K-POPグループ、NCT 127「Kick It」のミュージックビデオでは、EDMとトラップがぶつかり合ったかのようなトラックに合わせて、メンバー全員が飛び跳ね、カンフー風の振り付けを繰り広げる(「Bass kick swingin like Im Bruce Lee」という歌詞もある)。

数多くの”NCTzen”(エンシチズンと発音)がこの9人組のボーイズグループに夢中になる理由は容易に理解できる。
彼らが結成されたのは4年前で、最初は韓国のスーパーグループNCTの派生ユニットだった。

ドヨン、ヘチャン、ジェヒョン、ジョニー、ジョンウ、マーク、テイル、テヨン、ユウタは滑らかな動きと複雑な振り付けを炸裂させる。その上、彼らは歌い、ラップする(ハーモニーも)。NCT 127が現在のK-POPシーンで最も人気を博し、最も敬愛されるグループというのは当然のことだろう。

2枚目のフルレングス・アルバムでNCT 127の新たな章が始まる。この作品のタイトルは『The 2nd Album NCT #127 Neo Zone』。
冒頭で紹介した「Kick It」は先行シングルだ。

境目をまったく感じさせないほど滑らかに異なるジャンルの間を颯爽と行き来する彼らは、それと同時に多彩なサウンドを用いて果敢に実験を続ける。これこそが彼らを同世代の他グループと隔てる理由だ。レパートリーを増やすことに熱心な彼らは、新作『Neo Zone』でザ・ステレオタイプス(ジャスティン・ビーバー、ブルーノ・マーズ)、最近レコーディング・アカデミー会長に指名されたハーヴィー・メイソン・ジュニアなどのプロデューサーを起用し、ソングライターとして「マイン」のバージィ、パトリック・”J. Que”・スミス(ビヨンセ、アリアナ・グランデ)も参加している。

多くのK-POPグループは提供された楽曲をレコーディングすることが多いのだが、NCT 127のメンバー、テヨン、ジョニー、マークは『Neo Zone』収録3曲でソングライターとしてクレジットされており、今どきのクラブ・バンガー「MAD DOG」と、ジャジーでゆっくりと燃えるような「Pandoras Box」がその2曲だ。

グループのリード・ダンサーとして知られているジョニーは、今作で曲作りの機会を得て自由を感じたと言う。
たとえそれが神経をすり減らす体験だったとしても。「自分たちの曲の歌詞を作ることは本当にエキサイティングだった。しかし同時に、これがグループの曲だからこそ、たくさんのプレッシャーもあった。当然、台無しにすることだけは避けたい。曲作りに参加したのが初めてだったが、かつて一度も見たことのない自分の側面が見えた感じがして、自分の歌詞がグループの歌に使われると意識すると、予想もしないほど自分が脆いことに気付いた」と、彼はローリングストーン誌に語ってくれた。

「競争相手は自分だ、他の誰でもない」

この”脆さ”はこのアルバム全体で見え隠れするテーマの一つで、歌詞も”自信”から”報われない愛”まで広範囲に渡っている。
K-POPの音楽はしばしば「バブルガム」と見なされることがあるが、『Neo Zone』に収録されている楽曲にはそんなステレオタイプを満足させる軽快さは一切ない。楽曲「Dreams Come True」で、彼らは成功を手にするためのプレッシャーを歌い、「競争相手は自分だ、他の誰でもない」と宣言する。

大胆な「Sit Down」では、ディロン・フランシス的要素を意識したようなカミナリのようなビートの上で無名のライバルに呼びかける。

座れ、俺に指示するな
座れ、どうなればいいか教えてやるよ
座れ、黙れ、閉じ込めろ、座れ
起き上がるな、立ち上がるな
お願いだ、手をあげないでくれ
そして、もう一度言わせないでくれよ、座れ

バラッド曲ですら影がある。シンセ・サウンドで奏でられる「Not Alone」では、彼らは名声の代償を考えたのち、一緒に挑戦し続けることを再確認し、「独りじゃないって感じられるかい?」というコーラスで曲が終わる。

『Neo Zone』はすべての配信プラットフォームでドロップされるほか、3種類のフィジカル盤もリリースされる。
N盤、C盤、T盤と名付けられ、それそれが数量限定CD盤で、独自のパッケージ、写真、独占付録がつく。また、彼らは野心的なプロモ・ツアーを行ない、それが終わると、彼らは2020年の北米ツアーのリハーサルに入る予定だ。ツアーは6月5日のニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでスタートし、6月21日のシアトルで終わる。この新作もそうだが、今回のツアーで去年からグループを離れていたジョンウがNCT 127に戻ってくることになった(原因は健康上の問題とされている)。

全11公演がソールドアウトした昨年の全米・カナダ・ツアーに続く今回のツアーには、マークのふるさとであるカナダのトロントと、ジョニーのふるさとシカゴでの公演も含まれる。(特にアジアのグループにとって)参入することすら難しい北米の音楽市場に彼らは無事参入したわけだが、目指すものはもっと大きいと言う。


「アメリカのオーディエンスの前に立つのは最高の経験だし、去年のツアーのときにアメリカのファンに約束したことでもある」とSMエンターテインメントにスカウトされて10代で韓国に移住したマーク。そして「世界中に自分たちの音楽を広めることが以前からずっと持ち続けている目標だ。その点でも北米ツアーはとても大きな意味がある。しかし、世界中のファンに会いに行く計画も進行中だ」と続けた。

NCT 127が語る野望「メンバーが一緒になって生まれるシナジーは最高さ」

Courtesy of SM Entertainment

「もちろん、僕たちは常に成長する機会を与えてもらって嬉しい。ただ、北米ツアーの準備をしているとは言え、メンバーが心の中に抱いている目標はアメリカでの成功だけじゃない。
常に世界中のファンとオーディエンスを考えているし、そんな彼らのために一生懸命やることを意識している」と、ジェヒョンが付け加えた。

「メンバー全員に限界など一切ないと思う」

NCT 127は最近台頭してきた世界にアピールする韓国人アーティストの波に乗っているが、K-POPの王座に君臨するプレッシャーを彼らが感じているかと言えば、メンバーと話している限りは感じられない。彼らはトップの座には誰もが座れるだけの広さがあると言う。

「K-POPアーティストの多さから、避けられないほど多くの競争がある」とジョニーが認めて続けた。「でも、お互いを勇気づけて元気を出すことができると思う。それに友好的な競争相手を持って、もっと素晴らしい音楽とパフォーマンスを作ることもできる。最終的に、僕たちはアーティストとして成長し、成熟したいだけだ。その過程でファンを満足させながらね」と。

去年のソールドアウトのツアーとミニ・アルバム『We Are Superhuman』(ビルボード・チャートで初登場11位)への好意的な反応を経て出た新作『Neo Zone』に、”NCTzen”たちは大きく期待していることだろう。そして、メンバーもNCT 127の成功がまぐれではないことを見せる気満々だと言う。

「ポテンシャルの点で、ここからどれだけ発展するかにおいても、メンバー全員に限界など一切ないと思う。メンバーが一緒になって生まれるシナジーは最高だし、とても大きいんだ」と、グループのリーダー、テヨンが教えてくれた。