2のときにベースを買った話をしましたけど、このフレーズが好きになってギターでもズッガズッガって弾いてました。確か高中正義さんが作ったんじゃなかったっけな? すげぇかっこいいリフで、「DESIRE」の前の名曲というか。もう最高なんだよね、このときの明菜ちゃん。かっこいいっていうか、かわいすぎるんですよ。
ハワード・ジョーンズが好きだったんですけど、『いいとも』に出たのをすごく覚えています。あと、カジャグーグーですよね。僕の鼻ピアスはカジャグーグーに影響受けたわけじゃないですけど(笑)。あと『フットルース』のサントラには、良い曲がいっぱい入っているんですよ。そのメロディには今でも影響受けてるからな。デニース・ウィリアムスの「Lets Hear It for the Boy」がすごく好きで、これを聴くと84年の夏を思い出しちゃうんですよ。
ーじゃあ音楽はそんなところで映画はいかがでしょう。
『アウトサイダー』って83年公開だと思うんですけど、影響を受けたのは84年なんです。昔はテレビで映画が放送されるのって1年以上かかったじゃないですか? 84年ぐらいにマット・ディロンのタバコのシーンを真似したいと思っていたのかな。そして、『五福星』ですよ。これで僕のジャッキー熱が落ち着いたっていうか。要は『プロジェクトA』が僕の中で1番の金字塔で、その後に出た『スパルタンX』でちょっと今までのジャッキー映画じゃなくなってきたっていうか。世界目指してるんだなっていう感じだった。『五福星』っていうのはジャッキー・チェンの『プロジェクトA』のお返しですよね、サモ・ハン・キンポーに対するアンサームービーというか。どちらかというとサモ・ハン・キンポーのユーモアが出てるから面白い映画です。あと、『里見八犬伝』は懐かしいな。真田広之さん、薬師丸ひろ子さん。『愛情物語』が原田知世さんかあ。角川映画すごいですよね。映画がすごい超元気だった頃じゃないですか。僕の中で、この後に出てくる名作となると『バック・トゥ・ザ・フューチャー』になると思うんですけど、それはまたその年になったら話したいな。
ー次はドラマですね。
もう『スクール☆ウォーズ』ですよ。僕、『スクール☆ウォーズ』が好きすぎて、ボックスセット持っているんですよ。梅宮辰夫さんが演じる下田大三郎が亡くなって、和田アキ子さん演じる下田夕子が毅然に振る舞っているんです。で「何だろうな、姉ちゃんは鈍感っていうかさ」ってしたら下ですっげぇ泣いてんの。そこの場面見て大泣きした。今話しながらグッときちゃうぐらい。僕の後輩で『スクール☆ウォーズ』を観たことがないやつがいたから、そのボックスセット貸したんですよ。すごい長いんですよ、2クールぐらいあって。で、毎日その後輩に電話したんですよ、「今日何話目?」って(笑)。そしたら、そいつが仕事から帰ってくる時間もだいたいわかって、見だす時間もわかるようになって。ついにその回の日が「来た!」と思って、よーしと思ってその時間に電話したら、「うぇえ」って泣きながら電話出てるんですよ。「何お前」って言ったら「今そこです!」って。電話出るなよと思いましたもん(笑)。それぐらい好きなんですよ。
ー84年にデビューした人ってとこでいくというと、吉川晃司、荻野目洋子、岡田有希子、菊池桃子、TM NETWORK、レベッカ。SALLYもそうですね。
SALLYの『バージンブルー』もすごい覚えてる。『パンツの穴』の主題歌で山本陽一の「おもいっきりI LOVE YOU」。衝撃的に菊池桃子がかわいかったんですよね。ちなみにパンツの穴のロケ地の体育館は僕の隣の中学校でした。84年の女の子ってかわいかった気がするんですよね。髪型とかも聖子ちゃんカットじゃなくて、明菜カットみたいなのとか、刈り上げ、キョンキョンみたいなこういうちょっととんがった髪型で。84年、みんなかわいかった。
ー他には、岡田有希子、菊池桃子、長山洋子、荻野目洋子など。
長山洋子さんは今もう演歌になっちゃったけど『ヴィーナス』(86年)のイメージがありますよね。
ーこの年始まって人気の出たアニメーションでいくと、東映のもので『Gu-Guガンモ』。
『Gu-Guガンモ』の話をすると、みんな「Gu-Guガンモです」って必ずやるよね(笑)。あとはケンシロウですね。中学生の頃、『北斗の拳』が流行りましたもん。何かというと「ひでぶっ」って言ってましたからね。「アタタタタ」っていう廊下でやる中学生もいっぱい見た。みんな秘孔を突いていましたよ。「お前はもう死んでいる」って。あと、それこそクリスタルキングですよね。「大都会」で一発屋扱いだったけど、ここで名作を作ってしまったという。やっぱりケンシロウが1番かっこいいじゃないですか、やっぱりイメージが松田優作とブルース・リーですからね、男が憧れる2人ですから。
ープロレスの話もしておくと、84年のベストバウトは蔵前国技館の猪木対長州。あとは、前田率いるUWFが離脱、で長州率いるジャパンプロレスが全日本移籍します。
みんないなくなっちゃったんですよ。ここで俺も自然に離れちゃったのかな。ただ、そのときの長州力は全日行って、すげぇかっこいいなと思いましたよ。谷津嘉章と一緒に行って、ヒールみたいな感じになって、新日とはまた全然違う受けの強さが全日は半端ないという。結構タブーだったじゃないですか、新日と全日を行き来するのは。どちらかというと俺のイメージでは藤波辰爾よりも長州がかき回してた感じですね。プロレスを回していたっていうか。
ー改めて、市川少年と84年を言葉にするとどんな年ですかね?
黄金期ですよ。曲に書くぐらい84年の夏が大好きなんです。83年は色んなものの入り口だった。84年になると、楽器をやる方に意識がいってきたっていうか。G.B.H.とかエクスプロイテッドを聞いたりして「ハードコアって速っ!」と思ったり。当時、ベースを買う前くらいに、ベースラインだけ耳コピしてたんですよ。それで、1番最初にコピーしたのが「アナーキー・イン・ザ・UK」なんですけど、最初ベースを買ったは良いけどチューニングがわからなくて。地元の楽器をやっている先輩がうちに来てくれてチューニングを教えてもらったんです。でチューニングしてもらってベースを渡されたときに「アナーキー・イン・ザ・UK」はすぐに弾けました。「ここだ、ここだ、ここだ」って音は入ってましたから。同級生にすげぇデュラン・デュランが好きなだった女の子がいたんですよ。で言われた覚えありますもん。「ジョン・テイラーが一番最初にコピーしたのもアナーキー・イン・ザ・UKだって(笑)。まさしく中2が学校生活で一番思い出があるなあ。
ーちなみに、恋話とかどうですか?
初めて彼女ができたのも中2です。それぐらいの時期に周りが付き合いだしていくんですよ。1番の思春期ですよ。何するわけでもなく彼女と初めて祐天寺のお祭りを2周回るっていう。淡い思い出があるかな。ちょっと恥ずかしいような。楽しいことしかなかったなあ。中2病ってそういうことなのかね? 中1じゃまだわからないことが多いし、中3は高校のこと考えないといけないから、中2って一番何も考えなくて良い。中2病ってそういうことなのかな? ちょっと調べといてくれる(笑)?
<ライブ情報>
MASTER OF MUSIC 2019
2019年12月13日(金)渋谷O-EAST
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
LOW IQ 01 & MASTER LOW
Hawaiian6
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS +
詳細:http://www.lowiq01.jp/live